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ガラスの城の感想
波瑠だから、と少し期待したのが浅はかで、前夜の「顔」(ゴクミ主演)と同じ「テレビ朝日開局65周年記念 松本清張 二夜連続ドラマスペシャル」なので、似たりよったりの出来だった。CMもろとも本編を飛ばし見してしまったのか、編集がおかしいようにしか見えなかった。とはいえ、中盤で語り手を木村佳乃から波瑠に変えるという原作の2部構成は活かされていたので、なんとか最後まで見た。
殺された商社のやり手部長(丸山智己)は、事務職の部下(波留)から300万も借り、さらに退職金もすっからかんんになっていることが中盤で明らかになるのだが、何に遣ったのかという説明がない。
前半は木村佳乃の語りによって、波瑠や仁村紗和、川島海荷をはじめとする4人の一般職と、木村と蓮佛美沙子という2人の総合職が、「会社で働く女の生き方」がきわめて正確に値踏みされる。
意地悪な視線は、この時点では、松本清張の筆致をよく表している。
6人の女は高給取り(と何度も念を押される)のわりに誰ひとり仕事らしい仕事をしていなくて笑える。この通りなら、カイシャというものは昭和からさほど変化していないことになるのだが、テレビの作り手の不見識とも言える。
しかしまあ、そんな意地悪な木村にも見抜けなかった人間関係があり、さらに木村自身も隠しごとをしている、信頼できない語り手の叙述トリックもあって、後半の語り手である波瑠によって語り手自身が裸にされるところが、本作の醍醐味と言える。ここはかろうじて原作の味を活かしていたか。
とはいえ、会社名や登場人物を実名で記した大胆な日記を、一部上場企業のバリキャリが、PCですらなく、キャバ嬢のようにスマホアプリで記録しているのは違和感がある。しかもネットサービスらしいので、公開を意識したものである。
1962年に雑誌「若い女性」に連載された原作では、前半(第1部)が「手記」、後半(第2部)が「ノート」とされており、職場の花でしかない女子社員がひそかにそうしたものを書き綴っているという設定に、小説的なロマンというか凄味があったと思う。それをキャバ嬢的なアプリ日記として設定したところに、このドラマの無理筋があり、拭いきれない時代錯誤感はそこに端を発している。
ガラスの城 見どころ
- 松本清張作品の現代的再構築
松本清張の傑作社会派ミステリーの舞台を現代社会に変えて再構築。「人間の欲望」「組織の闇」のテーマはそのまま、現代の企業が抱える問題や人間関係に焦点が当てられ、より身近なものに。脚本はNHK連続テレビ小説「あさが来た」などを手掛けた大森美香。 - 波瑠と木村佳乃のW主演と対照的な役どころ
主演の波瑠は、地味で愛想がないものの仕事は正確な一般職の社員・的場郁子。木村佳乃は出世頭のバリキャリ課長・三上田鶴子を演じる。対照的な二人の女性が、大手商社で起きた殺人事件の真相を独自に探っていく。 - 「容疑者は社員全員」という設定のサスペンス
都心高層ビルの大手商社「實友商事」を舞台に、社員旅行中に次世代エネルギー部の部長が何者かに殺されるという事件が発生。「ガラスの城」のような華やかな企業の内側に出世欲、名誉欲、支配欲、愛欲など、複雑に絡み合った人間の欲望が渦巻く。誰が犯人なのか、全員が容疑者として怪しく見えてくるサスペンスフルな展開。 - 企業社会の闇と人間の本性
大手商社というエリート集団の裏側に潜む権力争い、社内政治、不倫、隠蔽工作など企業社会の闇がリアルに描かれる。登場人物たちの隠された秘密や本性が次々と露呈していく。 - 豪華俳優陣の競演
波瑠と木村佳乃だけでなく、満島真之介、蓮佛美沙子、塚本高史、武田真治、高嶋政伸など実力派の豪華俳優陣が多数出演。
ガラスの城のあらすじ
大手商社「實友商事」の社員旅行先・修善寺で部長が殺害される事件が発生。社内の闇が露呈する中、地味で暗い一般職の的場郁子(波瑠)が独自捜査を開始。的場には《とんでもない秘密》があり、警察からもマークされる。一方、出世頭のバリキャリ課長・三上田鶴子(木村佳乃)も部長の社内不倫現場を目撃し、SNSで独自推理を展開するが、彼女にも《誰にも言えない秘密》があった。事件の推理が思わぬ震撼の事件を誘発し、社内の誰もが疑わしい状況に。波瑠と木村佳乃が演じるミステリアスな主人公たちの行動から目が離せない、闇深きサスペンスドラマ。
ガラスの城を観るには?
ガラスの城 キャスト
三上田鶴子〈45〉 – 木村佳乃
鈴木信乃〈31〉 – 蓮佛美沙子
橋本啓子〈28〉 – 川島海荷
田口欣吾〈38〉 – 内野謙太
和島好子〈38〉 – 野呂佳代
浅野由理花〈23〉 – 仁村紗和
杉岡久一郎〈45〉 – 丸山智己
富崎弥大〈40〉 – 塚本高史
野村俊一〈45〉 – 武田真治
池田萌絵 – 佐々木史帆
佐々木誠 – 山口貴也
静岡県警
佐原壮馬〈35〉 – 満島真之介
倉田文則〈55〉 – 高嶋政伸
その他
野村実奈 – 吉井怜
杉岡いずみ – 片岡礼子
富崎玲子 – 沢井美優
浅野絵未子 – 川俣しのぶ
林田徳治 – 遠山俊也
小柳泰造 – 本間剛
青山俊一 – 馬庭良介
レポーター – 志田美由紀
ガラスの城 スタッフ
脚本 – 大森美香
音楽 – 木村秀彬
監督 – 樹下直美(アズバーズ)
ゼネラルプロデューサー – 横地郁英(テレビ朝日)、大江達樹(テレビ朝日)
プロデューサー – 神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、目黒正之(東映)、土井健生(東映)
制作 – テレビ朝日、東映
「ガラスの城」は、松本清張らしい社会派ミステリーの骨格はそのままに、現代的な設定と豪華キャストで生まれ変わったドラマです。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
ガラスの城の原作(松本清張)
エリートコースの販売課長が社員旅行の晩に行方不明となり、惨殺死体で発見された。動揺を隠せない社内の空気の中で、死の謎を追跡する女性社員の手記。意外な貌を見せる社員たちが疑惑の線上に次々と浮かぶ。欲望と犯罪の構図はガラスの城のような組織で醸成されたのか。清張ミステリーの傑作を読みやすい新装版に。