ドラマ2020年代のドラマ2021年のドラマ

ナイルパーチの女子会

4.0
山田真歩(ナイルパーチの女子会) ドラマ
山田真歩(ナイルパーチの女子会)
ナイルパーチの女子会は、2021年1月30日からBSテレビ東京「土曜ドラマ9」枠で放送。主演は水川あさみ。

ナイルパーチの女子会の感想

夥しい数のオムニバスや短編ドラマで、水川あさみはほぼ同じキャラクターを演じているように見えるのだが、ここでは山田真歩によってそれが裏返される趣向。
しかし原作は映画「ルームメイト」のような展開ではなさそうだ。

水川あさみ(ナイルパーチの女子会)


そのまま最終回まで観て、面白かった。
山田真歩がうまいし、小池里奈と森屋カンナというもう2人の女優が登場し、予想を超える演技をする。それを許すドラマは希少である。

ナイルパーチの女子会 見どころ

SNSや“女の友情”という現代的テーマを鋭く抉る、サイコロジカルな人間関係ミステリー。

  1. 水川あさみ演じる“自立した孤独”の造形
    主人公・志村栄利子は、食品会社のバリキャリ広報部長。収入も見た目も申し分ないが、実は友達も恋人もおらず、“完璧な孤独”の中で生きている女性。このキャラクター造形は非常に今日的で、自立と孤立のはざまで生きる現代女性像を象徴している。
    水川あさみは、栄利子の抑制された感情と内面の焦燥を絶妙なテンションで表現しており、「何も起きていないように見えて、心は常にざわついている」という難役を演じた。
  2. “友情”の不均衡と依存を暴く構図
    栄利子がある日ネットで見つけたのは、「主婦のつぶやきブログ」を書く内向的な主婦・翔子(山田真歩)。「この人となら本音で語れるかもしれない」と思い、接近していくが……。
    この二人の関係は最初こそ“女子会”的友情に見えますが、次第に**依存・支配・裏切り・憧れの錯覚**といった感情が入り乱れていく。友情が平等ではないとき、女同士のつながりはどう歪むのか? この問いを中心に据えた構成は現代のSNSや“つながり強迫”の問題ともシンクロする。
  3. 原作より“冷たく、リアル”なドラマ演出
    原作の柚木麻子作品は、毒を含みつつもどこか温かい余白がありますが、ドラマ版はより冷徹に視聴者を突き放す。演出陣が選ぶカット割りや美術設計、色調(寒色系多め)は、「空虚で無機質な現代社会に生きる女性たち」の閉塞感を視覚的に強調している。
    ドラマでは“語られない感情”が多いため、視聴者は表情や間を読み取らされる構成になっており、“分かりやすい人間関係ドラマ”とは一線を画している。
  4. SNSとリアルの乖離を浮き彫りに
    翔子のブログは穏やかで明るい家庭生活を綴る“癒し系”だが、実際はDV夫に支配され、息も詰まるような生活を送っている。そのギャップは、「SNSにおける理想の私」と「リアルの自分」の断絶を象徴し、現代における“演じること”と“現実との齟齬”を描いている。
  5. 山田真歩の“消え入りそうな存在感”
    山田真歩演じる翔子は、いかにも“どこにでもいる主婦”のようで、芯の部分に何か得体の知れない“こじれ”を抱えている人物。彼女の弱さ、笑顔、そして時おり見せる冷たい視線——この“怖さを孕んだ曖昧な存在感”が、ドラマ全体に緊張感を与えている。

『ナイルパーチの女子会』は、女の友情ドラマを装いながら、「なぜ人は他人とつながろうとするのか」「その関係に何を期待し、裏切られるのか」という根源的な問いを浮かび上がらせたドラマである。
友情という言葉の裏側にある【支配】【虚飾】【憧れ】【孤独】といった感情を炙り出し、“現代女性版の心理スリラー”としても楽しめる。

ナイルパーチの女子会 あらすじ

30歳の志村栄利子は、実家から大手の総合商社に通勤しており、1000万円を超える年収を稼いでいる一方で、「おひょうのダメ奥さん日記」というタイトルのブログを愛読している。栄利子は、そのブログを書いている専業主婦の丸尾翔子と、ひょんなことから出会って急速に親しくなり、新たな友人ができたと感じる。翔子のほうも、友人がもてるようになったことを誇りに感じていた。しかし、翔子がブログの更新を何日間か滞らせたことがきっかけで、栄利子は翔子との適切な距離感を失ってしまい、ふたりの関係は思いもよらない方向へと進展していく。

ナイルパーチの女子会を観るには?

ナイルパーチの女子会 キャスト

志村栄利子 – 水川あさみ
丸尾翔子 – 山田真歩
杉下康行 – 淵上泰史
高杉真織 – 小池里奈
丸尾賢介 – 篠原篤
橋本弘毅 – 田村心
小笠原圭子 – 森矢カンナ
田崎周平 – 田村泰二郎
田崎洋平 – 諫早幸作
岸間享 – 飯田基祐
志村不二子 – 宮地雅子
花井里美 – 信川清順
主婦インフルエンサーNORI – 安藤聖

ナイルパーチの女子会 スタッフ

原作 – 柚木麻子 『ナイルパーチの女子会』(文春文庫刊)
脚本 – 横田理恵綿種アヤ
監督 – 瀧悠輔
音楽 – フジモトヨシタカ
主題歌 – ロザリーナ「涙の銀河」
プロデューサー – 戸石紀子(テレビ東京)、田中美幸(C&Iエンタテインメント)
制作 – BSテレ東、C&Iエンタテインメント
制作協力 – ドラゴンフライエンタテインメント
製作著作 – 『ナイルパーチの女子会』製作委員会2021

ナイルパーチの女子会の原作(柚木麻子)


「心がえぐられすぎてつらい」
第二十八回山本周五郎賞&第三回高校生直木賞を受賞!
友情とは何かを描いた問題作。

商社で働く志村栄利子は愛読していた主婦ブロガーの丸尾翔子と出会い意気投合。
だが他人との距離感をうまくつかめない彼女をやがて翔子は拒否。
執着する栄利子は悩みを相談した同僚の男と寝たことが婚約者の派遣女子・高杉真織にばれ、とんでもない約束をさせられてしまう。
一方、翔子も実家に問題を抱え――。

「本作『ナイルパーチの女子会』は、柚木麻子さんがデビュー以来追い求めてきた主題の一つの到達点であり、その後の柚木さんが展開する文学への結節点でもある。」(重松清「解説」より)

タイトルとURLをコピーしました