阿修羅のごとく

広瀬すず(阿修羅のごとく[2025年版])
広瀬すず(阿修羅のごとく[2025年版])

1979年と1980年にNHK総合テレビで放送された向田邦子脚本のテレビドラマ。後に脚本が文庫化され、2003年に映画化(森田芳光監督)、2004年に舞台化、2025年にNetflixで再ドラマ化(是枝裕和監督)。

阿修羅のごとくのあらすじ

昭和54年の冬。竹沢家の三女・滝子が突然、姉妹全員を呼び集める。滝子は、探偵の証拠写真を示し、70歳になる父・恒太郎に愛人と子どもがいると伝える。母には知らせないようにと約束する4人の姉妹たち。だが彼女たちも、互いには言えない問題を抱えていた。

阿修羅のごとく(2025年)

阿修羅のごとく(2025)をNetflixで観る

阿修羅のごとく(2025)をNetflixで観る

https://www.youtube.com/watch?v=vT2xo8U_BWA

広瀬すずは脚本と監督で全然存在感が違う(2025年版の感想)

正月に見損ねていたのを、ようやく楽しめた。

パート1が3話、パート2が4話という構成は和田勉版から来ていると思われるが、そのNHK版はパート1と2の間に1年を置いており(79年と80年)、物語は母親(和田版では大路三千緒、本作では松坂慶子)の死で一度完結している(八千草薫の夫も緒形拳からから露口茂に代わっており、タイトルの種明かしもパート1の最終回でなさせる)。そこからさらにいくつもの展開を加えてドラマを紡いでいくところが向田邦子の凄いところで、人物造形がそれだけ深いということだろう。

四姉妹を演じた女優たちはさすがというか、和田版の教科書的な再現を超えようとする挑戦ぶりは圧巻である。ヒロインのオノマチもかなりいい線いっていると思うが、感心したのは広瀬すずで、脚本と監督でここまで変わるのかと驚いた(実は、広瀬の一本調子な芝居に飽きて、「クジャクのダンス」は途中脱落したのである)。この人はいわゆる憑依型なのか、100%で現場入りして三人の姉役が驚いたという。

時代設定は和田版と同じで、それなりの雰囲気は出しているが、やはり本物にはかなわず(和田版は国立だけではなく、後楽園や渋谷駅、新宿などロケが多い)、レトロモダンになっている気がする。広瀬すずが着ている毛皮も、風吹ジュンのそれとは少しニュアンスが違う(車も外車になっている)。

とはいえ、和田版のほうが良かったとも言いきれない。次にそちらについて書く。

スタッフ

企画・プロデュース – 八木康夫
監督・脚色・編集 – 是枝裕和
プロデューサー – 福間美由紀北原栄治田口聖
撮影 – 瀧本幹也
衣装デザイン – 伊藤佐智子
いけばな監修・指導 – 芦田一寿(華道遠州)
フードスタイリスト – 飯島奈美
音楽 – fox capture plan

阿修羅のごとく(1979・1980年版原作)

阿修羅のごとく(1979・1980年版原作)をU-Nextで観る

[btn class=”raised amazon-bc strong”] 阿修羅のごとく(1979・1980年版原作)をU-Nextで観る

ジェッディン・デデンは使いすぎ(1979年版の感想)

Netflix版視聴後、あらためてNHKオンデマンドで視聴(放送当時は未見)。

ジェッディン・デデン(阿修羅とは関係ない)がやかましいドラマとは知っていたのだが、何かとオチみたいに挿入するのはやり過ぎ。エンドタイトルだけで十分ではないか。その他「悲しき願い」やらYMOやら、いろいろなBGMが使われているが、曲というより演出的に時代を思わせる。

Netflix版では宮沢りえがやり過ぎと思っていたら、漠然とホームドラマの人と思っていた加藤治子がほぼ同じで驚いた。といってもそれは演出上のことで(襖の間から、裸の愛人を背後に乱れた赤い長襦袢姿で現れる)、宮沢はさらに目つきやら表情の演技を加えていてギャグのようだった。今どきはあそこまでやらなきゃダメなのか。

蒼井優松田龍平に抱きつくシーンが良かったのだが、本作を見たら、いしだあゆみの演技を教科書にしていることがわかった。先ごろ亡くなったいしだはやはり美しい。

Netflix版にないシーンとして、佐分利信の切腹シーンと文楽の日高川などがあった。前者はコントにしか見えないのでわかるが、後者のいわゆる「角出しのガブ」は取り入れても良かったかも。まあ意味がありすぎると是枝監督が判断したのだろうけど。あと陣内君(深水三章)は本作では復活の見込みなしだった。

