Q10の感想
ファーストインプレッション
こいつは驚いた。まったく期待していなかったドラマだったが、なんと大当たりである。
当初、前田敦子のロボット喋りが恥ずかしくて、思わず見るのをやめようかと思ったが、これはすぐに慣れてしまった(演技力がないからロボット役、などという芸能ニュースの悪口も目にしたが…)。
すると、これが予想外に可愛いのである。
「りせっとシマスカ?」と前かがみになって大口を開けるところとか。
しかし、なんといってもびっくりしたのは脚本である。
木皿泉という人(夫婦ペアの筆名)は「野ブタ。をプロデュース」で有名らしいが、作品を見るのははじめて。
これまでの作品を見てきた人なら、これは予想通りの出来ということなのかな。
外連味はぜんぜんないのに良い脚本で、テレビドラマとは思えない丁寧な演出やキャメラもよかった。
「ブラッディ・マンデイ」でおなじみの佐藤健をこんなに瑞々しく見せてしまうとは、いやー、まったく驚き。
思わず、涙ぐんでしまった。。。
第2話|ぱふっww
“人ならぬものへの恋”をテーマに、と言ってしまうと身も蓋もないのだが、いくつかのエピソードが並行して描かれる。
Q10をコミックヒロインと同一視してつきまとう細田よしひこ。
赤髪を黒髪に戻して?バンドのヴォーカルと腕を組む蓮佛美沙子。
隠れアイドルオタクの河合恵美子に同類と思われた影山聡。
髪型を変えると“オハコ”の“ハジメ”そっくりになってしまう主人公平太。
若き日の初デートの思い出が染み込んだ箸袋を捨てられない父。
電柱好きを気味悪がられて交際を断られる田中裕二は、鉄塔好きの平太に、何を好きになってもいいんだと言う。
始まりは、Q10が蓮佛美沙子の落としたピックを拾ったことである。
人魚姫を読んだばかりのQ10は白いピックをウロコだと思い込む。
恋をするために陸にあがった人魚姫。
ヴォーカルの取り巻きにボコられた蓮佛美沙子を守って白いハンカチを振り、蓮佛の前にしゃがんで、「ココハ生キテイケル場所デスカ?」と訊くQ10。
肯定の返事がいつのまにか「ぱふっ」になってるww
第3話|今度は「風」か…
なんだかすっかりハマってしまったようで、タイトル前のシークエンスを見ただけでうるうるきてしまうww
前田敦子は急に出番が少なくなって、キャラもビミョーに変な感じ?
だんだんコワレてきてるのだろうかと勘ぐってしまう。
失われた過去について、というのが今回のテーマで、
なんと「風」を、硬いが素朴でいい感じで高畑充希が歌う。
シューベルツですよ、北山 修ですよ!
人は誰もただ一人 旅に出て
人は誰も故郷を 振り返る
ちょっぴり寂しくて 振り返っても
そこにはただ風が 吹いているだけ
人は誰も人生に つまずいて
人は誰も夢破れ 振り返る
初回で泣かされたのは「戦争を知らない子供たち」だったが、こういうところがうまいねえ。
おセンチ感覚を逆手にとられたような感じ。
佐藤健のお父さん光石研は、どうして昼間から酔っ払ってふらふらしているのかしらん??
第4話|中原中也とはまた気恥ずかしい
あらためて見ると前田敦子は瞬きをしていない。その顔が長くキャメラに長くとらえられないのはそのためだろう。
しかしここでまた(「流れ星」に続いて)落語とは…最近流行ってるの??
落語言葉は、あまり感心しなかったなあ。
今回は70年代フォークが出ない代わりに、なんと中原中也ですよ。
幾時代かがありまして
茶色い戦争ありました
幾時代かがありまして
冬は疾風吹きました
で始まり、田中裕二と薬師丸ひろ子が
ではあゝ、濃いシロップでも飲まう
冷たくして、太いストローで飲まう
とろとろと、脇見もしないで飲まう
何にも、何にも、求めまい!……
で盛り上がり、
私はその日人生に、
椅子をなくした。
と、また田中裕二がぽつりと呟く。
これはちょっと気恥ずかしいなあ。じつは、中也好きに、ヨワいのである。
進路希望用紙をめぐるメランコリーは高校生活のお約束で、いささかうざったいし、
宇宙が暗黒エネルギーに飲まれるという福田麻由子の話にショックを受ける佐藤健もちょっと気恥ずかしかったのだが、いつもながらに構成がうまいので、最後まで見続けられた。
第5話|ひらひらと落ちていく布のように
「…カナッ?」と小首をかしげる仕草を可愛いと思わせるのは、かなり倒立したテクニックである。
1回目からこれに成功したとき、このドラマの成功は約束されたのだ。
これは大きな賭けだったと思われる。
毎回、使う言葉が変化するのはQ10が学習していることを表すようだが、次々と新しい惜しげもなく新しい身ぶりを投入することで、Q10の神話は補強されていく。
自分は何か?と問い始めるQ10。
そのQ10を欲しがる中尾君。なぜかいやだと言えない平太だが、リセットを拒否、激怒してネットで晒すと脅す中尾。
平太はそれを「抹殺」という中2病的な言葉で表現する。
人間や動物を鼓動で判別しているらしいQ10は、音をCDに焼いてクラスメイトに配る。
「平太の音」をイヤフォーンで平太に聞かせ、「デモ、平太ハココニイル」という逆光のシーンの美しさ。
それはかつて止まりかけた心臓の音だ。
平太を元気づけるため、漫符(笑)を使ってみせるQ10。
顔に縦線を貼り付けて、自分は落ち込んでると言うQ10。
今ある世界をむやみに壊すべきではない、と中尾に忠告する月子。地球型の小さな球。
影山はカナダに行映像の勉強に行きたい。
同じ大学に行くつもりだった恵美子はショック。
距離を置こうとする影山、ずっと一緒にいたい恵美子。
ネットで「赤目」と中傷される民子。
歌で反論するように勧める武彦。
民子の赤い髪は、自分が存在することの証明。
欲望に取り憑かれた中尾は、屋上の手すりを越え、「Q10をくれないなら飛び降りる」。
ロボットの命と自分とどっちが大切なんだと聞かれて、平太は「Q10」と答える。
そして中尾ともみ合って平太が中空に!
月子に渡された地球型の球が粉々に割れるという幻。
時間はステップバックし、もう一度揉み合い、そして再度転落する平太。
しかし階下で待っていたQ10が平太を受け止めていた…。
描きようによってはいくらでもヒロイックになる場面だが、あくまで淡々と、心情に寄り添う演出である。
「深井平太の音」のCDを聴く平太の家族。
「山本民子の音」のCDを聴く武彦。
「3年B組の音」のCDを聴く小川。
「不安な夜は嫌い」と武彦に訴える平太に、武彦は、「病気の自分たちはそんな夜はいくつも越えて来たはずだ」と言う。
それを忘れていた平太は今は幸せなのだから、「ここはお前の場所じゃない」。
じゃあ自分の場所はどこなのか?
「それが一番自分だと思える場所」。それが鉄塔なのだ。
空に向かって立ち、頼りない電線でつながった鉄塔。
「あの鉄塔のように、俺たちはここにいる」。
