『マドンナ・ヴェルデ〜娘のために産むこと〜』ってどんなドラマ?
医療ミステリーの旗手・海堂尊の双子作『マドンナ・ヴェルデ』と『ジーン・ワルツ』を原作に、現代の医療界における最大にして最深のタブーの一つ「代理母出産」をテーマに据えた社会派人間ドラマ。
脚本を手がけたのは『セカンドバージン』や『これは経費で落ちません!』など、女性心理や社会的葛藤の鋭い描写で定評がある宮村優子。演出陣もNHKの重厚な社会派ドラマを多く手がけるらが担当しており、奇をてらわない堅実なカメラワークが重いテーマの重みをストレートに伝える。
主演の松坂慶子は、55歳で娘の子供を宿すという難しい役を自然体の演技で体現。娘役の国仲涼子も、母親としてのエゴと理性の間で揺れ動く複雑な心理を演じる。周囲を固める勝村政信や長塚京三といった医師役のキャストは、ステレオタイプな「冷徹な医師・権力者」っぽく見える。
映画『ジーン・ワルツ』が医療崩壊やサスペンス要素に重きを置いていたのに対し、本作は当事者である「母と娘」の内面にフォーカスしており、法的な是非だけでなく、家族間の感情の縺れをじっくりと追うようにできている。不妊治療の現実や世間の容赦ないバッシングが淡々と描かれているので、爽快なエンターテインメントを期待すると少々重苦しく感じるだろう。命の誕生という奇跡に向き合う人間の本質を見届けたい人にはおすすめ。
あらすじ
早くに夫を亡くした55歳のみどり(松坂慶子)は、一人娘で産婦人科医の理恵(国仲涼子)に『病気で子宮を失った自分の代わりに子どもを産んでほしい』と頼まれる。
キャスト
曽根崎理恵 – 国仲涼子
曽根崎伸一郎 – 片桐仁
青井ユミ – 南明奈
妙高みすず – 柴田理恵
荒木浩子 – 相田翔子
荒木達弥 – 三宅弘城
神崎貴子 – 馬渕英俚可
熊田幸子 – 大島蓉子
阿部大吾 – 芦川誠
高木路子 – 市川千恵子
関町仁 – 堀越富三郎
津田コージ – タモト清嵐
清川吾郎 – 勝村政信
屋敷統 – 本田博太郎
盛田克子 – 松金よね子
三枝茉莉亜 – 藤村志保
丸山慧 – 長塚京三
感想
ファーストインプレッション
松坂慶子に片桐仁、アッキーナ、と「ゲゲゲの女房」の面子が揃ったドラマである。
松坂慶子はもちろん55歳どころじゃないだろう、と思って調べてみると昭和27年の58歳。思ったよりも若かった(驚いたのは初老の長塚京三で、なんと設定通りの65歳である)。
「妊婦役なので痩せなくてもいいと思っていたら、痩せてくれと言われた」と新聞のインタビューで答えていたそうで、「愛の水中花」を知る者には巨大化して見えるのは致し方ないが、むしろ若いときより美しく見える瞬間があるし、やはり国仲涼子などとは器が違うところを見せてくれる。
すでに閉経している母親にリスクの高い代理母を頼み込んでおいて、毎日のように「私の赤ちゃんによろしくね♪」と電話してくる国仲は、かなり身勝手なのだが、今後この母娘の闘いの話になるらしい。
「ジーンワルツ」と、その裏話である「マドンナ・ヴェルデ」の原作がゴッチャになっているらしく、お得なドラマであるが、菅野美穂が国仲の役を演じているらしい映画版「ジーンワルツ」を見たくなってきた。
第3話まで観て

国仲涼子
アッキーナのヤンキー演技は、ちょっとやりすぎな感じもする。
本当の父親の後輩という青年が父親役として手をあげ、ホロリとさせる展開だが、ヤンキー演技が過剰なので、隠されていた「本当は産みたい女の気持ち」があらわになる、というありがちな展開には、ちょっとしらけてしまった。
さて、父親役を買ってでたのは長塚京三も同じである。
元ジャーナリストである長塚は、日本で許されていない代理母に挑む松坂に賛成はできない。
「嘘はつかない」という理屈っぽいルールを自らに課して、疑いの目をもって診察にあたる勝村政信の前に松坂と並ぶのだが、このへんの脚本はうまいと思った。
長塚の役回りは、松坂が自ら吐露する“母親の愚かしさ”の、対極を演じることなのだろう。
こういった構図づくりはイカニモなNHKであらん。
最後に、「私の赤ちゃんによろしく♪」という不遜な挨拶を繰り返す国仲涼子が、MITに留学中の片桐仁と離婚したことが明らかになる。
松坂慶子にとってはハシゴをはずされたようなものである。
次週はいよいよ、国仲と、松坂の確執シーンが幕をあけるらしい。
楽しみである。
松坂慶子は、自分の子宮にいる胎児にしのぶという名を付ける。
しのぶなら男女どちらでもいいので、なかなかうまいと感じた。
第4話まで観て

柴田理恵
勝村政信が自分の部屋で国仲涼子にピーベリーのコーヒーをふるまいながら、代理母と依頼母(?)に対立関係が生じた場合の問題を指摘するシーンがあった。
通常のコーヒー豆(平豆)は実にふたつ一組で入っているが、ピーベリーは単独で入っているという。
全体の収穫量の3~5%程度で、1個しか入っていないため、半円球型ではなくまん丸である。生豆成分は平豆と同じだが、火の通り方の違いから焙煎後の味わいは異なる。
コーヒー好きとしてはぜひ一度味わってみたいものだが、この話は、畸形を表す今後の伏線なのだろうか。
国仲涼子は自分の意思で一方的に片桐仁と離婚したことが明らかになり、それを知った松坂慶子は、「あなたにはこの子は渡せない!」と国仲のマンションを飛び出すが、長塚京三は、なんだかんだ理屈をつけて娘のマンションに戻るよう説得する。
見ているほうは松坂とい国仲との敵対関係が激化することを期待しているので、ここは見ていて苛々する流れである。
松坂が胎児につけた「しのぶ」という名前が台詞に登場せず、そのまま放置されているのもがっかりだった。
アッキーナは後輩の青年に出て行かれて、腎炎を抱えながらの出産の意思をかためる。このエピソードはほろりとさせるいいものであった。
第5話まで観て

南明奈
国仲涼子の表情は相変わらず感情移入を拒むかたさを保ち、本当は何を考えているのかわからないままなのだが、もう次回は最終回である。
このまま終わるのか、何か結末らしきものがあるのか、きわどいところにドラマは差し掛かっている。
今回は片桐仁の回であって、これはこれでなかなか良いと思わせた。あくが強すぎてあまり好きな俳優ではないのだが、理科系の学者バカという飛び道具的な役柄ならそれも許せるのである。