全体として、こちらのほうが八千草薫演じる次女・巻子のヒロイン感が強い。

スタッフ

パート1
制作:沼野芳脩
演出:和田勉(第1、3話)、高橋康夫(第2話)
美術:中嶋隆美
効果:高橋美紀(第1、3話)、浜口淳二(第2話)
記録:山崎清子(第1、2話)松田和子(第3話)
技術:稲垣恵三(第1、3話)、森野文治(第2話)
照明:内藤功(第1、3話)、栗原民博(第2話)
カメラ:八城徳治(第1、3話)、上原康雄(第2話)
音声:渡辺秀男(第1話)、山本和夫(第2話)、藤原政雄(第3話)
タイトル文字:望月美佐
文楽日高川(清姫):吉田簑助(第1話)
パート2
演出:和田勉(第2、4話)、富沢正幸
テーマ音楽:メヘテルハーネ「ジェッディン・デデン」(Ceddin Deden〈祖父も父も〉)[注 1]
挿入曲
「悲しき願い」サンタ・エスメラルダ(Don’t Let Me Be Misunderstood / Santa Esmeralda)
(Get Up and Boogie / Silver Convention)
「バビロンの城門」レインボー(Gates Of Babylon / Rainbow)
「テクノポリス」イエロー・マジック・オーケストラ(TECHNOPOLIS / Yellow Magic Orchestra)
「フィール・ブルー」ダウン・タウン・ブギウギ・バンド
「UFO」ピンク・レディー(音のみ)
「ジョニー」マレーネ・ディートリヒ(Johnny / Marlene Dietrich)
「遙かなる銀河へ」ナナ・ムスクーリ(Children of the Stars / Nana Mouskouri)

阿修羅のごとく 原作/Netflix版 キャスト対応表

役名 2025年Netflix版 1979・1980年版原作
三田村綱子(長女) 宮沢りえ 加藤治子
里見巻子(次女) 尾野真千子 八千草薫
竹沢滝子(三女) 蒼井優 いしだあゆみ
竹沢咲子(四女) 広瀬すず 風吹ジュン
竹沢恒太郎(四姉妹の父) 國村隼 佐分利信
竹沢ふじ(四姉妹の母) 松坂慶子 大路三千緒
里見鷹男(巻子の夫) 本木雅弘 緒形拳露口茂
勝又静雄(興信所の調査員) 松田龍平 宇崎竜童
陣内英光(咲子と交際するボクサー) 藤原季節 深水三章
桝川貞治(綱子の愛人の料亭の主人) 内野聖陽 菅原謙次
桝川豊子(貞治の妻) 夏川結衣 三條美紀
土屋友子(恒太郎の愛人) 戸田菜穂 八木昌子
赤木啓子(鷹男の部下) 瀧内公美 萩尾みどり
里見宏男(巻子と鷹男の長男) 城桧吏 長谷川諭松本秀人
里見洋子(巻子と鷹男の長女) 野内まる 前村麻由美荻野目慶子
陣内まき(陣内の母親) 高畑淳子 星清子
土屋省二(友子の息子) 福島永大
三田村正樹(綱子の息子) 三浦獠太
坪田里子(三田村正樹の婚約者) 溝口奈菜
民子(「枡川」女中頭)) 本山可久子

阿修羅のごとくを観た人の感想

阿修羅のごとくの原作脚本

阿修羅のごとく(新潮文庫) Kindle版 向田邦子 (著)

阿修羅のごとく(新潮文庫) Kindle版
向田邦子 (著)

阿修羅。三面六臂を有するインドの魔族。猜疑心強く互いに事実を曲げ、他人の悪口を言いあう……。妻子ある男を愛人に持つ長女、夫の浮気に悩む次女、オールドミスで潔癖性の三女、売れないボクサーと同棲中の四女。阿修羅のイメージにのせて、四人姉妹のそれぞれの人生を、繊細に、辛辣に、そして限りなく温く描き出す、悲しくも愛すべき物語。著者のシナリオにおける代表的作品。

阿修羅のごとくの原作脚本を読んだ人の感想

タイトルとURLをコピーしました