2010年7月13日~9月14日に毎週火曜日21:00-21:54にフジテレビ系「火曜21時」枠で放送。昼間は温厚かつお人好しだが、夜になると凶悪犯に正義の鉄鎚を下す冷酷な制裁者になるという2つの顔を持つ刑事・伊達一義の活躍を描いた勧善懲悪型刑事ドラマ。毎回ラストに伊達が法の裁きを逃れた犯罪者に制裁を下すという一話完結型ではあるが、全編を通して伊達が与える制裁の中身やあすかの兄・夏樹の死の真相、三上を始めとする協力者の正体など、様々な謎が徐々に明らかになっていく構成。主演は堺雅人。堺雅人は連続ドラマ初主演の堺雅人。キャッチコピーは「真犯人よ、闇で消えろ。」「この刑事、天使か、悪魔か。」。
ジョーカー 許されざる捜査官のネタバレ感想
自供を引き出すことができなかったからといって、独自に正義の鉄槌をくだしていたら、まるで、仕事のできない刑事みたいではないかというのは余計なツッコミか。
堺雅人の警部(神奈川県警捜査一課強行犯係4班班長)は、犯人を麻酔弾で眠らせた後、船で「どこか」へ連れて行って独房のようなところに閉じ込め、被害者たちと同じ苦しみを味わわせる終身刑を「神隠し」と称して行っている。
縛られた状態で、どこぞのコンクリ部屋に監禁されていたりするのがだが、監禁ということは誰かが管理しなければいけないわけで、
コストも人手も相当かかることになる。
必殺シリーズのように殺してしまうのはちょっと、というところから苦肉の策でそうなったのではないかと想像するが、いくらなんでも変だろうと思う。「法で裁ける相手は“制裁”しない」と堺雅人は言うのだが、ヒジョーにご都合主義的な、というか自分勝手なローカルルールという気がする。神奈川県警はよく協力をOKしたな。
すでに第2回ではこのくだりは省略されていたが(金がかかりすぎるからだろう)、その前に、早くも錦戸亮にバレてしまう展開になった。バーのマスター大杉漣も刑事であった素性がバレてしまうし、どうも展開が早い。
と思ったら錦戸は仲間になってしまった。
ドラマは、時間配分も含め、事件→不起訴や無罪確定→仕置というパターンで進み、堺雅人・錦戸亮・大杉漣がチームとなるが、4話あたりから、犯罪者の側にも大がかりな組織が関与している可能性が示唆されるようになり、どこへ転がっていくのか予想がつかなくなった。
警察官出身のルポライターのりょう(「週刊真実」はなぜかいまだに版下で雑誌を作っている)が軸になり、謎が明らかになってくるのだが、
5話では、鈴木砂羽(高橋伴明の「愛の新世界」で日本映画史上初のヘアヌードに挑戦した女優)が美人局を使って精神鑑定士を誘導し、言質をとらせない冷静な悪女を演じて、“粛清”対象となっていた(美人局が使ってるデコケータイが、なぜかCE端末)。
首筋の4つのホクロがなんとも怜悧なお色気だった。
後半には、ヒーロー物ではお馴染みの「ニセヒーロー」(忍成修吾の港北西署刑事課巡査部長)まで登場し、ビルの屋上で月を背に笑いの仮面装着という大時代さで、とんと、月光仮面である。忍成は所轄の切れ者で、FAXのコンセントが外れているだけで、被害者宅にいやがらせがあったことを見抜いてしまうのがすごい。真犯人を追いつめるも自白の余裕をあたえた堺雅人に、「ぬるいですね」と言って、偽ジョーカーにヘンシンし、真犯人をなぶり殺しにしてしまう。どうも「新世界の神」を目指しているっぽい(「DEATH NOTE」が書かれたのはこの7年ほど前である)。殺す相手を間違えても「社会のゴミを掃除して来ました」とうそぶいている。
そういう変態とジョーカーたちがどう違うの?というテーマが提出され、大杉漣も堺雅人も錦戸亮も、違う、と言うのだが、遺族から見ればどっちも同じである。かえってテーマがぼけてしまった。
忍成には巡査部長の異母兄(飯田基祐)がいて、二人で偽ジョーカー活動をしているのだが、そこにどことなくホモセクシュアルなかほりが漂う。彼らは、忍成のほうの母親を保険金目当てで殺した父親を探しているのだが、これはかつて大杉蓮が“制裁”した人間で、じつはまだ生きているという流れである。
堺雅人は一般人の前で二人を制裁してしまうのだが、本当にいいのかなあ。
