今回のメインは木村佳乃の淡い恋であって、気の強い女王様キャラだった木村は実は優しい男に対する免疫がなく、ちょっと優しくされただけで簡単に荻原聖人になびいてしまった。
さすがに自制心はあり、萩原の手を握って「私は母親に戻ります」と言っていたが、萩原にちょっとでも遊び人マインドがあれば、触れなば落ちんという風情であった。
カイジの声優であり、雀鬼としても知られる萩原は、黒沢清の「CURE」で怖い殺人伝道師を演じていたのを忘れられないが、そのような男であればこそ、木村はどこまででも堕ちてしまっていただろう。
「警視庁継続捜査班」の頃からするとひどく痩せてしまった木村佳乃は、刑事・貴志真奈美とは比較にならないほどのフェロモンを出しまくっていた。
(冬ドラ「内部調査官・水平直の報告書」は、見そこねた)
一方、中島ひろ子が木村の夫・平山広行の愛人ではないことが確定してしまった。
中島の後ろめたいような演技はミスリードだったが、これは中島が内心そう思われることを望んでいた確信犯だったということなのだろう。
倉科カナが演じる新藤真央は正真正銘の悪意の塊だが、中島も、ちょっとした悪女である。
さて、その倉科カナだが、木村佳乃に「あなたは無理をしすぎなのよ」と言われてブチ切れ、幼稚園全ママへの一斉メール爆撃という派手な報復に出た。杏のケータイ画面に映った送信元アドレスは、himawari@free_mailだった(棄てアドということだろう)。
たしか、倉科の家にはPCはなかったと思う。全ママのアドレスをケータイで宛先に打ち込むのはかなりの労力だったはずで、倉科の執念のほどが伺える。
一方、りょうは杏に正社員にならないかと誘っていた。ここでのトラブルがなかなか起こらないのでイライラするのだが、夫の不倫が発覚するのと同時になにか杏に災厄としてふりかかるのだろうか。
残り回数は少なく、もはや残された爆弾は、りょうの家庭だけである。
本当の敵が今、隣に|模擬面接は夫の査問会
イキナリ目付きが鋭くなったりょうのアップ、そこに重ねて今回のタイトル「本当の敵が今、隣に」を最後の最後に出すというニクイ演出。
予想通りのボスキャラではあるのだが、ここまで9週をかけて「私たちは仲良しドキドキ」という描写を重ねてきたので、ついにキタ!というカタルシスが心地良い。
りょうについては、「JOKER 許されざる捜査官」での瀕死のクローズアップカットについて、ミグルシイという失礼な感想を書いたことがあり、今でもそれを気にするのは、この人が漂わせる美人オーラ自体をくさすつもりはないからである。
ドラマはしょせん荒唐無稽と思うのは、たとえば登場人物のママたちが東郷チャイルドスクールの廊下に並んだとき、それがあきらかに一般人と一線を隠す異彩を放っていたりするからで、背が高い人たちだということもあるが、やっぱり女優はオーラが違うのである。
ま、当たり前すぎることなんだが。
りょうが演じる沢田利華子の特徴は、経済的に自立した女性ということである。小さいとはいえ、順調に業績をのばす会社の経営者として、社会的な判断をくだせる。これはつまりイヤガラセのレベルを超えて、自らの安全を確保した上で、完膚なきまでに相手を抹殺できる戦闘力があることを意味する。
まだフェロモンモードが残る木村佳乃は、ふたりの仲の良さを見ながら、それを揶揄するでもなく、「受験番号は他人に教えるものじゃない」と忠告していた。
さあ、りょうが受験番号を使って杏をどう陥れるのか、まったくもって今から楽しみである。視聴者がこのドラマでもっともドキドキする瞬間だ。
最終回まで2回を残しているが、来週は早くも安達祐実がカムバックするようだ。
これも予想通りだが、最終回に急に再登場してまとめじみたことを言うのではなく、そのひとつ前から登場するということは何かしら悶着のタネとなるわけで、これも期待をせずにはいられない。
