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視線

マイカ・モンロー(視線) 映画
マイカ・モンロー(視線)
ザック・フォードのオリジナル脚本に基づき、クロエ・オクノが長編監督デビュー作として脚本と監督を務めた2022年のサイコスリラー映画。マイカ・モンロー、カール・グルスマン、バーン・ゴーマンが出演。2022年1月21日にサンダンス映画祭で世界初公開され、審査員大賞にノミネートされたのち、2022年6月3日に米国で劇場公開。

「エペペ」を思わせる神経衰弱的映画(視線の感想)

夫の転勤に同行してブカレストのアパートに転居したマイカ・モンロー(「イット・フォローズ」をはじめ、数々のSFやスリラーでいつもコワイ目に遭っている)は、ルーマニア語を話せず孤立する。街並みの暗さも相まって、カリンティ・フェレンツの「エペぺ」を彷彿とさせ、おりしもブカレストは女の首を切る連続殺人のニュースでもちきりという物騒ぶりで、そのニュースも何を言っているのかモンローにはわからない。ヒロインに危険が及ぶ映画であることを観客は開始10分で悟ることになる。

夫婦の住むアパートには「裏窓」のような大きな窓があり、通りを挟んだ向かいの建物を一望できる。その向かいの住人と目が合ったモンローは、映画館でもスーパーでも同じ男を見かけ、ストーキングされているという疑念を募らせて神経衰弱に陥っていく。このへんはロマン・ポランスキー風か。仕事が忙しい夫は取り合ってくれず、終盤には逆に男から警察に訴えられる事態になり、パーティで笑いものにされ、夫からは別れを切り出される。一人でアパートに戻ったモンローがトランクに服を詰めていると、部屋主が失踪しているはずの隣室からレコードの音が…

というところまでで、上映時間のほぼ9割を紹介したことになる。すべてはモンローの妄想なのか、そうでないのかということが注意深く曖昧にされたまま、唐突にクライマックスに至るのだが、観ている方は、まあこのまま済む訳ないだろうと思っているので、あまり驚かない。

向かいのアパートの男はカール・グルスマンというドイツ系ユダヤ人とアイルランド人の混血で、マイカ・モンローとは翌年の「神は銃弾」という面白そうな映画でも共演しているので、続けて見たいところだ。

視線のあらすじ

夫と共にブカレストに引っ越してきた若いアメリカ人の女性。彼女は、向かいのアパートから彼女を監視する見知らぬ男が、地元の連続殺人犯ではないかと疑い始める。

視線を観るには?

視線 見どころ

マイカ・モンローの卓越した演技と、クロエ・オクノ監督の巧みな演出が見どころ。心理スリラーファン、社会的テーマに興味がある方におすすめ。ゆっくりとした展開ながらも、終始緊張感を保ち続ける。女性の声が無視される社会や、文化的な孤立感などの深いテーマも含んでいる。

  • 見どころ1:ヒチコック風の演出とサスペンス
    ヒチコック『裏窓』や1970年代のジャッロ映画に影響を受けたスタイル。主人公ジュリアの視点から描かれる映像や音響が、彼女の不安や孤独を表現。舞台はルーマニアのブカレストで、ヒロインは言語や文化の違いから孤立する。夫フランシスはルーマニア語を解すがジュリアは理解できず、ディスコミュニケーションに閉じ込められる。
  • 見どころ2:俳優の演技
    ジュリアを演じるマイカ・モンローは、セリフこそ少ないが(ルーマニア語がしゃべれないので)、表情や仕草で、不安や恐怖などの複雑な感情を表現している。ジュリアを監視する男ダニエルを演じるバーン・ゴーマンは、その冷淡な表情と静かな演技で不安をあおる。
  • 見どころ3:ストーリーとテーマ
    夫や警察はジュリアの恐怖や不安を「過剰反応」として片付けらる。現実社会で女性の声が軽視される問題を反映している。映画は、ジュリアが自分の感じている恐怖が現実なのか、自分の思い込みなのかを疑わせる演出である。

視線のキャスト

視線のスタッフ

監督 – クロエ・オクノ
脚本 – クロエ・オクノ、ザック・フォード
撮影 – ベンジャミン・カーク・ニールセン
音楽 – ネイサン・ハルパーン
上映時間 – 96分
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