土屋太鳳はのんのん様として昇華し、誰が好きなのかという問題はすっかり矮小化されてしまう。土屋は先生は先生であり続けよと命じ、長谷川博己も夕輝壽太もひれ伏すと同時に教師であり続けるほかはなく、次週以降も壊れ続けていくのは必至である。
表面的にはたいしたことが起こっていないのだが、きたるクライマックスに向けて爆弾は何重にも埋め込まれている状態だ。
第6話|ユルい子の伝説
小野花梨ののたまうセリフが凄くて、文字通り頭がクラクラする。
そもそもこのドラマは、西井幸人が、隣のクラスの廣田亮平の小学4年生の妹とやっちゃった、という話から始まっていたから、こういった路線は既定なのだが、それでも、付き合っていた野球部の先輩・千葉一磨については、泣きながら、「会ってもエッチしかしたがらないし、しかもすごく乱暴なんだもん、濡れる前に入れてくるし!」。
新しい彼氏?の藤原薫については、「あいつは初めてで下手くそだったけど、でも私のお願い通りに丁寧にしてくれたの」と教師である長谷川博己にぶつけるセリフには、やはり目眩をおぼえる。
小学4年生を性交事件を起こした西井幸人は1年生のときの小野の彼氏?で、野球部の千葉一磨は、「こいつの処女を奪ったお前が一番許せねえんだよ!」
…この中学は三鷹市立緋桜山中学校なのだが、中央線は今やここまでDQNな環境なのだろうか、と、しょせんドラマであるかぎり荒唐無稽さを免れないと思いつつも、見ていて、これはいったい大丈夫なのだろうかと思ってしまう。
西井幸人は、小学4年生との事件について、中学に入った頃から年上の子にセックスを教えられ、それから手当たり次第に相手を変えてきたが、誰とも長くは続かなかった、と語っていた。おそらくその遍歴の中で小野花梨の処女を奪ったとおぼしい。小野はバレーで脚をくじいてさすってもらったことでぐっさん先生を追いつめた元凶となる事件を起こしていたのだが、あのときも「優しくされてイヤじゃなかった」と叫んでいた。優しくしてもらうとなんでもしてあげる自分に酔うという、伝説的に存在すると伝えられる、いわゆるユルい子の描き方がなにげにリアルである。
小野花梨は「犬飼さんちの犬」の長女でもあり、子役からのキャリアも長いのだが、ここではちょっと頭の足りない、可愛くもない子としてうまく演じている。
こういった環境に「コンドームを付けない主義」という鈴木先生を配置するスリルが、このドラマの面白さである。
「人間の営みにはつけてすることが許されている、
この選択を選ぶときお前はきっとまだ覚悟のできない自分を自覚するだろう。
その自覚と痛みを忘れないでくれ」
という長谷川博己のセリフには凄味がある。
第8話|富田靖子の怪演
小野花梨のなまなましい話が続く前回は、見はしたものの、レビューを書かずじまいで終わってしまった。
土屋太鳳の注目度も平常に戻り、話は一段落して、この第8話・9話を経て、その次がクライマックスになると思う。
視聴率的にはあまり良好とは言えない様子である。面白いし、ある意味、画期的なドラマなのになあ。
どこへ向かっているのかわからないところが魅力なのだが、視聴率がよくないのはそれが原因であろう。
それにしても、富田靖子の足子先生は怪演で怖すぎるぐらいだ。
第9話|かつてないクライマックスの問題作
もはや、いっときも目を離せない展開になっている。伏線を探すとか、そーゆーコトぬきに、出演者の演技が見逃せないのだ。
(伏線と言えばひとつだけ、下駄箱の後ろで頃合いを待っていた富田靖子が校内に足を踏み入れたとき、黒い鳥の羽のようなものがひらひらと待っていた。富田靖子はすでに暗黒面に堕ちており、人間の顔をかぶった異形の者と化しているのだろう)
それにしても、生徒たちの演技がすばらしい。
次週(最終回?)の裁判本編も楽しみなのだが、裁判が始まる前の生徒たちの言い争いというか、ぶつかり合いは、これまでのテレビドラマではちょっと見ることのできなかったようなものだ。編集は入っているものの、ほとんど長回しで撮っているかのような臨場感である。
これまでのエピソードがすべてこのシークエンスのためにあったかのような、キャラクターが重ねあわされたセリフと表情に、ひとつひとつ解説していきたくなるほど面白かった。
この間、この大事な場面に入る前のリハーサルで、「自分たちはどんな気持ちで、この場面に向かっていくか」を話し合いました。
今までたくさんの台詞について考えてきたし、演じてきたけど、
今回の話し合いは演技としてではなくて、自分たちの考えはどうなのか?
