眉毛まで剃った異相の中村蒼、終盤急に存在感を放ち始めた浜辺美波(無痛〜診える眼〜の感想)
ファーストインプレッション
西島秀俊と伊藤淳史という「ジェネラル・ルージュの凱旋」コンビによる久々のサスペンス。「SP 警視庁警備部警護課第四係」の岡田准一を思わせる特殊能力描写(アクションはないが空気感は似ている)と、先日の実写版「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の演技が話題になった浜辺美波が見どころであろう。石橋杏奈は、というと「カッツ・アイ」を思い出してしまう。
2015年秋ドラマは、本作以外に「破裂」という久坂部羊原作のドラマがあったのだが、本作では犯因症と無痛治療、「破裂」ではペプタイド治療、とプロジェクト:天寿という具合に、複数の大ネタをぶち込んで来るのが原作者の特徴らしく、ネタがどう関係してくるのかという興味がストーリーを牽引する仕掛けである(「破裂」はプロジェクト天寿の荒唐無稽さがNHKとミスマッチだったこもあり、途中であえなくドロップアウトした)。
本作は上記ネタの他に「神の診察眼」「猟奇殺人」「先天的無痛症」「声を失った少女」などかなりの盛り沢山で、おそらく収拾つかなくなるだろうと予想しつつストーリーを追っていたが、終盤にいたって一応の種明かしはされたものの、案の定、「痛みは私だ」というキーワードはうまく活かされず、神の眼も犯因症も投げ出されたまま終了という幕切れ(時間切れ)となった。
ダラダラした場面も多く、例えば、最終回の、まるで舞台劇かと思わせる段取り感満載のシーンなどひどかった。挙句に伊藤英明と中村蒼があっさり心中するのだが、原作では死なずに続編に続くらしいから、効率よく構成できなかった脚本の力不足だと思う。残念である。
冒頭にも書いた通り、西島秀俊と伊藤淳史と言えば「ジェネラルルージュ」コンビなのだが、伊藤は「家族狩り」に引き続き、危険性を秘めたシリアスな役どころで、「理系の人々」(MXの不定期放送が楽しみなのだが、今調べたらなんと42話もある!)のナハハ系キャラとのミスマッチ感が面白い。あとは、眉毛まで剃った異相の中村蒼、声が出るようになったとたんに存在感を放ち始めた浜辺美波(当時15歳で、翌年に「 咲-Saki-」、3年後に「https://dramatic-impress.net/post-1646/賭ケグルイ」とぐんぐん年頃になり、「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!︎」はまぶしい限り)なども楽しめた。
再見しての感想
浜辺美波(無痛~診える眼~)
緩和治療を拒否する津嘉山正種は「痛みは私だ」というテーマを導くために出ているのだと思うが、それと死んだ弟の心臓を移植した伊藤英明が無痛治療にこだわるのがどう関係するのかという、すごく肝心なことがわからない。
細かいところでは、犯因症が出たままの伊藤淳史が刑事を辞めない理由も説明されないし、西島秀俊が妻の故郷(?)に旅立ってどうするのか、浅田美代子を置いていく理由もわからないのである。
今回見直して、中村蒼が熱演していることがよくわかったので、惜しいと思う。
無痛〜診える眼〜 あらすじ
町医者・為頼英介は、外見で病気や犯罪者の兆候(犯因症)を見る能力を持つ。刑事・早瀬順一郎は英介の能力を利用し、数々の事件を解決するが、英介は早瀬の行き過ぎた行為に危うさを感じる。臨床心理士・高島菜見子の患者・南サトミが描いた絵から、未解決の一家殺害事件の真相に迫る。菜見子が襲撃され、交際相手・佐田要造が犯人だが、英介は犯因症を見抜けずショックを受ける。佐田が殺害され、清掃員・イバラが逮捕されるが、英介はイバラの犯行を疑問視。イバラは脱走し、英介にUSBメモリを託す。白神陽児が無痛治療新薬の治験データを隠しており、イバラが新薬の副作用で犯行に及んだことが判明。早瀬は白神への疑いを強め、一家殺害が白神の弟の復讐であることを突き止める。イバラは白神を道連れに転落し、事件は終息する。
ドラマ 無痛〜診える眼〜を観るには?
無痛〜診える眼〜 キャスト
為頼 英介(神の診察眼をもつ医師) – 西島秀俊
早瀬 順一郎(港中央警察署刑事課強行犯係・巡査部長) – 伊藤淳史
高島 菜見子(白神メディカルセンター臨床心理士) – 石橋杏奈
白神 陽児(白神メディカルセンター院長) – 伊藤英明
主要人物の関係者
英介の関係者
井上 和枝(英介の義姉) – 浅田美代子
久留米 実(元・明都医大教授) – 津嘉山正種
久留米 大(実の孫) – 須田瑛斗
久留米 真理子(実の息子の妻) – 高橋美津子
為頼 倫子(英介の亡妻) – 相築あきこ
港中央警察署
仁川 康男(刑事課課長) – 兵動大樹
太田 武司(刑事) – 馬場徹
涌井(捜査一課係長) – 戸田昌宏
白神メディカルセンター
伊原 忠輝 / イバラ(清掃員) – 中村蒼(少年時:五味渕元)
南 サトミ(菜見子が担当している患者) – 浜辺美波
橋本 広子(看護師長) – 和泉佑三子
横井 清美(白神の秘書) – 宮本真希
無痛〜診える眼〜 スタッフ
脚本 – 大久保ともみ、香坂隆史、丑尾健太郎、小川智子
演出 – 佐藤祐市、木下高男、山内大典
音楽 – 塩谷哲
主題歌 – Superfly「黒い雫」(ワーナーミュージック・ジャパン)
挿入歌 – ミソッカス「闇夜のキャラバン」(avex trax)
編成企画 – 清水一幸
プロデューサー – 貸川聡子(共同テレビ)
アソシエイトプロデューサー – 稲田秀樹(共同テレビ)
制作 – フジテレビ、共同テレビ
制作著作 – 共同テレビ
無痛〜診える眼〜の原作(久坂部羊)
見るだけですぐに症状がわかる二人の天才医師、「痛み」の感覚をまったく持たない男、別れた妻を執拗に追い回すストーカー、殺人容疑のまま施設を脱走した 十四歳少女、そして刑事たちに立ちはだかる刑法39条――。神戸市内の閑静な住宅地で、これ以上ありえないほど凄惨な一家四人残虐殺害事件が起こった。凶器のハンマー他、Sサイズの帽子、LLサイズの靴痕跡など多くの遺留品があるにもかかわらず、捜査本部は具体的な犯人像を絞り込むことができなかった。そし て八カ月後、精神障害児童施設に収容されている十四歳の少女が、あの事件の犯人は自分だと告白した、が……。