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0.5ミリの感想:「ツィゴイネルワイゼン」を思わせる佳作
仕事の必要がなかったら見なかったであろう196分の映画。しかし、これは見るべき傑作であった。
音の使い方に「ツィゴイネルワイゼン」を思い起こさせるオブセッションがある。
そして7分だったかの津川雅彦のモノローグシーンが出色である(安藤サクラの問いかけがオフで入っているのもいい)。安藤サクラ は(もちろん「まんぷく」も含めて)ドラマでは絶対見られないほど美しく撮られている(監督はサクラの姉で、妹をきれいに撮れるのは自分しかいないと言っている)。
小説も読んだ。この監督はまず小説を書き、それから映画を撮るという順番になる。小説にはサクラの内声が綴られ、映画では描かれなかったことも書かれている。映画で感動した人は必読。
0.5ミリ 見どころ
安藤モモ子(安藤桃子)の書き下ろし小説(2011年幻冬舎刊)を安藤自身が監督・脚本を担当し、主役を実妹の安藤サクラ、エグゼクティブプロデューサーに実父を奥田瑛二、フードスタイリストを実母の安藤和津が務めて映画化。ロケは2013年3~4月にかけて高知県で行われ、同年10月の四万十おきゃく映画祭で初上映。2014年10月に高知市の城西公園に設置した仮設劇場で先行上映したのち、11月8日より全国公開した。題名の意味は「静電気が起こるくらい近い、人と人との距離感」を指す。
- “介護”を出発点に、人生の根底にある孤独や尊厳を描く
主人公・山岸サワ(安藤サクラ)は訪問介護ヘルパー。とある事件をきっかけに職を失い、そこから「居候的に高齢男性たちの生活に入り込んでいく」という、やや破天荒な生活を始める。
サワのスタンスは「介護してあげる」ではなく、「一緒に暮らす」。それは、“介護”と“共生”のあいだにある、0.5ミリの距離を模索する旅でもあり、孤独な高齢者と一人の若い女性の不思議で温かなつながりがユーモアたっぷりに描かれる。 - 安藤サクラの“化け物級”の演技力
この映画の最大の魅力はやはり主演・安藤サクラの存在感。とにかく図太くて、明るくて、どんな相手にも物怖じしないサワを、まるで地で行くように演じる。
裸で風呂に入るじいさんに突っ込む、金にがめついところもある、ときには暴言も吐く、それでも相手の孤独に正面から向き合う。そんなサワは、「聖人」でも「悪女」でもなく、ただ一人の“生きてる人間”として描かれていて、そのリアルさが刺さる。 - 高齢男性たちとの絶妙なドラマ
サワが関わる3人の老人たちはそれぞれ癖があるが、どこか哀愁と可笑しみがあり、人生の重みを背負っている。
たとえば津川雅彦演じる老人は、戦争体験と息子との確執を抱えており、柄本明演じる老人は破天荒で欲望に忠実であり、坂田利夫&井上竜夫の老人ペアは大阪人情ギャグである。
彼らとの“同居”生活は、笑いあり、涙あり、哲学あり。どれも予定調和で終わらず、人間臭さがにじみ出るエピソードばかりだ。 - 3時間超の“ロードムービー×人生劇場”
映画は約197分と長尺ですが、構成はオムニバス風でテンポがよく、サワの“人生流転の旅”として描かれる。章立てされており、それぞれの老人との交流を通して、日本の地方、昭和的価値観、家族の変容、老いと孤独など、様々な社会的テーマが浮かび上がる。 - タイトルに込められた深い意味
「0.5ミリ」とは、物理的な距離だけでなく、心と心の距離、人と社会の距離、善と悪のあいだの微妙な揺らぎを象徴している。“ピッタリ寄り添うでもなく、突き放すでもなく、半歩だけ近づいてみる”。その微細な距離感の中にこそ、生きづらさを抱えた現代人へのヒントがあるような作品だ。
0.5ミリ あらすじ
介護ヘルパーの山岸サワは、ある日派遣先で寝たきり老人の娘から唐突に「冥途の土産におじいちゃんと寝てほしい。」と依頼される。サワは添い寝するだけとの条件で引き受けるが、その日のうちに大事件に巻き込まれ、職場も住居も失ってしまう。
住み慣れた街を離れたサワは、見知らぬ土地土地で見つけたワケありの老人につけこみ、彼らの生活に入り込むおしかけヘルパーを始める。
映画0.5ミリを観るには?
0.5ミリのキャスト・スタッフ
キャスト
雪子の家族と元夫
片岡雪子 – 木内みどり
片岡昭三 – 織本順吉
片岡マコト – 土屋希望
佐々木健(たけし) – 柄本明
真壁家の関係者
真壁義男 – 津川雅彦
真壁静江 – 草笛光子
浜田 – 角替和枝
真壁久子 – 浅田美代子
その他サワが出会う人たち
石黒茂 – 坂田利夫
斉藤末男 – ベンガル
康夫 – 井上竜夫
カラオケ店員 – 東出昌大
スタッフ
脚本:安藤桃子
原作:安藤桃子『0.5ミリ』
製作:長澤佳也
製作総指揮:奥田瑛二
音楽:TaQ
主題歌:寺尾紗穂 「残照」
撮影:灰原隆裕
編集:増永純一
プロデューサー:長澤佳也
アソシエイトプロデューサー:畠中鈴子
音楽:TaQ、久保田修
アクション指導:山田一善、高野芽唯
ヘルパー指導:社会福祉法人ふるさと自然村、医療法人地塩会、医療法人香美会
デザイナー:梅原真
撮影協力:高知県、高知市、高知フィルムコミッション、土佐市、香南市、香美市、いの町、えひめフィルムコミッション、アジア・フィルム・ネットワーク ほか
ラボ:IMAGICA
企画:ゼロ・ピクチュアズ
制作プロダクション:リアル・プロダクツ
公開:2014年11月8日
上映時間:196分
キャスト/スタッフインタビュー
- 【安藤桃子】安藤桃子、場所をつくってアクションにつなげる(GINZA)
- 【安藤桃子】「介護」というひと言ではくくられない心の距離の取り方を描きたかった(HELPMAN JAPAN)
- 【安藤サクラ・安藤桃子】安藤サクラが安藤桃子と「0.5ミリ」題材にトーク、自身をミミズに例える場面も(映画ナタリー)
『0.5ミリ』は報知映画賞作品賞、キネマ旬報ベストテン2位に選ばれたほか、ブルーリボン賞、毎日映画コンクール、ヨコハマ映画祭、日本アカデミー賞などで受賞した、2014年の邦画を代表する映画です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
小説0.5ミリ(安藤桃子)
介護ヘルパーの山岸サワは、派遣先の寝たきり老人の娘から「冥途の土産におじいちゃんと寝てほしい」と依頼される。サワは添い寝するだけとの条件で引き受けるが、その日のうちに大事件に巻き込まれ、職場も住居も失ってしまう。住み慣れた街を離れたサワは、見知らぬ土地土地で見つけたワケありの老人につけこみ、彼らの生活に入り込むおしかけヘルパーを始める。