金曜エンタテイメント 悪いこと(1998年8月21日放送)
感想
BSの再放送で、12年も前のオムニバスドラマである。
企画したのは落合正幸という人で、これは「世にも奇妙な物語」の演出家。
案内人はタモリならぬ西村雅彦で、それと別に「テラー」と称する外人が出てくるが、こういった趣向は全然不要だと思う。
「世にも奇妙な…」はどちらかというと怪談話っぽいし、中学生向きになってしまったので、再度、大人向きの「奇妙な味」をやってみたかったのではないか。
「止まる」は、見慣れた片平なぎさながら、だんだん怖くなる趣向である。
片平なぎさ(金曜エンタテイメント 悪いこと「止まる」)
夫の睡眠中無呼吸症候群を心配する妻を描いて、事件は何も起こらないのだが、最後に妻がふと夫の顔に濡れたガーゼをかぶせてみる、というのが怖い。
殺す気などはなく、ただかぶせては、夫の苦しむ息を聞いて外してみる、というのを繰り返すのである。
次の「閉ざす」は懐かしい三田村邦彦。
三田村邦彦(金曜エンタテイメント 悪いこと「閉ざす」)
空いているトイレを探して女子トイレから出られなくなる話。
ま、これは新味のないストーリーである。
「言いません」は石田えりが、息子の同級生に不倫現場を見られてしまい、
誰にも言わないと言っているのに追いつめてしまう話。
石田えり(金曜エンタテイメント 悪いこと「言いません」)
最後の「汚す」は、これぞ奇妙な味という感じで、やっぱり懐かしい河合美智子である。
河合美智子(金曜エンタテイメント 悪いこと「汚す」)
団地で、隣の男の洗濯竿がこちらにはみ出してシーツを汚してしまう。
注意しても繰り返されるので、頭に来た河合美智子は手を伸ばして男の洗濯物に泥をなすりつけてしまうが、それを男に目撃されてしまう。
男は次の日の河合美智子の頬に泥を塗りつけ、顔を汚されることの恍惚が、この二人のゲームとなってしまう話である。
こう書くとコメディみたいだが、演出はホラーで進む。
杉本哲太が途中からハアハア言いすぎてしまうが、これはなかなか面白かった。
キャスト(レギュラー)
盗む女(1992年4月23日放送)
出演: 大山薫、植田あつき
銃声(1992年5月7日放送)
出演: 高杉亘、佐戸井けん太
放課後(1992年5月14日放送)
出演:細川直美、岡田秀樹
距離(1992年5月21日放送)
出演: 池田昌子、山口仁、森山周一郎
確率(1992年5月28日放送)
出演:太田光、戸川京子、林家こぶ平
歯医者(1992年6月11日放送)
出演: 中村れい子、中丸新将
秘訣(1992年6月18日放送)
出演:螢雪次朗、中島久之、未來貴子
黙殺(1992年7月2日放送)
原案:中崎タツヤ「じみへん」
出演:田中裕二、平泉成、浅野和之、田口浩正、滝沢涼子
声(1992年7月9日放送)
出演: 小須田康人、藤井かほり
道徳(1992年7月16日放送)
出演:入江雅人、西牟田恵、京晋佑、仁藤優子、大高洋夫
国境(1992年8月13日放送)
出演:大島信一、泉本教子、渡辺哲
啓示(1992年8月27日放送)
出演:松田ケイジ、余貴美子、森下桂、村松克己、藤田哲也
安息(1992年9月3日放送)
出演:ベンガル、大石継太、伊藤真美
路上(1992年9月10日放送)
出演:アルメイダ・ジョアリ、櫻井淳子、寺田千穂、山中由香
真相(1992年9月24日放送)
各話スタッフ・キャスト
止まる
閉ざす
言いません
汚す
音楽:蓜島邦明
技術協力:バスク
美術協力:フジアール
製作:フジテレビ、共同テレビ
悪いこと2(2010年12月1日全国初放送)
悪いこと2
感想
BSの放送だが、制作以来オクラになっていたといういわくがついており、少なくとも全国放送は今回がなんと初めてということいなるらしい。
