球形の荒野(2010年版ドラマ)
感想
田村正和、川奈のシーンなどさすがの迫真演技だが、どうやら本当に声が出ないらしい。回想シーン中での中年時代の野上顕一郞役で、幼い娘に「高い高い」をしてやったりしているので、腰など大丈夫だろうかとひやひやする。
ダサメ君、いやサダメ君、いや生田斗真は、フレッシュな役柄でなかなかよかった。君塚良一はこういう好青年を描かせるとうまいですね。
野上久美子役の比嘉愛未も、良き時代の庶民的なお嬢さんを好演していた。
しかし、これは単なる好演では済まない重大な役である。
このドラマは、実はかなりの回数、テレビドラマ化されている。
1978年版 野上顕一郎:滝沢修 野上久美子:栗原小巻 添田彰一:村井国夫
1981年版 野上顕一郎:三船敏郎 野上久美子:島田陽子 添田彰一:中村雅俊
1992年版 野上顕一郎:平幹二朗 野上久美子:若村麻由美 添田彰一:田中実
ちなみに映画版(1975年)は、以下の通りで、久美子役をドラマ版と同じ島田陽子が演じている。
こうしてみると、この原作はほぼ10年おきにドラマ化され、しかも92年版の若村麻由美はともかく、各時代の第一級女優が野上久美子を演じている。
放映寸前の発表会か何かで、田村正和がかなり緊張したコメントを話しているのを見たが、このリストに名を連ねることになった比嘉愛未の緊張のほうが、数倍大きかったのではないか。
臆していなかった演技は、もしかしたら大女優になる証かもしれない。
江口洋介が演じた鈴木次郎というのは、原作に存在していなかったと思う(あいまい)。野上顕一郎に反感をもつ出征した人物をあえて警察側に配するという仕掛けである。
また、舞台を東京オリンピック開催前夜(1964年9月)の東京に変更し、日本の復興がよりコントラストを増すように作られている(原作の舞台は1961年)。
戦争中学徒兵の出陣式が行なわれた国立競技場でオリンピックの開会式が行われるという格好だ。
松本清張の原作は『オール讀物』1960年1月号~翌年12月号に連載され、文春から1962年1月に本が出た。終戦工作を計った外務次官が戦後日本で右派から命を狙われる、というゴルゴ13みたいな話がこの頃ではまだリアリティがあったのだ。
なにしろ戦争が終わってからまだ15年しかたっていないのである。
あらすじ
昭和39年、東京五輪を目前に控えた日本で、奈良・唐招提寺の芳名帳から、すでに死亡したはずの元外交官・野上顕一郎と酷似した筆跡が見つかる。直後、野上の旧公使館関係者が殺害され、事件は過去へと遡っていく。娘・久美子は父の生存を疑い、警部補・鈴木次郎も独自捜査を開始。やがて終戦間際の公使館で起きた悲劇、祖国と家族を捨て中立国へ渡った野上の秘密が明らかになる。戦争の記憶と現在の殺人事件が交錯し、残された家族の葛藤と真実への執念を描く本格ミステリー。
キャスト
鈴木次郎(警視庁警部補) – 江口洋介
添田彰一(世田谷警察署刑事) – 生田斗真
野上久美子(野上顕一郎の娘) – 比嘉愛未
筒井源三郎(品川の旅館の主人) – 小日向文世
芦村亮一(大学助教授) – 萩原聖人
芦村節子(野上久美子の従姉) – 木村多江
伊東忠介(大和郡山市の魚養殖園経営者) – 相島一之
伊東常夫(伊東忠介の息子) – 山崎樹範
伊東シマ子(伊東常夫の妻) – 西原亜希
廣瀬英二 – 趙珉和
宗方(世田谷警察署刑事課長) – おかやまはじめ
島津(警視庁刑事) – 菊池均也
吉川(警視庁刑事) – 飯田基祐
沢口(刑事) – 田鍋謙一郎
堤(刑事) – 中林大樹
小椋(刑事) – 駿河太郎
松井(民和党幹事長) – 小峰隆司
エレーヌ・ヴァンネード(野上顕一郎の再婚相手) – ジュリー・ドレフュス
早川和夫(奈良県警刑事) – 曽我廼家文童
佐々木実(警視庁幹部、捜査本部長) – 永島敏行
村尾芳生(外務省欧亜局課長) – 佐野史郎
大野木(右翼) – 福本清三
山越伍郎(殺し屋) – 清水綋治
住職 – 伊武雅刀
旅館女将 – 唐木ちえみ
笹島恭三(画家) – 津嘉山正種 (久美子をモデルに絵を描く画伯)
野上孝子(野上顕一郎の妻、久美子の母) – 風吹ジュン
滝 良精(世界文化交流連盟常任理事) – 草刈正雄
筒井屋旅館の女中) – 濱田マリ
ナレーション – 松元真一郎(フジテレビアナウンサー)
球形の荒野 スタッフ
脚本 – 君塚良一
企画:高井一郎
プロデュース – 喜多麗子(フジテレビ)、西岡善信(映像京都)、西村維樹(映像京都)、岡原伸幸(映像京都)
演出・プロデュース – 永山耕三(フジテレビ)
編集 – 新井孝夫
美術監督 – 西岡善信
撮影協力 – 南禅寺、新薬師寺、下鴨神社、国立京都国際会館、但馬空港、交通科学博物館、京都大学人文科学研究所、神戸女学院大学、武庫川女子大学、ウェスティン都ホテル京都、川奈ホテル、上毛電気鉄道、桐生市、加須市、京丹後市 (琴引浜)ほか
宿泊協力 – 京都全日空ホテル
映像協力 – 東宝(映画『東京オリンピック』)他
企画協力 – ナック、菊池実
制作協力 – 映像京都
制作・著作 – フジテレビ