という話し合いだったので、みんな自分の言葉で話をしました。
最初はなかなか意見が出なかったけど、出水君の意見をきっかけに、
いろいろな人が自分の考えをどんどん出していって、
私はそれをホワイトボードにまとめていきました。
かなり戦略的な作り方だと思う。
映画ならともかく、そんな手間をかけて撮っているドラマはないんじゃないかなあ。
鈴木先生を観るには?
鈴木先生 キャスト
■緋桜山中学教師
山崎潔史 – 山口智充:2-B担任 体育
桃井里香 – 田畑智子:2-B副担任 数学
江本源三 – 赤堀雅秋:2-C担任 社会
岡田征志 – 山中聡:2-C副担任 体育
川野達郎 – でんでん:2年指導主任 英語
続木護 – 夕輝壽太:体育
足子瞳 – 富田靖子:3-B担任 家庭
五井正子 – 歌川椎子:3年指導主任 国語
槙谷ゆり – 澤山薫:1-B担任 美術
石垣健児 – 戸田昌宏:英語
松沢先生 – 倉田麻由子:体育
幸本先生 – 荒木義彰
佐藤先生 – 山口知紗
一之谷先生 – 西尾くみこ : 音楽
伊福部直孝 – 斉木しげる:校長
給食のおばちゃん – 松山尚子、よしのよしこ
■周辺人物
秦麻美 – 臼田あさ美(OL・鈴木先生の彼女)
宮下ともみ(鈴木先生の10年前の元彼女)
林田麻里(元彼女の友人)
あらいすみれ(鈴木先生の母親)
■緋桜山中学生徒
2-A生徒 出席番号順
02 阿部悠貴 – 内田純→柿澤司
03 出水正 – 北村匠海
04 入江沙季 – 松本花奈
05 太田ルミ – 鈴木米香
06 小川蘇美 – 土屋太鳳
07 桂チカ – 中西夢乃
08 樺山あきら – 三浦透子
09 河辺彩香 – 小野花梨
10 岸茜 – 澤田優花
11 小菅小夜子 – 森野あすか
12 駒井駿司 – 三宅史
13 紺野徹平 – 齋藤隆成
14 竹地公彦 – 藤原薫
15 丹沢栞 – 馬渕有咲
16 土田理沙 – 山口愛
17 椿美久 – 安田彩奈
18 藤山高志 – 桑代貴明
19 徳永雫 – 吉永アユリ
20 戸塚尚之 – 伊藤凌
21 中村加奈 – 未来穂香
22 梨本くるみ – 久本愛実
23 新見葵 – 福地亜紗美
24 野呂光輝 – 小山燿
25 長谷部哲 – 中嶋和也
26 浜口航太 – 西本銀二郎
27 福田千夏 – 鈴木梨花
28 堀の内七海 – 松岡茉優
29 松野ユキ – 田中明
30 岬勇気 – 西井幸人
31 本木聡馬 – 中澤耀介
32 森大雅 – 米本来輝
33 山口克己 – 清水尚弥
34 横関康輔 – 岡駿斗
35 吉井丈志 – 下山葵
■他クラス生徒
遠野涼介 – 広田亮平
神田マリ – 工藤綾乃
平良美祝 – 刈谷友衣子
山際大成 – 千葉一磨
■旧2-A生徒
丸山康子 – 滝澤史
増田寛香 – 山谷花純
大野豊 – 宮本弘佑
佐藤光輝 – 渡部駿太
金井まこと – 森大悟
■緋桜山中学生徒保護者