悪い種子の感想
種子には「たね」とルビが付くが、劇中のbad seedは「悪い血筋」と訳されている。つまり遺伝差別についての映画でもある。
ナンシー・ケリー(日本公開作がほとんどない)演じる母親は、自分が有名な女殺人鬼の娘であることにふと気がつき、8歳の娘(パティ・マコーマック)に犯罪者の血が遺伝していることに苦悩する。
成長したマコーマックも多くの映画に出ているが、日本公開作はほとんどない。ただしドラマはERやらクリミナルマインド、グレイズアナトミー、デスパレートな妻たち、スーパーナチュラル等でおなじみ。
本作はブロードウェイのヒット作の映画化であり、ケリーもマコーマックも劇場版からのキャストなので非の打ちどころのない演技(ややオーヴァー)である。ワンシーンワンショットが基本だが、複数キャメラでの切り返しもあり、映画としても飽きさせない工夫がある(130分で長めだが)。
悪い種子のラストシーン
ヘイズコードによってマコーマックが天罰を受ける結末が加えられ、エンドマークの後に人を食った役者紹介と、「この子ったら…!」とケリーがマコーミックの尻を叩くショットが付くことでも有名である(舞台版でも同じことをしたのだろうか?)
悪い種子の見どころ
- 「可愛らしい悪魔」ローダ・ペンマークの衝撃
まだ8歳の少女が、自身の欲望のために何の躊躇もなく殺人を犯し、周囲を巧みに操る姿が、当時の観客に大きな衝撃を与えた。パティ・マコーマックが演じるローダの、天使のような愛らしさと、冷酷で計算高い本性のギャップは、映画史に残る「恐ろしい子供」像を確立した。 - 母親の心理的苦悩
愛する娘が殺人鬼であるという事実を知ってしまった母親クリスティーンの、精神的な追い詰められ方がリアル。母親としての愛情、そして娘の凶行を止めたいという葛藤を演じるナンシー・ケリーが見どころ。 - 「悪の遺伝子」というテーマ
「悪は遺伝するのか」「生まれながらの悪というものは存在するのか」という、普遍的で倫理的な問いかけがある。クリスティーン自身の隠された過去が、このテーマにさらなる深みを与える。 - サスペンスと心理描写の妙
直接的な暴力描写よりも、ローダの巧妙な嘘と、クリスティーンがそれに気づいていく過程の心理戦が中心。じわじわと迫る恐怖と、息詰まるような緊張感。 - 検閲による結末の変更
本作は、当時のハリウッドの検閲コード(ヘイズ・コード)の影響で、原作や舞台版とは異なる結末が用意されている。この映画版の結末については賛否両論あるが、それがまたこの作品の歴史的背景と話題性を高めている。 - その後のサイコパス映画への影響
「悪い種子」は、子供のサイコパスを描いた作品の先駆けとして、後の「エクソシスト」や「オーメン」、「エスター」といったホラー・スリラー作品に多大な影響を与えたとされる。
悪い種子のあらすじ
ローダ・ペンマークは8歳の少女だが、周囲の子供たちから距離を置かれ、連続殺人犯の素質を示す。学校のピクニックで同級生のクロードが溺死し、ローダは関与を疑われる。調査ジャーナリストは、ローダの母クリスティーンが連続殺人犯ベッスィー・デンカーの娘だと判明。ローダはペットや隣人の死に関与し、用務員リロイを殺害。クリスティーンはローダの殺人を知り、彼女を死なせるため睡眠薬を与え、自らピストル自殺。ローダは助けられ、父親は妻のノイローゼと誤解。クリスティーンの手紙や証拠は捨てられ、ローダは再び自由に殺人ができるようになる。
悪い種子を観るには?
悪い種子のキャスト
ローダ・ペンマーク(クリスティーンとケネスの幼い娘):パティ・マコーマック
リロイ(アパート清掃員):ヘンリー・ジョーンズ
ホーテンス・デーグル(クロードの母親):アイリーン・ヘッカート
モニカ(アパートの大家):イヴリン・ヴァーデン
ケネス・ペンマーク(大佐・ローダの父・クリスティーンの夫):ウィリアム・ホッパー
リチャード・ブラボー(クリスティーンの父・ローダの祖父):ポール・フィックス
エモリー(モニカの兄):ジェーシー・ホワイト
レジナルド・タスカー(犯罪学者):ジョージ・クラーク
ファーン(ローダの小学校の先生):ジョーン・クロイドン
ヘンリー・デーグル(ホーテンスの夫・クロードの父親):フランク・キャディ
悪い種子のスタッフ
「悪い種子」は、時代を超えて語り継がれるサイコ・スリラーの傑作です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。