ドラマ1980年代のドラマ1982年のドラマ

けものみち

名取裕子(けものみち) ドラマ
名取裕子(けものみち)
けものみちは、1965年に東宝で映画化、また3度テレビドラマ化されている。

けものみちのあらすじ

料亭の仲居・成沢民子は小滝という男と知り合い、共謀して寝たきりの亭主を殺し、多額の報酬を約束されて政界の黒幕の下へと送り込まれる。

けものみち(1982年版)

『松本清張シリーズ・けものみち』のタイトルで、1982年1月9日~1月23日の毎週土曜20時-21時10分にNHK『土曜ドラマ』で放送。全3回。主演は名取裕子。視聴率は第1回18.2%・第2回15.8%・第3回18.7%。平均視聴率は17.6%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)。

感想

原作は、「わるいやつら」から引き続いて62〜63年の週刊新潮に連載された清張の長編。

本作は65年の映画版(池内淳子)から18年後の映像化(NHK土曜ドラマ)になるが、西村晃演じるエロ爺の邸宅(松濤らしき雰囲気)の庭は、清張邸がロケ地とのこと。
今回、再放送の録画で見たのだが、清張と主演2人(名取裕子山崎努)の立ち話がおまけについていて興味深かった。

名取裕子という女優について、私は「時代劇の人」という感じで関心を持ったことがなかったのだが、本作を見るとやはり逸材であると首肯できる。
名取は当時「CMの演出をめぐって」事務所とトラブルになりホサれていたのを和田勉が声がけして本作に出演、みごと期待に応えたということらしい。
この原作の見どころはなんといっても名取が演じた民子だから、名取はここぞというときに強い女優なのだろう。

ただし本作(70分×3話)は原作とは結末が変えていて、人死にも少なく、ラストは山崎努と名取がともに破滅するシーンで終わっている。

サングラスをかけて何者だかわからない山崎は、原作の「小滝」にぴったりだ(ホテルニュージャパンがモデルとされる「ニューロイヤルホテル」の支配人で、後半はそこを辞めてセレブ相手の古物商になっている)。
山崎は2年前に同じ和田勉演出の「ザ・商社」というドラマ(これも原作は清張の「空の城」)にも出ていて、先の立ち話では、「今回は英語がなくてラクでした」と清張に語っているのだった。

客演では加賀まりこと、怖い顔の刑事を演じた伊東四朗が印象に残った。

加賀まりこ(けものみち)

加賀まりこ(けものみち)


伊東という人は自分の顔の怖さをよく知っていて(「ミンボーの女」も怖かったね)、「顔が威圧的で面白い人」というコンセプトで、サーカス団長のベンジャミン伊東というキャラを創造した。

西村晃のエロ爺もいいのだが、本作は「財界の黒幕」(小佐野賢治がモデルと言われる)を隠喩ではなくリアルなものとして描いている稀有な小説だという。

さて本作以後、この原作は91年に十朱幸代、06年に米倉涼子で映像化されていて、これからそれらを見てみようと思っているところだ。

けものみち(1982年版)を観るには?

けものみち(1982年版)キャスト

成沢民子 – 名取裕子
小滝章二郎 – 山﨑努
鬼頭洪太 – 西村晃
久恒義夫 – 伊東四朗
秦野重武 – 永井智雄
山倉米子 – 加賀まりこ
成沢寛次 – 石橋蓮司
沢杉(病院院長) – 中村伸郎
熊谷四郎(高速道路公団新総裁) – 久米明
警視庁刑事部長 – 加藤和夫
警視庁捜査一課長 – 勝部演之
西田警部補(警視庁捜査係長) – 林昭夫
中央新聞デスク – 塩見三省
見舞い客の暴力団親分 – 松崎真
島村百合子(芳扇閣女将) – 高森和子
みよ(芳扇閣仲居) – 新山真弓
芳扇閣仲居 – 雪江由記
久恒の妻 – 原知佐子
坂本(捜査一課刑事・久恒の後輩刑事) – 矢吹二朗
黒谷進 – 林ゆたか
宝石商 – 奥野匡
秦野の秘書 – 野村信次
民子の近所の男 – 西村淳二
寛次の家政婦 – 松本マツエ
捜査一課刑事 – 野村昇史
捜査一課刑事 – 小川隆一
岡橋誠一(高速道路公団理事) – 増田順司
蛭田代議士 – 大森義夫
代議士 – 山崎満
沢杉病院の医師 – 松村彦次郎
香川(高速道路公団総裁) – 入江正徳
鬼頭家の男 – 小坂明央
早苗(鬼頭の新しい女) – 小林かおり
松美里杷
永六輔
西岡拓也
三川雄三
北溝みなこ
相原巨典
伊藤真智
小西美千代

けものみち(1982年版)スタッフ

脚本 – ジェームス・三木
演出 – 和田勉
オープニング – ムソルグスキー「交響詩 禿山の一夜」
劇中音楽 – ムソルグスキー「組曲 展覧会の絵」(ラヴェル編曲)
制作 – NHK

けものみち(1991年版)

十朱幸代(けものみち[1991年版])

十朱幸代(けものみち[1991年版])

『松本清張作家活動40年記念・けものみち』のタイトルで、1991年12月24日火曜日21時3分 – 22時52分に日本テレビ系2時間ドラマ「火曜サスペンス劇場」で放送された。主演は十朱幸代。視聴率は18.1%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)。

感想

先日感想を書いたのは82年の名取裕子版(和田勉作品)。本作は約10年後(91年)の十朱幸代版である。火サス版、もしくは中島丈博版と言うべきか。

2時間ドラマと言っても正味は1時間半足らずだから、展開はスピーディで、のっけから十朱がリウマチで寝込む夫を焼き殺すところから話が始まる。夫がチンピラだったとか、夫を寝たきりにしたのが鬼頭洪太宅に詰めているヤクザだったという伏線はなし。

ホテルニューローヤルの怪しい支配人・小滝を演じるのは草刈正雄で、最後に貸別荘の風呂場で十朱を焼き殺して一人生き残るのだが(39歳と50歳という年齢差のカップルである)、いかにも演技がまずすぎるせいか出番はずいぶん少ない。
その分活躍するのが刑事の河原崎長一郎で、同郷のよしみで、けものみちに堕ちていく十朱の身を案じる役どころなのだが、脚本上の窮余の策とおぼしく、ぱっとしない。

エロ爺の黒幕は大竹秀治で、これはさすがのいやらしさである。
この黒幕の後釜を狙う新興のフィクサーというのが(名前だけ)出てくるので、終盤は急にヤクザ映画的な構図になり、大竹は早々に急死し、暗躍していた秦野弁護士もその葬式の最中にドスで刺されて死ぬ。

草刈正雄が十朱幸代を殺すのは「いろいろなことを知りすぎたから」とされており、つまり十朱演じる成沢民子は、赤坂に店を出してもらうのを楽しみにしていたが果たされず、いろいろやられ損の哀れな女という描かれ方であった。
知恵も野望もない、ひたすら情にすがる、体しか取り柄のない女は、十朱幸代という女優が好んで演じた役柄ではないだろうか。

さて残すは米倉涼子版だ。

けものみち(1982年版)を観るには?

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