1993年12月の日野OL不倫放火殺人事件をヒントとし、不倫相手の女児を誘拐した女性の逃亡劇と誘拐された少女の成長後を描いた角田光代の小説(読売新聞夕刊連載2005年11月21日~2006年7月24日、中央公論新社刊2007年3月25日、第2回中央公論文芸賞受賞)が原作。
『八日目の蝉』ってどんなドラマ?
不倫相手の赤ん坊を誘拐し、自らの娘「薫」として育て続けた女。その偽りの逃避行の果てに待つ悲劇と、誘拐された過去に縛られながら生きる美しくも残酷なヒロインの心の再生を描く。角田光代のベストセラー小説を、映画版とは異なる全6回の緻密なドラマとして、脚本の浅野妙子と、演出の佐々木章光、藤尾隆らが丁寧に紡ぎ上げたNHKドラマ版。制作統括の大加章雅や黒沢淳らが仕掛けた、母性とは何かを静かに問いかける人間ドラマである。
見どころは、希和子の壮絶な母性の旅路と、成長した秋山恵理菜(北乃きい)が向き合う宿命のサスペンスだ。
物語のクライマックスとなる小豆島での日々は、切ないほどに美しい。写真館の店主(藤村俊二)が切り取った一枚の写真が、あまりにも哀しい愛の逃避行の終わりを告げる。
たとえ偽りの始まりであっても、あの夏、確かにそこにあった本物の愛。映画版のダイナミックさとは一味違う、連続ドラマならではのじっくりとした心理描写と、哀愁を帯びた映像美で人間の罪と赦しを描ききった名作。
あらすじ
野々宮希和子は、不倫相手の秋山丈博の子どもを授かるが、中絶を強要されたうえに相手に捨てられ、二度と子どもが産めない体に。絶望の中、相手の家に忍び込んだ希和子は、生後間もない秋山の娘を衝動的に連れ去り、「薫」と名づけて、実の娘のように深い愛情を注ぎながら5年半にわたる逃亡生活を送る。警察の包囲網が迫る中での逃避行の果てに、ついに希和子は小豆島で逮捕され、薫は実の親の元へ戻った。
誘拐犯である「母」と引き離され、本当の父母の元に戻った薫は「恵理菜」という本名に戻るが、実母との間には深い溝ができ、周囲からの好奇の目に晒されながら心を閉ざして成長した。21歳になった恵理菜は、かつての希和子と同じように家庭を持つ男性と不倫して妊娠してしまう。自分が犯した過ち、そして自分を愛し育ててくれた誘拐犯である希和子の存在と真剣に向き合うため、恵理菜はかつての逃亡ルートをたどる旅に出る――。
キャスト
野々宮希和子(宮田京子 / ルツ) – 檀れい
秋山恵理菜(=薫) – 北乃きい
薫(中学生時) – 勝沼美紅
薫(幼少時の恵理菜) – 小林星蘭
薫(2歳時) – 篠川桃音
秋山恵理菜(=薫)(6か月) – 奥村夏帆
秋山丈博 – 津田寛治
秋山恵津子(丈博の妻) – 板谷由夏
東京の人たち
道代(薬局の女主人) – あき竹城
岸田(恵理菜の不倫相手) – 岡田浩暉
里美(希和子の同僚) – たくませいこ
女医(希和子を診察する医師) – 安藤玉恵
永井千草(マロン / ホーム時代の幼馴染) – 高橋真唯 / 畠山彩奈(8歳)
地裁裁判長(希和子の担当裁判官) – 牧村泉三郎
遊園地係員(希和子と薫が訪れる遊園地) – 松林慎司
小田原の人
仁川康枝(希和子の同級生) – 京野ことみ
名古屋の人たち
中村とみ子(ごみ屋敷の謎の女) – 倍賞美津子
島本弁護士(とみ子に立ち退きを迫る弁護士) – 松永玲子
岐阜の人たち
沢田久美(エステル) – 坂井真紀
高石敬子(サライ / ホームの主導者) – 高畑淳子
長谷川ナオミ(エンジェル / ホームの教祖) – 藤田弓子
永井智恵子(エレミア / ホームの女) – 西山繭子
小村文代(イゼベル / ホームの女) – 池津祥子
榊原みえ(ホームの女医) – 筒井真理子
サラ(ホームの女) – 宮澤美保
亮太(久美の息子)の継母 – 有坂来瞳
徳田宏美 – 宍戸美和公
飯塚ユリ – 柳英里紗
島崎沙絵(臨月でホームに駆け込んできた少女) – 水沢奈子
島崎一郎(ホームにいる沙絵の父親) – 武野功雄
取材レポーター – 櫻田彩子
小豆島の人たち
篠原文治(希和子に思いを寄せる島の漁師) – 岸谷五朗
沢田昌江(久美の母) – 吉行和子
大出喜美(ラブホテルの従業員) – 左時枝
良子(素麺食堂の従業員) – 阿部朋子
光恵(素麺食堂の従業員) – 内山千春
土田(醤油工場の若社長) – 石井正則
島の医者 – 志賀廣太郎
本土の医者 – 須田邦裕
病院の看護師 – 小野晴子
島の男(希和子に言い寄る男) – 日野陽仁
「鈴木写真館」店主 – 藤村俊二
感想
ここのところでは最も入れ込んで見ていた再放送ドラマ。「mother」と似た話で、やっぱり泣ける…
角田光代の原作がユニークなのはDV被害女性を匿う宗教団体(ヤマギシ会?)が出てくるところで(「mother」にも出ていた高畑淳子が好演)、この先どうなるのか、とハラハラさせる展開はまさにテレビドラマ的である(原作は新聞連載である)。
宗教施設でのエピソードが示すのは、逃避行とは現実から隔離されたファンタジーだということだ。
成長したのちに北乃きいがつぶやく「どこまで行っても海はなかった。引っ掻き傷みたいな電線があるだけ」という独白はせつない。
永作博美(「ダーティ・ママ」は期待したのに散々な出来だった)の映画版は、見ていない。壇れいは今回、かなり永作を研究しているように見えるのだがどうだろうか。
翌年の「美しい隣人」での仲間由紀恵は、壇が赤ん坊をさらって逃げるシーンの逆の立場のオマージュではないか(初回の雨の住宅街に佇む壇をとらえるシーンなど)。
当時、芸能人に詳しくない私は、金麦のCFでつとに女性に評判の悪い壇れいを壇家の人とばかり思い込んでいたのだが、全然カンケイないのだった。
(後述:檀れいがよくドラマに出るようになったのは本作以降と記憶する)
八日目の蝉(ドラマ)を観るには?
八日目の蝉(ドラマ)のスタッフ
音楽 – 渡辺俊幸
演出 – 佐々木章光・藤尾隆(テレパック)
制作統括 – 大加章雅、黒沢淳(テレパック)
主題歌 – 城南海 「童神〜私の宝物〜」
制作・著作 – NHK、テレパック
八日目の蝉の原作
直木賞作家・角田光代が全力を注いで書き上げた、心ゆさぶる傑作長編。不倫相手の赤ん坊を誘拐し、東京から名古屋、小豆島へ、女たちにかくまわれながら逃亡生活を送る希和子と、その娘として育てられた薫。偽りの母子の逃亡生活に光はさすのか、そして、薫のその後は――!? 極限の母性を描く、ノンストップ・サスペンス。第2回中央公論文芸賞受賞作。




