「二重生活」における珠の「尾行」という行動は、このように、単なるミステリーやサスペンスに留まらず、ハイデガーの哲学が問いかける「人間が他者とどう関わり、その中でいかに自己を認識し、本来の自己へと向かうのか」という深遠なテーマを、具体的な物語として表現していると言える。
参考図書
本書は、、可能な限り日常の日本語で『存在と時間』を理解することを目指します。章立てに従って、原文を忠実に読解した上で平易な日本語で解説して行きますので、翻訳書で『存在と時間』を読むよりもはるかに容易にその内容を理解することができます。また、なぜハイデガーはこの書を完成させることができず、未完のままに終わったのか、その「限界」についても、本書を読み進めていけば、おのずと理解できるでしょう。
二重生活 あらすじ
大学院の哲学科に通う珠は担当教授の篠原から、修士論文のテーマとして、ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する“哲学的尾行”の実践を持ちかけられる。理由なき尾行に戸惑う珠だったが、書店でマンションの隣の一軒家に美しい妻と娘と共に住む石坂を発見。作家のサイン会に立ち会っていた彼を尾行しようとする。
二重生活を観るには?
二重生活 キャスト
二重生活 スタッフ
『二重生活』は、静かで重層的な人間ドラマです。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
二重生活の原作(小池真理子)
大学院生の珠は、大学時代のゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性、石坂の後をつける。そこで石坂の不倫現場を目撃し、他人の秘密に魅了された珠は、対象者の観察を繰り返す。しかし尾行は徐々に、珠自身の実存と恋人との関係をも脅かしてゆき――。渦巻く男女の感情を、スリリングな展開で濃密に描き出す蠱惑のサスペンス。 解説・野崎歓