一方、木村佳乃とハギーのロマンスはあっさり終わりを迎えてしまった。
自分には婚約者がおり、もともと来年3月にはひまわりの子幼稚園を辞職するつもりだった、とハギーは緊急保護者会で釈明したが、フットサルの練習で木村とハギーの婚約者が出くわさないのは不自然だから、これはハギーが咄嗟についた嘘ではないかという気がする。
保護者たちは辞めるという言質をハギーからとったことに満足し、それ以上は追及しなかったが、園側の出席者がハギーだけの、こんな保護者会はあり得ないだろう。
園長が当該職員を解雇して不祥事の責任をとらせる、という形を変にショートカットしてしまったので(ひまわりの子幼稚園のキャストはハギーしかいないのだ)、ひどく違和感がある落着の体になった。
かりに木村とハギーが愛人関係にあったとしても、本宮家以外の人間には関係ないのである。
木村佳乃の心情描写には長い時間が割かれていたが、あまり成功しているとは言えなかった。
ハギーに婚約者がいたことにショックを受けていることはわかったが、それを言わなかったハギーを恨むようでもなく、自分の浅慮を後悔するでもなく、ハギーが辞めることについての責任を感じるでもなく、かといって捨て鉢になって茫然としているというわけでもなさそうで、
いっとき夢を見させてくれただけでなく、嘘をついて自分を守ってくれた、ハギーの献身に対する感謝の念ぐらいしか感じられなかった。
やはりお嬢様だから、自分から何か積極的な行動をとることはできないのだろうか(たとえばハギーの再就職先を世話するとか)。
平山広行も、こうした結末に満足しているかどうか疑問である。
すでに長くなりすぎているが、今回は東郷チャイルドスクールの模擬面接があり、3家族が順番に夏木マリの鑑定にさらされるという趣向だった。それは表向きで、じつは、さながら、それぞれの妻による夫の査問会なのである。
妻たちはそれぞれ夫の態度や言動を吟味し、とりあえずの合格点をつけたようだったが、家族に対する思いが合格でも、妻に対する思いはまた別。セックスレスの本宮家と、夫が不倫中の沢田家は、そういう意味で問題があるわけだが、平山広行は中島ひろ子が愛人ではないと先週明らかにしてしまっているので、セックスレスの理由は不明である。
ドラマ開始当初、健太君にずいぶん差をつけていた彩香ちゃんは、なぜか馬鹿になってしまい、切りそろえた前髪の下でカンニングを働いていた。彩香ちゃんはおそらく本番でカンニングをして、お受験に失敗するのだろう。哀れである。
さて、幼稚園ママ全員のケータイに一斉メール爆撃を実施した倉科カナは、その現場を目撃していた杏に責められ、フリーメールを盾に婉然と笑ってしらをきるのだが(じつは倉科のケータイには「メール送信完了」の表示が出ていたのだが)、「むなしくないの?」という言葉を投げつけられて、表情をくもらせる。そうなると倉科の悪事も、これで打ち止めとなったのだろうか。
ハギーは、一斉メールの犯人が倉科であることを知っていたようだったが、それをママ友たちにも木村佳乃にも告げずに去っていった。
倉科の悪事を知っているのはいつも杏だけである(なぜ、りょうにも誰にも言わないのか、不思議でならない)。
最後に、尾野真千子について書いておく。
尾野はようやく髪をまとめ、模擬面接に出席するところまで恢復した(夏木マリの質問に尾野はちゃんと答えられたのだろうか、気になるところだ)。爽君をはさんで夫婦は新婚のように視線をかわしあうまでになったが、麿顔の夫・高橋一生のセクハラ疑惑がやはり冤罪という流れになりそうなので、あのバスでの痴漢現場目撃事件をどう結論づけるつもりなのかと思う。
予告編で映ったカットから想像するに、次回は杏と尾野の和解があり、尾野は再生を迎えるようなのだが、たとえば安達祐実を自殺に追い込んだのは誰か。
「ひまわりの子幼稚園【ももぐみ】保護者と園児リスト」の伏線も回収してほしいものである。
