ナサケの女〜国税局査察官〜(スペシャル)の感想
10年近く前のドラマのスペシャルがなぜ今作られるのかと訝しく、どうみても飯島直子が若すぎるし、はるな愛に柳葉敏郎、失敗したルパン三世のような速水もこみちなど、キャスティングのセンスが狂ってると思っていたら、2012年に放映された番組を、10月から始まるドクターXの番宣として再放送しているだけだった。
しかしそうすると、今度は勝村政信、塚本高史、鈴木浩介といった人たちのあまりの変わらなさ加減に驚愕することになる。
思えば中園ミホと松田秀知のドクターX(2012年〜)はここに原点があった(松田秀知は2004年の「黒革の手帖」以来、米倉涼子の専属である)。
2012年の文脈で見ればそれなりに面白いのだが、時代の気分としてはかなりかけ離れていると感じた。そもそもが「マルサの女」のオマージュという説があり(ナレが津川雅彦)、2012年時点ですでに古めかしく、最終回まで見なかった記憶がある。
ナサケの女〜国税局査察官〜 見どころ
本作は“マルサの女”の平成進化形である。
マルサ特有の「ガサ入れ(査察)」シーンの緊張感、国税局の会議室や調査の進め方など、現場の空気感は伊丹作品へのリスペクトを感じさせる。随所に『マルサの女』ファンならニヤリとするような“追跡・張り込み・ガサ入れ”三点セットが盛り込まれている。
伊丹十三が『マルサの女』で描いたのは「昭和の脱税社会」と、そこに挑む女性査察官の姿だったが、『ナサケの女』はそのエッセンスを平成以降の日本社会に移植し、よりエンタメ色を強めて展開したものである。
『マルサの女』のヒロイン板倉亮子(宮本信子)は昭和の時代感を背負うリアルで泥臭い査察官であり、男社会の中で悪戦苦闘しながらも、粘り強く捜査を進める等身大のキャラクターだったが、本作の松平松子(米倉涼子)は、スタイリッシュで颯爽とした平成の“マルサの女”であり、「脱税は許さない」という信念は同じだが、華やかなファッションと強気な言動で、よりヒーロー的に描かれている。
オマージュとして「女性査察官」という設定を踏襲しつつ、視聴者にカタルシスを与える米倉涼子流のクールな正義へと刷新している。
『マルサの女』は実際の国税局査察官(マルサ)の捜査手法を細かく取材した映画であり、地味な資料調査や張り込みをリアルに描き、脱税という社会悪の実態を暴露していた。
本作はスピーディーかつ痛快さが優先され、脱税トリックの暴露や摘発シーンは娯楽要素が強く、視聴者がスカッとする演出である。米倉の決め台詞「あなた、脱税してますね?」は、亮子の地味な調査とは対照的な「エンタメ的決着」と言える。
昭和バブル期の不動産取引や現金商売による脱税に対して、IT長者の所得隠しや芸能人の脱税など平成らしい事例がモチーフとなっているが、時代が変わっても脱税は続き、その手口が進化していることを示唆している。
ナサケの女〜国税局査察官〜のあらすじ
松平松子は、東京国税局査察部所属の査察官で、通称「マルサ」です。彼女は、金に執着し、脱税を繰り返す悪質な脱税者たちを情け容赦なく追い詰めていきます。時に大胆な行動で、時に変装やコスプレも駆使しながら、悪を暴いていきます。
ドラマは、松子が様々な脱税事件に挑む姿を描いています。結婚相談所の内偵調査で婚活パーティーに潜入したり、政財界の子息が多く通う学校の脱税疑惑を追ったり、ホストクラブの脱税を暴いたり、毎回異なる舞台で、様々な脱税者が登場します。
ナサケの女〜国税局査察官〜を観るには?
ナサケの女〜国税局査察官〜(スペシャル)のキャスト
査察部情報部門査察第18部門
松平松子 – 米倉涼子
三木航介 – 塚本高史
五藤満 – 鈴木浩介
久米四郎 – 小市慢太郎
二宮晶太 – 夕輝壽太
内村ナナ – 斎藤めぐみ
曽根六輔 – 泉谷しげる
雨宮賢治 – 三上真史
実施部門査察第37部門
日野敏八 – 勝村政信
犬養一美 – 飯島直子
査察部幹部
新田進次郎 – 柳葉敏郎
遠藤幸男 – 長谷川朝晴
その他
万城野権蔵 – 伊東四朗
万城野駿 – 速水もこみち
万城野節子 – 高岡早紀
万城野潤一郎 – 甲本雅裕
マツコ・デラックス – マツコ・デラックス
トマト – はるな愛
千木良耕作 – 大和田伸也