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ソロモンの偽証

3.5
藤野涼子(ソロモンの偽証) 映画
藤野涼子(ソロモンの偽証)
ソロモンの偽証は、2015年3月7日公開の「前篇・事件」4月11日公開の「後篇・裁判」の2部作で公開された。監督は成島出。本作でデビューし、役名を芸名とした主演の藤野涼子をはじめ、生徒役となる主要出演者はオーディションによって演技経験を問わず選定された。第40回報知映画賞と日刊スポーツ映画大賞で作品賞、第18回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」を受賞。藤野もこの年の新人俳優賞を多数受賞した。

ソロモンの偽証の感想

前編と後編でここまで落差がある映画も珍しいだろう。単にハードルを上げただけではなく、別な人が撮ったかのようなヒドイ出来の後編である。藤野涼子が良かっただけに残念だ。

ソロモンの偽証の見どころ

まず賞賛されるべきは中学生役を演じた俳優陣であろう。約1万人の中からオーディションで選ばれた彼らは、演技経験の有無にかかわらず、思春期特有の揺れ動く感情、脆さ、内に秘めた強さを表現した。

藤野涼子は役名をそのまま芸名にしたわけだが、その凛とした存在感と力強い眼差しは作品の屋台骨を支えた。
複雑な家庭環境に苦しむ三宅樹理役の石井杏奈、いじめられっ子の浅井松子役の富田望生などが記憶に残る。

本作はいじめ、家庭内暴力、見て見ぬふりをする大人たち、そしてメディアによる無責任な報道といった社会問題を「中学校」という閉鎖的な空間に凝縮して描いたもの。
子どもたちが、大人たちに頼らず「学校内裁判」という前代未聞の手段で真実を追求しようとする姿は、同調圧力に屈せず、自らの手で正義を問い直そうとする力強いメッセージとなった。
成島出監督は、全体的に重々しく、緊張感に満ちた演出を行っている。特に『前篇・事件』では、一人の生徒の死をきっかけに、学校内に不穏な空気が充満していく様子を巧みに描いた。光と影を効果的に使った映像や、意味深な登場人物たちの表情を捉えるカメラワークが映画に引き込んだ。

ただ、文庫で6冊にも及ぶ長大なストーリーは、前後篇合わせて4時間半以上という長尺にもかかわらず、緻密な心理描写や伏線をすべて描き切ることは困難だった。原作未読の観客からは「登場人物が多くて関係性が分かりづらい」「なぜそこまでして学校内裁判を開くのか、動機が弱い」といった声が上がったという。『前篇』は謎を提示するだけで終わるため、消化不良感を訴える声もあった(後篇の公開は1か月ずれていた)。

本作の根幹である「学校内裁判」という設定そのものに対して、「いくらなんでも非現実的すぎる」という批判も根強い。
中学生たちが検事や弁護士さながらに法廷で大人たちと渡り合う姿は、物語のクライマックスである一方、「ご都合主義的」「学芸会のように見えて冷めてしまう」と感じる向きもあった。

さらに、『前篇』で大きく広げられた風呂敷に対し、『後篇・裁判』で明かされる事件の真相が、意外とあっさりしており、拍子抜け感があったことは否めない。
これは事件の真相(ホワイダニット)よりも、裁判を通じて子どもたちが成長する姿(カタルシス)に重きを置いた結果だ。
ミステリーとしての刺激的な結末を期待すると、この着地点が物足りなく感じられ、「後篇は法廷劇が延々と続くだけで退屈だった」という失速感につながった。

ソロモンの偽証 あらすじ

前篇・事件

1990年、江東区立城東第三中学校で、2年A組の藤野涼子と野田健一が同級生・柏木卓也の遺体を発見。死因は自殺と断定されるが、学校あてに柏木が不良生徒・大出俊次らに殺害されたとする「告発状」が届く。告発状は同級生の三宅樹里と浅井松子が送ったもので、学校はもみ消しを図るが、テレビ局に漏洩され大々的に報道される。浅井は事故死し、三宅は声を失う。涼子は柏木から「偽善者」と批判されたことを気に病み、真実を追及するため「校内裁判」を提案。教師たちの反対を押し切り、裁判開催を認めさせる。生徒たちは検察側と弁護側に分かれ、大出の有罪・無罪を争う準備を始める。

後篇・裁判

校内裁判が開廷し、検察側と弁護側が証人に尋問を行う。閉廷日、証人として召喚された神原和彦は、事件当日、柏木から電話を受け、彼を止めるため「ゲーム」をしたと証言。しかし柏木は神原を見捨てられず、最終的に自殺を選んだと明かす。評決は大出の無罪。神原は自分を裁くよう求めるが、涼子は「自分の罪は自分で背負うしかない」と答える。大出と神原は和解し、真犯人は柏木本人だったと判明。教師となった涼子は、14歳だからこそできた裁判と、築いた友情を振り返る。

ソロモンの偽証を観るには?

