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引き裂かれたカーテンの感想
実は学生時代に見てひどく退屈だと思い込んで以来の鑑賞なのだが、大変面白かった。一体どこを見ていたのか。
凡庸な印象を与えるのはヒチコックがバーナード・ハーマンをクビにしてしまったことが大きい。それとジュリー・アンドリュースのミスマッチである。
本作は企画としてまさに「スパイの妻」なのだが、なぜか途中からポール・ニューマン視点になり、「レベッカ」であれほど避けられていたはずの「語り手が見ていないシーンの映像モンタージュ」まで挿入されたりして、愕然とする。そのへんから話が崩壊していっていると思う。
農場での殺人シーン(すごい速さでカットが変わる)など、もっと記憶に残ってもいいはずなのだが……
言葉のわからぬ異国を舞台にした後半の脱出劇は手に汗握るものであり、哀れなポーランド人の公爵夫人のくだりや、プリマドンナの伏線などみごと。評価もまた「引き裂かれる」映画なのかもしれない。
引き裂かれたカーテンの人物相関図
引き裂かれたカーテン 見どころ
当時の興行収入はそれなりにあったが、批評家の評価は賛否両論。ヒチコックとしては珍しく「不完全燃焼」と見る声もあるが、現実的なサスペンス描写を高く評価するファンも多い。後年、「ヒチコックが“スパイという現実”をどこまで描けたか」を再評価されることも増えている。
- 冷戦下のリアリズム
アメリカから東ドイツ(社会主義圏)への“偽装亡命”という設定は、当時の緊張感ある国際情勢を色濃く反映。
ヒッチコックのサスペンス演出と東西冷戦の不気味さが融合している。 - 緊張感あふれる殺人シーン
特に有名なのが、マイケルがスパイの一人を殺す場面。殺すことの困難さと現実的なもどかしさを描写しており、ヒッチコック作品中でも屈指の「不快なリアリズム」が話題に。 - 大スター共演の裏にあった不協和音
ポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースという当時の超人気俳優が共演したが、ヒッチコックはこの配役をあまり好んでおらず、撮影現場の温度差も後年語られた。
音楽も名コンビだったバーナード・ハーマンが降板し、後任のジョン・アディソンによって軽快な音楽に変更されたことも議論を呼んだ。
引き裂かれたカーテン あらすじ
原子物理学者マイケル・アームストロングは学術会議に出席するため、アシスタントで婚約者のサラ・シャーマンと共に船でコペンハーゲンに向かっていた。しかしコペンハーゲンに着く前、マイケルはある文書を受け取り、急に「ストックホルムで研究活動を続ける」と言い出した。コペンハーゲンに着いて早々、書店から受け取った本に隠された暗号に従い東ベルリン行の飛行機に乗るマイケルを不審に思ったサラは、彼のあとを追う。
到着した東ベルリンでは、西側記者も招いた記者会見でマイケルの亡命受け入れとカール・マルクス大学での教授職就任が大々的に発表される。困惑するサラを、東ドイツ保安省の役人ゲルハルトはマイケルと東側の研究に協力するのなら留まっても良いと諭す。しかし翌朝、マイケルはサラに「国に帰れ」と置き手紙を残し、監視役の目を感じつつ暗号が示した存在「π(パイ)」と接触するため、郊外の農園へと向かうのだった。
果たしてマイケルは売国奴なのか、科学者を装ったスパイだったのか。謎と危険に満ちた東側陣営の中で、サラは驚くべき事実を知る。
引き裂かれたカーテンを観るには?
引き裂かれたカーテンのキャスト
サラ・ルイス・シャーマン – ジュリー・アンドリュース
カール・マンフレッド教授 – ギュンター・シュトラック
ハインリッヒ・ゲルハルト保安省長官 – ハンスイェルク・フェルミー
グスターヴ・リント教授 – ルドウィヒ・ドナート
ヘルマン・グロメク – ヴォルフガング・キーリング
クチンスカ伯爵夫人 – リラ・ケドロヴァ
農夫 – モート・ミルズ
農夫の妻 – キャロリン・コンウェル
コスカ医師 – ギゼラ・フィッシャー
ヤコビ(バスでの脱出協力者) – デヴィッド・オパトッシュ
バレリーナ – タマラ・トゥマノワ
ヒューゴ(劇場からの脱出協力者) – モーリス・ドナー
ヴィンケルマン教授 – ロバート・ブーン
グートマン教授 – ノーバート・シラー
オトー・ハウプト(護衛) – ハロルド・ディレンフォース
フレディ(本屋) – アーサー・グールド=ポーター
タクシー運転手 – ピーター・ローレ・Jr
グレーテル・コスカ – アンドレア・ダルビー
ホテル旅行案内係 – エリック・ホランド
密航協力者 – レスター・フレッチャー
引き裂かれたカーテンのスタッフ
脚本 – ブライアン・ムーア、ウィリス・ホール、キース・ウォーターハウス
製作 – アルフレッド・ヒッチコック
音楽 – ジョン・アディソン
撮影 – ジョン・F・ウォーレン
編集 – バッド・ホフマン
製作会社 – ユニバーサル・ピクチャーズ
配給 – ユニバーサル・ピクチャーズ
『引き裂かれたカーテン』は、ヒチコック晩年の作品の一つで、冷戦下の東西対立と個人の葛藤を描いた映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。