谷崎潤一郎の小説(1956年発表)を原作として、1959年(昭和34年)に市川崑が監督し、大映東京撮影所が製作、大映が配給して6月23日に公開した。当時の映画倫理管理委員会(新映倫、現在の映画倫理委員会)は同作を成人映画に指定、18歳未満の鑑賞を制限した。公開時の惹句は、「愛欲描写の凄まじさに、映画化不可能を叫ばしめた谷崎文学の完全映画化!」。1964年5月16日に成人映画として再上映されている。第33回キネマ旬報ベスト・テン(第9位)。第10回ブルーリボン賞監督賞受賞(市川崑)。第13回カンヌ国際映画祭審査員賞。第17回ゴールデングローブ賞 外国語映画賞受賞。
鍵の原作
読まれることを前提にして書かれた日記をお互い盗み読みする夫婦の愛欲の物語。この日記形式の物語世界を読む者もまた窃視の主体となるという仕掛けの構図を持つ作品である[1]。谷崎の代表作の一つで、翻訳も世界各国で行われている。『中央公論』1956年(昭和31年)1月号に掲載された後、5月号から12月号まで連載(全9回)。単行本の装丁は棟方志功。
鍵の原作を読んだ人の感想
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「真実」は、もしかすると読み手が居なくなったその時にこそ、暴露されるものなのかもしれない。
現代文学 ”ド” 初心者がひらいた『鍵』|読書感想文(猫暮てねこの創作暮らし) -
現代で読んでも何の違和感もなかったし、人というのは本当に複雑怪奇で、自分本位で、欲にまみれているのだなあとしみじみ、そして惚れ惚れした一冊でした。
『鍵』(谷崎潤一郎)(さゆの年子育児と猫3匹と気まぐれ読書日記。) -
谷崎潤一郎は、愛欲に溺れて排他的となり闇落ちする人間の心理をドラマチックに描くのが非常に上手ですね。「エンターテイメント」として非常に完成度が高い印象です。
読書感想 谷崎潤一郎 鍵(渡邉有)
映画 鍵(1959年)
あらすじ
京都T大の内科に通う古美術鑑定家の剣持は、インターンの木村を娘・敏子の婿にと考えていた。妻の郁子は夫の通院を知りつつ黙っており、軽い跛行のある夫を密かに嫌っていた。
ある夜、郁子が酔って風呂場で眠り込み、剣持は木村に手伝わせて裸の妻を寝室へ運ばせる。その様子を敏子が目撃する。実は木村はすでに敏子と関係を持っていた。その後、郁子と木村は関係を持つようになり、敏子は家を出る。
剣持は木村と敏子の結婚を突然提案。敏子は、母が父を興奮させて殺すために木村を利用していたのではと疑う。しかし郁子は木村との関係を否定。その後、剣持は死亡。葬儀後、木村はこの家族から距離を置きたいと考え始める。敏子は郁子の紅茶に農薬を入れるが、家政婦のはなが誤って三人分のサラダに農薬を振りかけ、全員が死亡する。警察は夫人の後追い自殺と解釈した。
原作を換骨奪胎した異様な映画(映画 鍵感想)
市川崑は谷崎原作の「日記」というモチーフを大胆に省略し、結末も変えて、濃密な人間関係に絞って生々しく描き出した。「鍵」も書庫のそれではなく、京マチ子が仲代達矢に渡す「裏口の鍵」のことだから、意味がまるで違う。
跛行する姿が特撮の異星生物みたいで異様な中村鴈治郎(二代目)のエロ爺も、演技か地かわからないくらいで凄いのだが、やはり京の極端な鬼眉と叶順子のゲジ眉が文字通り白眉で、市川の企みが冴えているところだ。京はともかく、叶は陰気な棒読みで怖さを盛り上げている。
仲代達矢はいつも通りちょっとやり過ぎだが、黄金時期大映映画の集大成といえるだろう。
キャスト
京マチ子 – 郁子
叶順子 – 敏子
仲代達矢 – 木村
中村鴈治郎 – 剣持
北林谷栄 – はな
菅井一郎 – 石塚
倉田マユミ – 小池
潮万太郎 – 児玉
星ひかる – 刑事B
浜村純 – 相馬
山茶花究 – 古美術商
伊東光一 – 句会の男
花布辰男 – 句会の男
大山健二 – 句会の男
河原侃二 – 句会の男
高村栄一 – 句会の男
南部彰三 – 句会の男
伊達三郎 – 刑事A
中條静夫 – 刑事C
南方伸夫
佐々木正時
隅田一男
小杉光史
杉山明
スタッフ
製作 : 永田雅一
企画 : 藤井浩明
監督 : 市川崑
原作 : 谷崎潤一郎
脚本 : 長谷部慶治、和田夏十、市川崑
撮影 : 宮川一夫
照明 : 伊藤幸夫
美術 : 下河原友雄
録音 : 西井憲一
編集 : 中静達治
音楽 : 芥川也寸志
装置 : 原島徳次郎
衣裳構成 : 上野芳生
メイク : 野村吉毅
色彩技術 : 田中省三
現像 : 東京現像所
助監督 : 中村倍也
製作主任 : 熊田朝雄
映画 鍵(1959年)を観た人の感想
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キャストでは、何と言っても京マチ子さんに尽きる。
細く斜めにまっすぐ伸びた眉が最高。
『鍵』(市川崑監督)(新・法水堂) -
昔の日本映画はおもしろい。
こういうのだったら いくらでも観たい。
映画の感想-『鍵』-171002。(BRILLIANT CORNERS-2) -
アップ、カットバック、フルショットなど、編集テクニックを駆使して生み出す映像のリズムが抜群である上に、俳優たちの迫真の演技と、小気味よい展開の脚本を堪能できる傑作で、さすが、市川崑、見事な映画を撮ったものだとうならせる一本でした。
映画感想「鍵」(市川崑監督版)(くらのすけの映画日記)