ソロモンの偽証 キャスト

藤野涼子 – 藤野涼子
神原和彦 – 板垣瑞生
三宅樹理 – 石井杏奈
大出俊次 – 清水尋也
浅井松子 – 富田望生
野田健一 – 前田航基
倉田まり子 – 西畑澪花
向坂行夫 – 若林時英
井上康夫 – 西村成忠
橋田祐太郎 – 加藤幹夫
井口充 – 石川新太
竹田和利 – 六車勇登
佐々木吾郎 – 石田飛雄馬
萩尾一美 – 鈴木きらり
小山田修 – 羽下直希
蒲田教子 – 森田想
溝口弥生 – 榎本実優
勝木恵子 – 加藤実祐紀
原田仁志 – 宮野薫
山埜かなめ – 大井絵梨花
山崎晋吾 – 大西航平
奈良若菜 – 薗田仁南
橘未散 – 升澤理子
富田優花 – 松浦寿來
石田菜緒 – 佐久間妃南子
平田陸夫 – 鈴木逸豊
福本君江 – 西田心
近藤太一 – 菊地時音
河原沙織 – 岩田華怜
林田まい子 – 宮武祭
水川冴子 – 平祐奈
吉沢元喜 – 谷井優貴
柏木卓也 – 望月歩
藤野剛 – 佐々木蔵之介
藤野邦子 – 夏川結衣
三宅未来 – 永作博美
森内恵美子 – 黒木華
森内弘恵 – 曽川留三子
佐々木礼子 – 田畑智子
浅井洋平 – 塚地武雅
浅井敏江 – 池谷のぶえ
茂木悦男 – 田中壮太郎
垣内美奈絵 – 市川実和子
大出勝 – 高川裕也
大出佐知子 – 江口のりこ
高木学年主任 – 安藤玉恵
楠山教諭 – 木下ほうか
岡野教頭 – 井上肇
尾崎養護教諭 – 中西美帆
柏木則之 – 宮川一朗太
柏木功子 – 安澤千草
垣内典史 – 浜田学
神原歩美 – 森口瑤子
神原悟 – 筒井巧
小林修造 – 津川雅彦
河野良介 – 嶋田久作
上野素子 – 余貴美子
北尾教諭 – 松重豊
今野努 – 大河内浩
津崎正男 – 小日向文世
中原涼子 – 尾野真千子

ソロモンの偽証 スタッフ

監督 – 成島出
脚本 – 真辺克彦
音楽 – 安川午朗
主題歌 – U2「With or Without You」(ユニバーサルミュージック)
エンディングテーマ(前篇) – 「ADAGIO PER ARCHI E ORGANO IN SOL MINORE」
作曲:レモ・ジャゾット、トマゾ・アルビノーニ
製作総指揮 – 大角正
エグゼクティブプロデューサー – 関根真吾
プロデューサー – 矢島孝、秋田周平
アソシエイトプロデューサー – 池田史嗣
撮影 – 藤澤順一
照明 – 金沢正夫
美術 – 西村貴志
録音 – 藤本賢一
編集 – 三條知生
装飾 – 湯澤幸夫
スクリプター – 森直子
衣装 – 宮本茉莉
ヘアメイク – 田中マリ子
VFXスーパーバイザー – 浅野秀二
VFX・CG:IMAGICA、フレームワークス・エンターテインメント
音楽プロデューサー – 津島玄一
音響効果 – 岡瀬晶彦
中学生演技トレーニング – 竹内晶子
助監督 – 谷口正行、猪腰弘之
俳優担当 – 奥田由美
ラインプロデューサー – 小松次郎
製作担当 – 大熊敏之
特殊メイク – メイクアップディメンションズ(江川悦子、神田文裕、遠藤温子)
技斗 – 二家本辰巳
技斗アシスト – 所博昭、江藤大我
カースタント – アクティブ21
ロケ協力 – 大月市、墨田区、大月短期大学、堺市立大浜中学校、やまなしフィルムコミッション、大阪フィルム・カウンシル、堺フィルムオフィス、葛飾区観光フィルムコミッション、諏訪圏フィルムコミッション[21]、すみだフィルムコミッション ほか
スタジオ – 東映東京撮影所
企画・配給 – 松竹
制作プロダクション – 松竹撮影所
製作 – 「ソロモンの偽証」製作委員会(松竹、木下グループ、博報堂DYメディアパートナーズ、朝日新聞社、GYAO、KDDI)[22]

ソロモンの偽証の原作(宮部みゆき)


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