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モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜

3.5
小芝風花(モコミ彼女ちょっとヘンだけど) ドラマ
小芝風花(モコミ彼女ちょっとヘンだけど)
2021年1月23日~4月3日までテレビ朝日「土曜ナイトドラマ」枠で放送。全10話。橋部敦子が初めてテレビ朝日系で手掛けるドラマ。主演の小芝風花とは本作で初タッグ。第39回向田邦子賞受賞作。
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モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜の感想

小芝風花については、「女子的生活」(2018)の時点では未知数であったが、翌年、「トクサツガガガ」「ラッパーに噛まれたらラッパーになるドラマ」「歪んだ波紋」「パラレル東京」と立て続けにNHKが押しまくり、誰もが注目した。

小芝はこの民放ドラマでも、泣き顔で口角が下がらず「上唇の先端が小刻みに震え」「上唇で、その役の感情の動きを表現できる」と評価され、うまく乗り切って大物の片鱗を見せた。見守りたくなる女優だと思う。

ドラマは「僕らは奇跡でできている」(2018)に続く橋部敦子のふしぎ系。60分ドラマでいいんだけどな。

モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~ 見どころ

  1. 擬人感覚という“異能”が描く繊細な世界
    主人公・清水萌子美(小芝風花)は、「モノの気持ちがわかる」という特異な感覚の持ち主。ぬいぐるみ、観葉植物、道具…あらゆるモノたちの“声”が聞こえてしまうという、一見ファンタジックな設定だが、これが本作の核となるリアリズムの入り口。
    この擬人感覚は「精神の繊細さ」や「他者の痛みに過敏であること」のメタファーであり、現代的な「HSP(Highly Sensitive Person)」や「発達障害」へのやさしい視線とも重なる。モコミの“ちょっとヘン”は、むしろ“ちょっと優しすぎる”という意味に読み替えられる。
  2. 橋部敦子脚本の“家族再生ドラマ”としての構造
    橋部敦子は家族のすれ違いや不器用な愛の名手だが、本作もまさにその系譜にある。モコミを取り巻く家族は、表面上は仲良しでも、内側には不満と誤解、未消化な過去を抱えている。
    完璧主義で心が不安定な母(富田靖子)、無口だけど娘を愛する父(橋爪功)、自分の夢を諦めた兄(工藤阿須加)など。この家族たちが、モコミという“異質な存在”を中心に、少しずつ本音をぶつけ合い、再生していく過程は、橋部作品らしく「静かな感情の噴出」が印象的で、最終話までじんわりと心に沁みる。
  3. 小芝風花の“感情を抑えた演技”の妙
    本作の小芝風花は、バラエティや明るいヒロイン役とは一線を画し、台詞より“沈黙の演技”で魅せる難役を見事にこなしている。表情、指先の動き、呼吸の間——それらがモコミの繊細さをリアルに描き出し、共感を誘う。特にモノと対話する静謐な場面では、彼女の「内なる声」が映像に命を吹き込んでおり、視聴者に「人間以外のものにも心があるかもしれない」という不思議な感覚を与えている。
  4. 主題歌と演出の詩的融合
    主題歌はGENERATIONS from EXILE TRIBEの「雨のち晴れ」。この曲が挿入されるタイミングは絶妙で、モコミが他者とつながる瞬間、あるいは傷を乗り越える場面に優しく寄り添う。
    映像演出も詩的で、日常の風景の中にある“ちょっとした異物感”を大事にしている。モノが語りかけてくる場面は、過剰なCGなどを用いず、想像の余白を残す形で表現されており、視覚的にも“静かで深いドラマ”として成立している。

モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~ あらすじ

清水萌子美(小芝風花)は、感情を持たないとされるモノの気持ちを感じ取る特殊な感覚を持つ女性。小さな工場で不良品チェックを黙々とこなすが、その感覚ゆえに周囲と距離を置いていた。ある日、工場の高い窓の汚れを指摘し、清掃業者が来ないと知ると自ら掃除しようとするが、その行動が周囲に迷惑をかけてしまう。母・千華子(富田靖子)は娘の行動に頭を痛めつつも、夫・伸寛(田辺誠一)や兄・俊祐(工藤阿須加)と共に萌子美を支えてきた。22歳の誕生日、萌子美は工場に行きたがらず、家族で誕生日を祝うが、その夜に意外な訪問者が現れる。

モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~を観るには?

モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜 キャスト

主要人物
清水萌子美 – 小芝風花(7歳時:有香、12歳時:森山のえる)

清水家
清水千華子 – 富田靖子
清水伸寛 – 田辺誠一
清水俊祐 – 工藤阿須加(幼少期:榎本司)
須田観 – 橋爪功

清水生花店
依田涼音 – 水沢エレナ
桜井真由 – 内藤理沙

その他
岸田佑矢〈19〉 – 加藤清史郎

モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜 スタッフ

脚本 – 橋部敦子
演出 – 竹園元(テレビ朝日)、常廣丈太(テレビ朝日)、鎌田敏明
エグゼクティブプロデューサー – 内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー – 竹園元(テレビ朝日)、中込卓也(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
音楽プロデュース – S.E.N.S. Company
音楽 – 森英治
主題歌 – GENERATIONS from EXILE TRIBE「雨のち晴れ」(rhythm zone)
挿入歌 – Ado「うっせぇわ」(第5・7話)
花屋監修 – 藤原佐知子
企画協力 – オスカープロモーション

『モコミ〜彼女ちょっとヘンだけど〜』は、一見するとファンタジーの皮を被った“変わり者の成長譚”だが、実際には「誰もがどこかに異質さを抱えている」という現代人の普遍性を描いたヒューマンドラマです。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。

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