堺雅人が神隠しを始めた時点で、すでに神隠しは何件も行われていた。大杉蓮が制裁した人間も含めるとかなりの数の悪人が勾留されているわけだが、これをどういうオチにするのか。
一方、りょうは、元同僚で兄でもある(丸山智己が殺された事件を追っているうちに、ついに殺られてしまう。このシーンは何度もプレイバックされるのだが、りょうの今際の顔がいまさらながら見苦しい。色白の雰囲気美人なのだが、このアップは辛いものがあった。そして、杏が激怒して堺雅人を問いつめる顔がリアルにコワかった。
本作に先立つ半年前に殺人の時効はなくなっているのだが、すでに時効が成立しちゃってる事件は対象外ということで、佐野史郎の女子高生殺しは時効成立後5年たっているという隙をついた設定になっていた。
杏は、丸山の死んでから5年もたってから、今さらのように残したCD-Rのパスワードが記載された携帯メールを錦戸亮が復元するというくだりがあった。番組の最後に、携帯メールの復元は実際にはできません、と断り書きが出ていた(携帯メールは上書きする仕様のため)。
ところが確かに復元したという事例がある。押尾学の携帯メールだ。
捜査関係者によると、押尾容疑者を8月にMDMA使用容疑で逮捕した際、押収した携帯電話からは、同容疑で逮捕された知人泉田勇介容疑者(31)らとの、事件に直接かかわる内容のメールを消去されていたという。しかし、同課は、特別なコンピューターソフトで消去されたすべてのデータを復元。MDMAは、事件当日の8月2日に東京・港区マンションで一緒に使用して亡くなった田中香織さん(30)に「もらった」と主張する押尾容疑者に対し、現在はこれらの復元データを突きつけて追及しているという。(産経新聞、2009年12月12日)
CD-Rの中味はJOKERなる名義の口座の動き、UNDERGROUND Vなる警視庁OBのリスト、そして「34.633208, 139.759827」という謎の数字が残されていたのだが、最後の数字は、粛正した人が監禁されている場所の緯度経度であることが明らかになる。
クライマックスでは、こうして謎を追い続けた杏に危険が迫り、錦戸亮も刺されてしまう。見せるのか見せないのか早くはっきりしろ!と思うシーンでついに顔は見えず。はたして鹿賀丈史か、大杉漣かというところで次週最終回となったが、結局、ドタバタになった。
登場人物が意味もなく行ったりきたりするムダの多い脚本で、同じ病院のベッドに伊達→久遠→あすか、と寝ることになって、作り手たちは何の疑問も感じなかったのだろうか。
最後は大杉漣の代わりに鹿賀丈史が代わりにジョーカーに入り、堺正人と錦戸亮はは今日も粛清にいそしむ、というのがこのドラマの終わりなのだが、なんだかなあ。
そして最終回の後に、なぜか「特別編」というおまけまで放送された。
ジョーカー 許されざる捜査官のキャスト
主要人物
伊達 一義〈35〉 – 堺雅人
久遠 健志〈25〉 – 錦戸亮
宮城 あすか〈24〉 – 杏
神奈川県警察
捜査一課
来栖 淳之介〈35〉 – 平山浩行
堀田 輝生〈32〉 – 土屋裕一
轟 泰樹〈24〉 – 永岡卓也
市村 秀典 – 竹島正義
渡辺 敏彦 – 赤丸正幸
滝川 美菜〈24〉 – 鈴木凛
井筒 将明〈58〉 – 鹿賀丈史
鑑識課
溝口 喜一〈34〉 – 佐伯新
武本 寛治〈23〉 – 井上正大
宮城 夏樹〈没30〉 – 丸山智己
片桐 冴子〈35〉 – りょう
三上 国治〈58〉 – 大杉漣
その他の人物
灘木 剛士 – 斎藤歩
ジョーカー 許されざる捜査官のスタッフ
脚本 – 武藤将吾
音楽 – 井筒昭雄
演出 – 土方政人、都築淳一、石川淳一
主題歌 – RIP SLYME「SCAR」(ワーナーミュージック・ジャパン)
企画 – 立松嗣章、太田大
選曲 – 志田博英
スタントコーディネイト – 釼持誠
特殊メイク – 松井祐一
ガンエフェクト – パイロテック
音楽協力 – フジパシフィック音楽出版
プロデューサー – 稲田秀樹、永井麗子
制作協力 – ベイシス、フジアール、バスク
制作 – フジテレビ・共同テレビ