前作「悪いこと」が98年だから、これもそれに近いのだろう。
どうして放送されなかったのかはわからないが、非常にビミョーな内容で、不愉快なオムニバスであることは間違いない。
そもそも、「悪いこと」というテーマが「??」であるわけなのだが…
貴重なものを見られたのはよかったが、前作のほうが出来はよかった。
※
「灯す」は、浮気癖のある夫をもつ萬田久子の話。
萬田久子(悪いこと2「灯す」)
夫婦は新浦安の駅前マンションに住んでいる。小学生の息子もいる。
夫は浮気している間は明るく快活で家族思いになるが、女と切れると不機嫌になる。
浮気中は、女に香水をプレゼントし、同じ香水を妻にも買ってくる。
萬田久子は、夫に心を寄せるバイオリン少女(小橋めぐみ)という虚構を仮構し、偽の手紙を書いて夫の心を操る。
夫の心を思って恍惚となり、障子紙に長い指を突っ込んで、ビリビリ破いたりする。
まだ幼さの残る小橋めぐみが最後にちらりと見せる腿の白さがエロチックである。
かとうれいこ(悪いこと2「言いなさい」)
クラリオンガールだったかとうれいこは、肩むきだしの夏服で、艶めかしい。
前作で「言いません」というのがあって、それと対になっている。
同級生のお金をとっただろう、白状しなさいと責められる少年は崎本大海。
(アッ、調べてみたら「闇金ウシジマくん」にレギュラーで出ている子なんだ~)
否認する少年は、事実をはっきりさせるまでは帰りませんの一点張り。
学校が閉まり、生瀬先生のアパートに場所を移し、それでも頑固なままなので腹を立てた生瀬が殴ろうとするのと揉みあううち、倒れた生瀬が頭を打って死んでしまう。
警察に連行された少年が、事実をはっきりさせるまで帰りませんと繰り返すというオチ。
クレジットによれば斉藤由貴が出ていたらしい。
そういえば女子中学生たちが水をかけあって遊んでいるシーンがあった。
3つ目「盗む」は、人の彼氏や夫を盗むのが何よりも好きな櫻井淳子の話。
櫻井淳子(悪いこと2「盗む」)
この人も写真集出しているが、この癒し系の女子アナみたいな女優は、「ショムニ」(見ていない)で魔性の女を演じてはまり、以来、悪女路線の役を演じるようになったという。いろんな人がいるものだ。
対するお嬢さん女優の菊池麻衣子は、櫻井の癖を利用して男を捨て、玉の輿に乗ろうとする一枚上手な役。
オチは、まあ予想される通りで、新婚旅行の飛行機に櫻井淳子が現れるというもの。
菊池麻衣子(悪いこと2「盗む」)
最後の「面接」は、前作の「汚す」同様、奇妙な味の本道を追求したとおぼしい話。
片平なぎさ(悪いこと2「面接」)
片平なぎさと杉本哲太のほぼ二人芝居である。
専業主婦の片平なぎさが、ふと、スーパーのパート募集に応じようと考える。
おどおどした様子でスーパーの事務室を訪れるのだが、このおどおどぶりが尋常でなく、この時点でかなり異様な空気になっている。
履歴書を忘れ、そもそも履歴書を書いたことがない片平は(大学を卒業してすぐ結婚したので、働いた経験がゼロ)、これでいいからと言われて、チラシの裏に経歴などを書き始める。
杉本はお辞儀の仕方、いらっしゃいませの発声、レジ打ちなどを指南し、うまくできないと手に持ったボールペンで片平の甲を叩く。
片平は冷や汗を流しながら、だんだん仕事を覚えていく、というそれだけの話である。
「案内人」である西村雅彦によれば、支配と被支配の関係を描いているという不条理劇のような意図があるらしいのであった。
キャスト・スタッフ
灯す
言いなさい
盗む
面接
協力:ベイシス、フジアール、バスク、古賀プロ
プロデュース:船津浩一、森谷雄
制作:フジテレビ、共同テレビ