姜暢雄を動かした黒幕は一体誰か。
人物配置的には榎木孝明なのだが、まあそれはないだろう。一世一代の大芝居を打った姜暢雄であったが、中田喜子が指摘するまでもなく、サイズが合わないから戸次が御田園陽一ではない、というのは少々弱かったと思う。
さて、ドラマの終わりまであと2週間となったわけだが、戸次重幸が逃げてしまったので、クライマックス以降の展開が読みにくくなった。ヒゲを剃って部屋を出た白塗りの榎木孝明が何を言い出すのか、中田喜子が戸次に手を差し伸べた結果、何が起こるのか。そういえば、戸次が妻の死を悼む描写がこれまでに何度も出てきているのだが、その意味もわからない。
サラマンダープロジェクトはどうなるのだろうか。
最終週|最大の謎は榎木孝明のドーラン
視聴はしたのだが、諸事情によりタイミングを逸してしまった。夏ドラマも始まっているので面倒くさくなったが、せっかくここまで追いかけてきたので一応のフォローはしておく。
そもそも最終回のレビューを書く気が起こらないのは、テレビドラマの構造上、最終回については特に書くことがないからである。何度も書くように最終回は次週に期待をつなぐ必要がない。続編や劇場版などの予定があれば別だが、そうでもなければ、結局は、最終回まで見てくれた視聴者に満足感を与えるサービスでしかない(本当はもちろん、DVD版のアピールという重要な役割がある。DVDはちょうどクライマックスのタイミングでリリースされてレンタルも開始するので、TSUTAYAの店頭では制作費回収のためにもうひとつの熾烈な戦いが展開される。)
そういうわけで、最終回の楽しみ方は、それまでの楽しみ方とは別なものになるべきだと思っている。
さて、本作がDVD化されるかどうかは知らない。普通、昼ドラを放映終了後に再見する機会はない。そういう意味で、60週ものあいだ眺め続けた京野ことみや入山法子、戸次重幸、中田喜子の姿が見られなくなるのは残念である。姜暢雄については、この男が出てくると話が進まなくなるので、その優柔不断な役設定にイライラさせられたが、再放送の始まった2007年版「花ざかりの君たちへ~イケメンパラダイス」で興味深い演技を披露していることを知ったので(オスカー・M・姫島役)、ちょっと見直すところがあった。 「霧に棲む悪魔」の主演は、姜にとってはキャリア的に冒険であったはずだが、あまりこの俳優の持ち味をうまく引き出すことができなかったのではないだろうか。
つい脱線気味になるが、ドラマの内容にも少しだけふれておこう、
最後の2週間が、1回分がそれまでの1週分に匹敵するぐらい展開のテンポが早くなり、毎日が驚きの連続であって、見逃したくないと思わせるものであった。クライマックスから最終回まで2週間として300分(正味は250分ぐらいか)もあるので、ドラマ好きにとっては堪能できる時間が長い、贅沢な期間であったと言える。
結末についてあれこれ言い始めると、きりがなくなってしまうのだが、最大の謎は、榎木孝明のドーランであるとだけ指摘しておく。
終盤、榎木は引きこもりから解放され、最終回にいたっては丘に建つ安原霧子の墓にすがって泣くのだが、その顔にはドーランは見られなかった。
このドーランが何を意味するのかはよくわからないが、おそらく、引きこもり状態と何か関係があるのだろう。
まるであの階上の薄暗いゴシックな書斎は、榎木孝明が、龍村玄洋を演じるための舞台だったとでもいいたげなのである。
霧に棲む悪魔のキャスト
安原霧子【白い服の女】 – 入山法子
北川弓月 – 姜暢雄
日浦晴香 – 京野ことみ
御田園陽一 – 戸次重幸
龍村玄洋 – 榎木孝明
蓮見依子 – 中田喜子
影山仁 – 大沢樹生
木島誠吾 – 鶴田忍
唐木田翔 – 石井智也
荻野克次 – 逢坂じゅん
萩野美知子 – 広岡由里子
鹿野良夫 – 本村健太郎
宮下時彦 – 矢島健一
宮下寿々子 – 駒塚由衣
対馬諭吉 – 斉藤暁
安原浅子 – 岡まゆみ
平木麻里 – 田島ゆみか
森田 – 芦川誠
乃中花恵 – 松田沙紀
秋山 – 城戸裕次
霧に棲む悪魔のスタッフ
原案:「白衣の女」ウィルキー・コリンズ
脚本:金谷祐子
音楽:羽岡佳
広報:渡辺秀彦(東海テレビ)、山本章子(東海テレビ)
演出:松田礼人(ドリマックス)、木内健人(5年D組)、奥村正彦
制作:東海テレビ、国際放映
霧に棲む悪魔の原作
暑熱去らぬ夏の夜道、「ロンドンに行きたい」と声をかけてきた白ずくめの女。絵画教師ハートライトは奇妙な予感に震えたー。発表と同時に一大ブームを巻き起こし社会現象にまでなったこの作品により、豊饒な英国ミステリの伝統が第一歩を踏み出した。ウィルキー・コリンズ(1824-89)の名を不朽のものにした傑作。

