さまざまな卵(燕は戻ってこないの感想)
石橋静河と代理母契約を結ぶことになる 稲垣吾郎の富裕層夫をバレエダンサーという設定にしたのは、それが血統を重んじる職業だからだと 原作者が語っていた。
実はダンサーは石橋の方で、バレエ留学もしていて、おまけに 石橋凌と 原田美枝子の娘でもあるのだった。
沸騰してから8分、水からなら15分で茹で卵になる、それが卵の本質なのだという介護施設の老婆の台詞で始まるドラマ(と原作)には、さまざまな卵が登場するらしい。アパートの偏屈な老人に因縁をつけられて自分のために作った弁当を食べられてしまうというのはドラマオリジナルのエピソードだが、おかずはやっぱりタラコだった。
病院事務の同僚に 伊藤万理華。これは原作のイメージにぴったり。
燕は戻ってこない 見どころ
代理出産というデリケートなテーマを軸に、現代社会における女性の貧困、格差、家族のあり方、そして「命」の尊厳について深く問いかけたドラマ。
- 代理出産というテーマへの多角的なアプローチ
日本では法的に認められていない代理出産を題材に、依頼者夫婦(稲垣吾郎、内田有紀)の切実な願い、代理母(石橋静河)の貧困という背景、それぞれの倫理観や感情の揺れを丁寧に描く。善悪では割り切れない人間の欲望、葛藤が浮き彫りにされる。 - 「貧困」と「女性」のリアリティ
リキ(石橋静河)は都会で派遣社員として働くも低賃金にあえぎ、雇い止めも目前。そんな彼女が「卵子提供」や「代理出産」という選択肢を考えるに至る過程が、女性の貧困、結婚・出産における男女格差、地方と都市の格差をリアルに映し出しす。 - キャスト陣の重厚な演技
- 石橋静河: 貧困の中で代理出産を決意するリキを、揺れ動く感情と複雑な心境を繊細に演じる。彼女の演技が、この難しいテーマにリアリティを与える
- 稲垣吾郎: 自分の遺伝子を継ぐ子どもを切望する元バレエダンサーの草桶基を演じる。スマートで優雅ながらも、どこか浮世離れした、つかみどころのない人物像。傲慢さが際立つ
- 内田有紀: 不妊治療を諦め、代理出産という選択に葛藤する妻・悠子を演じる。夫の願いと自身の感情の間で揺れ動く心の機微を表現
- 黒木瞳: 基の母で、バレエスクールを経営する高慢な女性を演じる。物語に軋轢を与える役柄
- その他: 森崎ウィン、伊藤万理華、富田靖子、戸次重幸など、実力派俳優陣が熱演
- 「命」の尊厳と親子の定義
代理出産という行為を通して、「命」は誰のものなのか、遺伝子と愛情、親子の定義などが問われる。生まれた子どもを巡るそれぞれの思いが交錯。
トリビア・撮影裏話
燕は戻ってこないの人物相関図
燕は戻ってこない あらすじ
派遣社員として暮らすリキ(石橋静河)は悩んでいる。職場の同僚、テル(伊藤万理華)から「卵子提供」をして金を稼ごうと誘われたのだ。アメリカの生殖医療エージェント「プランテ」日本支社で面談を受けるリキ。そこで持ち掛けられたのは「卵子提供」ではなく「代理出産」だった。元バレエダンサーの草桶基(稲垣吾郎)とその妻、悠子(内田有紀)が、高額の謝礼と引き換えに二人の子を産んでくれる「代理母」を探していた―。
燕は戻ってこないを見るには?
燕は戻ってこないのキャスト
草桶基 – 稲垣吾郎(少年期:大石惺亜、ダンスダブル:厚地康雄)
ダイキ – 森崎ウィン
河辺照代(テル) – 伊藤万理華
青沼薫 – 朴璐美
佳子 – 富田靖子
日高 – 戸次重幸
礒谷 – 草村礼子
平岡 – 酒向芳
寺尾りりこ – 中村優子
大石昌江 – あめくみちこ
光森 – 吹越満
須田 – 岡部ひろき
タカシ – いとうせいこう
草桶悠子 – 内田有紀
草桶千味子 – 黒木瞳
レイジ(リキの元彼) – 町田悠宇(第1話)
店員(ペットショップ) – 上田実規朗(第1話)
上司(病院事務) – 本郷弦(第1・2話)
婦人科医 – 福本伸一(第1話)
産科看護師 – 笠井里美(第1話)
サラリーマン(リキの隣人) – 日下部千太郎(第1・2話)
ソム太(テルの彼氏) – フレン・マリノ(第2話)
木島(バレエ教室スタッフ) – 笠島智(第2話)
警察官 – 佐藤幾優(第2話)
島田(編集者) – 飯島みなみ(第2話)
男子(リキの高校時代の相手) – 安光隆太郎(第2話)
燕は戻ってこないのスタッフ
脚本 – 長田育恵
音楽 – Evan Call
演出 – 田中健二、山戸結希、北野隆
制作統括 – 清水拓哉、磯智明
プロデューサー – 板垣麻衣子、板垣麻衣子
『燕は戻ってこない』は、現代社会の様々な問題を凝縮し、視聴者に深い問いを投げかけるドラマです。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
燕は戻ってこないの原作(桐野夏生)
【第64回 毎日芸術賞受賞作】
【第57回 吉川英治文学賞受賞作】
この身体こそ、文明の最後の利器。
29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。
子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかった――。
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。
『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。
頁の隙間から聞こえてくる、今の世界を保持するための骨組の軋み。こういう小説と出会うことでしか、私達は私達の不都合な部分を見つめられない。――朝井リョウ(作家)
女であること、産む性であることは、なんて悲しいのだろう。ラストを読み、思わず溢れた涙の理由を、私は今も考えつづけている。――小島慶子(エッセイスト)
新技術と経済・ジェンダー格差が交差するとき、恩恵を受けるのは男性だ。被害をこうむるマイノリティの苦しみを、マジョリティの私がどこまで想像できるかを突きつけられ、たじろいだ。――斎藤幸平(経済思想家)
読んでいる間、ずっと殴られるような感覚に襲われていた。それは自分を含む大勢の人が、今この瞬間も世界に殴られ続けているのだという、気付きであり目覚めでもある、大切な痛みだった。――村田沙耶香(作家)