市民ケーン

ルース・ウォリック(市民ケーン)
ルース・ウォリック(市民ケーン)

ドロシー・カミンゴア(市民ケーン)

ドロシー・カミンゴア(市民ケーン)


※写真はケーンの最初の妻エミリー(#ルースウォリック)と二番目の妻スーザン(#ドロシーカミンゴア)。二人をはじめ登場人物はすべてウェルズ主宰のマーキュリー劇団の役者。

1941年のアメリカ合衆国のドラマ映画。原題は「Citizen Kane)」。オーソン・ウェルズの監督デビュー作で、世界映画史上のベストワンとして高く評価されている。ウェルズは監督のほかにプロデュース・主演・共同脚本も務めた。モノクロ、119分。RKO配給。
新聞王ケーンの生涯を、それを追う新聞記者を狂言回しに、彼が取材した関係者の証言を元に描き出していく。主人公のケーンがウィリアム・ランドルフ・ハーストをモデルにしていたことから、ハーストによって上映妨害運動が展開され、第14回アカデミー賞では作品賞など9部門にノミネートされながら、脚本賞のみの受賞にとどまった。しかし、パン・フォーカス、長回し、ローアングルなどの多彩な映像表現などにより、年々評価は高まり、英国映画協会が10年ごとに選出するオールタイム・ベストテン(The Sight & Sound Poll of the Greatest Films of All Time)では5回連続で第1位に選ばれ、AFI選出の「アメリカ映画ベスト100」でも第1位にランキングされている。1989年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。

市民ケーンのあらすじ

暗く荒廃した大邸宅「ザナドゥ城」。その一部屋で屋敷の主、かつて37の新聞社と2つのラジオ局を傘下に収めた新聞王チャールズ・フォスター・ケーンが小さなスノードームを握りしめ、「バラのつぼみ(rosebud)」という謎の言葉を残して息を引き取った。
ある会社が彼の生涯をまとめたニュース映画を制作しようとするが、そのありきたりな内容に不満を持った経営者ロールストンは、編集のジェリー・トンプスンに「バラのつぼみ」という言葉にはきっと深い意味がある、それを突き止めケーンの人物像を探るようにと命じる。トンプスンはケーンに近かった5人の人物、2度目の妻で元歌手のスーザン・アレグザンダー、後見人の銀行家サッチャー(の回顧録が納められた図書館)、ケーンの旧友であり新聞社「インクワイラー」でのパートナーでもあったバーンステインとリーランド、ザナドゥ城の執事を順に訪ねながらケーンの歴史を紐解いていく。

市民ケーンの感想

新聞記者の中にはアラン・ラッドがいるらしいのだが、とても見分けられない。そもそも狂言回しである、ばらのつぼみの謎を探る記者(ウィリアム・アランドという人で「上海から来た女」でも名前のない記者役)は常に背を向けていて、こちらを向いているシーンはつねにロングで、影の中にいるから誰だかわからない。

オーソン・ウェルズの監督作品といえば本作ばかりに脚光が当たり、テレビの「オーソン・ウェルズ劇場」(日本では77年放映)で巨体がおなじみになっているわりには、73年の「フェイク」はもちろん、上記の「上海から…」(47年)も、「黒い罠」(58年)も、「審判」(62年)もすぐに見返すことができないという文化的に壊滅的な状態だ。幻の「秘められた過去」(55年)も気になる。いずれにせよ、ウェルズは監督としての才能を発揮しきれず、どちらかというと俳優として記憶に残る人になった。シュトロハイムと同じと言われるが、私にはよくわからない。

本作は極端にスローモーなモンタージュや説話的なフラッシュバック、グレック・トーランドの斬新な撮影技法によって映画史に残るものとなったが、新聞王ハーストが妨害し、サルトルも酷評した。擁護したのはアンドレ・バザンである。またマンキウィッツの脚本が優れていたことも忘れてはならない(フィンチャーの「マンク」の主人公は、当時のマンキウィッツである)。

市民ケーンのキャスト

チャールズ・フォスター・ケーン – オーソン・ウェルズ
ジェデッドアイア・リーランド – ジョゼフ・コットン
スーザン・アレクサンダー – ドロシー・カミンゴア
バーンステイン – エヴェレット・スローン
ジェームズ・W・ゲティス – レイ・コリンズ
ウォルター・サッチャー – ジョージ・クールリス
メアリー・ケーン – アグネス・ムーアヘッド
レイモンド – ポール・スチュアート
エミリー・ノートン – ルース・ウォリック
ハーバート・カーター – アースキン・サンフォード
ジェリー・トンプソン – ウィリアム・アランド
ジム・ケーン – ハリー・シャノン
ロールストン – フィリップ・ヴァン・ツァント
新聞記者 – アラン・ラッドアーサー・オコンネル

市民ケーンのスタッフ

監督 – オーソン・ウェルズ
脚本 – ハーマン・J・マンキーウィッツ、オーソン・ウェルズ
製作 オーソン・ウェルズ

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