インフルエンスの感想
ファーストインプレッション(第1話)
葵わかな(インフルエンス)
しまった、ついWOWOWプレミアムのドラマを録画してしまった(初回無料)。しかし近藤史恵原作のミステリで、これはめちゃくちゃ面白そうではないか。
物語の序盤はごく陳腐で、最初に目を引くのはバレエを踊る 葵わかなだが、ドラマが始まるとさすがに老けて見えてしまう。そして誰だかわからなかった語り手が 橋本環奈だとわかってびっくりするあたりから、急に面白くなる。
中心人物の3人がいずれも22歳オーバーなのには理由があり、WOWOWの見どころ紹介によれば、実年齢編が始まる模様。
最終的には、大塚寧々(橋本環奈だと名乗っているが…?)と 鈴木保奈美の時制まで巻き戻される謎をはらんでおり、……とかなりそそる。
そして第2話以降
吉川愛(インフルエンス)
2021年に民放で1話のみ放映されたのが強烈な印象で、VODで見られる日を心待ちにしていたのだが、このたびめでたく解禁。
橋本環奈、 吉川愛、葵わかなという3人が高校生から30代半ばまでを演じる。3人とも同世代だが葵わかなのみ23歳でちょっと大人っぽい。というか大人になってからの方が違和感があり、正直ちょっと浮いていた。そして吉川愛がデキる子なのは知っていたが、私は本作で橋本環奈という人をかなり見直した。
橋本環奈(インフルエンス)
作家である鈴木保奈美を訪ねてきた大塚寧々が、3人の少女と3つの殺人について語る、というのが語りの軸になっており、そこには当然仕掛けがある。ただし残念ながら結末は必ずしも満足のいく感じではなかった。
一つ目の殺人は、葵わかなを守るために橋本環奈が人を刺し、さらに吉川愛がとどめをさすというものだ。この「誰かを守るために誰かが誰かを殺す」という代理殺人がループする、というのがこの物語のモチーフ。
終盤の橋本環奈の台詞に、「あのときも今も真帆ちゃん(葵わかな)は悪くない」というものがある。ここは泣かせどころで、いつのまにか一周回って、高校時代の焼き直しになっているのである。女性同士の複雑な関係性(インフルエンス)を丁寧に積み重ね、そのような物語を組み上げた原作はみごとである。
インフルエンス 見どころ
- 3人の女性の友情と、秘密を共有する共犯関係
主人公は高校時代に憧れの存在だった戸塚友梨(橋本環奈)、友梨が心を許す唯一の親友・坂崎真帆(葵わかな)、不良グループに居場所を見つける孤独な少女・日野里子(吉川愛)。ある夜、友梨が親友を守るために起こした殺人事件に、里子がある理由から加担したことで、3人の友情は「秘密を共有する共犯関係」へと変質する。それぞれの過去の出来事や、抱える闇が絡み合い、友情の危うさと尊さが同時に描かれる。この3人の関係性の変化と、互いを思いやるがゆえの悲劇が、物語の核である。 - 複雑な時間軸と謎が謎を呼ぶ構成
物語は、現在の友梨が老婦人(白石加代子)に「昔の友達」について語り聞かせるところから始まる。過去の高校時代、その後の現在に至るまでの出来事が、断片的に、そして複雑な時間軸で描かれていく。
「何が真実なのか?」「誰が誰を殺したのか?」「本当に罪を犯したのは誰なのか?」といった謎が提示され、視聴者はその真相を追いかける。最終話まで予測不能な展開が続く。 - 若手実力派女優たちの熱演
橋本環奈、葵わかな、吉川愛という若手トップクラスの女優たちが複雑な感情を見事に演じ分けている。清純なイメージから一転、影のある役柄を演じる橋本環奈、内に秘めた思いを繊細に表現する葵わかな、そして力強くも危うい吉川愛の3人の女優の化学反応が見どころ。 - 「影響(インフルエンス)」の連鎖
タイトル「インフルエンス(影響)」が物語全体を貫くテーマ。ある人物の行動が別の人物に影響を与え、その結果、予期せぬ事態が引き起こされるという連鎖。良い影響のこともあれば、人生を狂わせる負の連鎖であることも。 - 社会の闇や人間の心理の深掘り
いじめ、家庭内暴力、貧困、そしてそれらから逃れようとする若者たちの苦悩など、現代社会が抱える問題も背景にある。罪悪感、嫉妬、依存、そして究極の友情といった人間の心の奥底に潜む感情が掘り下げられる。
インフルエンス あらすじ
小説家及川トモミ(鈴木保奈美)は、戸塚友梨(大塚寧々)から「35年にわたる友人関係と殺人の告白」を聞く。1984年、友梨(橋本環奈)と坂崎真帆(葵わかな)は団地で仲良くなるが、幼馴染の日野里子(吉川愛)は祖父からの性的虐待に苦しんでいた。里子は不良グループの緒方歩(宮近海斗)と付き合い、暴行事件に巻き込まれる。
ある夜、友梨は公園で襲われそうになった真帆を助け、男を刺す。しかし、翌朝里子が自首し、自分が刺したと告白。公園は里子の家の目の前にあり、友梨と真帆は逃げるが、里子の自首で状況は一変する。友梨、真帆、里子の3人の複雑な関係と、過去の秘密が徐々に明らかになっていく。
インフルエンスを観るには?
インフルエンスのキャスト
坂崎真帆(友梨の親友) – 葵わかな
日野里子(友梨の幼なじみ) – 吉川愛
夏目俊哉(捜査一課の刑事) – 白洲迅
緒方歩(里子の恋人) – 宮近海斗(Travis Japan / ジャニーズJr.)
戸塚友梨(謎の女性) – 大塚寧々
岡尾直子 – 峯村リエ
及川トモミ(小説家) – 鈴木保奈美(高校時代:池田朱那)
依子 – 有田麗未(青年期:宮地尚子)
弁護士 – 真木恵未
書店店員 – しゅはまはるみ
インフルエンスのスタッフ
脚本 – 篠﨑絵里子
監督 – 水田成英、 ヤング・ポール
音楽 – 林ゆうき、菅野みづき、奥野大樹
チーフプロデューサー – 青木泰憲
プロデューサー – 山田雅樹、 中山ケイ子、 大瀬花恵
製作 – WOWOW、FCC
インフルエンスの原作(近藤史恵著)
大阪郊外の巨大団地で育った小学生の友梨。同じ団地に住む里子が、家族内で性虐待を受けていたことを知り、衝撃を受ける。助けられなかったという自責の念を胸に抱えたまま中学生になった友梨は、都会的で美しい親友・真帆を守ろうとして、暴漢の男を刺してしまう。ところが何故か、翌日警察に連れて行かれたのは、あの里子だった。
殺人事件、スクールカースト、子育て、孤独と希望、繋がり。お互いの関係を必死に隠して大人になった3人の女たちが過ごした20年、その入り組んだ秘密の関係の果てに彼女たちを待つものは何だったのか。大人になった三人の人生が交差した時、衝撃の真実が見えてくる。
女たちが幼いころから直面する社会の罪、言葉で説明できないあやうい関係性、深い信頼。ラストに用意された、ミステリファンも唸る「驚き」。
『サクリファイス』で大藪春彦賞を受賞した近藤史恵が描く傑作長編。