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霧に棲む悪魔

京野ことみ(霧に棲む悪魔) ドラマ
京野ことみ(霧に棲む悪魔)

一方、戸次重幸は「サラマンダー・プロジェクト」に着手した。
砂漠の真ん中に世界最大級の太陽光発電所を作るというものらしい。サラマンダーは火を司るトカゲのことで、戸次は、燃える炎を喰らって生きるサラマンダーが自分にふさわしいと考えているようだ。
火事から生まれた男という意味なのだろう。

田島ゆみかは戸次の指示によってデヴァルトメンタルクリニックに拉致され、記憶を失わせる処置をされそうになる。
田島は誰かに助けを求めていたが、これは中田喜子であると考えられる。
田島は5000万円で養子縁組の契約を結んだが、それを解消するのは別料金だと言ったので、戸次の不興を買ったのである。

姜暢雄がサンドイッチマンを始めたので、京野ことみと入山法子は慣れぬ皿洗いのバイトをしていたが、京野は1000万円を持っているのだから、そんなことをする必要はないと思う。
入山法子はまだ体が思うように動かないらしく、そんな人間に皿を洗わせるのは危険である。

第10週|姜暢雄に知恵をつけたのは誰か

霧に棲む悪魔 第51話今週は岡まゆみが出づっぱりの週だった。
この人は70年代にポーラテレビ小説で主演デビューし、大映ドラマではおなじみの女優なのだが、私にとっては「まんがはじめて物語」の2代目お姉さんが懐かしい(初代お姉さんはうつみ宮土理だが、見ていなかったのか、覚えていない)。「クルクルバビンチョ、パペッピポ、ヒヤヒヤドキッチョの…モーグタン!」と叫んでピョンと飛ぶと、モグタンと一緒に過去へタイムスリップするのである。
しかし、キャリアが長いくせに相変わらずの下手芝居に、苦笑いの週であった。

さて岡まゆみは前回登場時は寺の住職夫人だったのだが、その正体は銀座の高級ブティックオーナーだった。住職夫人を装わせたのは戸次重幸だが、その狙いはよくわからない。
岡はダンス教室のパトロンらしいのだが、無理のある設定である。戸次から毎月金をもらうことにより、今の生活を保証されているようで、どのくらいの金かはわからないが、車代といって渡す金額が100万円だから、その数倍は毎月もらっているはずだ。
自分の身が可愛いからと「ゴシュは死んだ」の意味は話せない、と断った岡は、ゴーシュがセロ弾きだということまでわかっているのに、「御田園陽一は死んだ」という謎かけの意味がいつまでたってもわからない姜暢雄の頭の悪さに驚嘆していた。 岡は御田園家の家政婦だったから、戸次重幸が替え玉であることを最初から知っていたわけで、実際に龍村礼二の三回忌席上で戸次重幸を決定的に追いつめたのは岡だった。 戸次重幸にとって危険なのは、モーロー状態の入山法子より、この岡まゆみのほうが数倍危険な存在だったはずなのだから、デヴァルト・メンタルクリニックに監禁すべきだった。
一方、今週は、龍村圭以と安原霧子がなぜそんなに似ているのかという謎がクローズアップされる。これはたぶん双子なのだろう。
すると、龍村(日浦)稀世と、岡まゆみのどちらが双子を生んだのか。この答えは、戸次重幸も知らないようだ。
おそらく登場人物の中で真相を知るのは、レツゴー三匹のじゅんちゃんだけである。
先週、京野ことみは、自分が日浦姓を名乗っている理由を、稀世が前夫を忘れていないからだと言っていた。稀世が双子を生んだとすると、その片割れを岡まゆみに預けた理由はそこにあるのかもしれない。
預かった娘を金に目がくらんであっさり精神病院に入れてしまった岡は、その場合、とんでもない恩知らずの人非人だということになる。
死んだほうの入山法子が龍村ファームに埋められてる(髪と爪だけだが)と知って、ほっとしたような顔をしていたのは、元々それが稀世の娘であるからということなのかもしれない。
岡まゆみは、20年前に龍村ファームを訪ねたときのことを回想して、娘が母親以上に稀世を慕っているのを見て妬ましかったと告白している。実の母親はそんなことを思ったりはしないものである。

一方、二人の入山法子を生んだのが岡まゆみである可能性もまだ棄てきれない。
稀世の出産は東京で行われ、龍村ファームの人間は出産を見ていないのである。この場合、では二人の入山法子の父親は誰かということになる。岡が死んだ礼二(白塗りじゃないほうの榎木孝明)の浮気相手だった、というような経緯だとすると、伏線も何もない突飛な結末になってしまう。
そうでない誰かだとすると、龍村圭以はもともと龍村家の血を引く人間ではなかったことになってしまい、その場合、わざわざ石井智也の血を使ってまでDNA鑑定を妨害した榎木孝明は、その事実を知らなかったことになる。
今週のクライマックスは、この榎木孝明であって、ついに部屋を出たばかりか、ヒゲも剃り、上下白のスーツという出で立ちであった。しかし顔は白塗りのままである。
この白塗りについて、今まで誰かが説明したことはないと思うが、一体あれは何を意味するのだろうか。

戸次重幸が推進しているサラマンダー・プロジェクトの狙いは、発電パネルの材料であるレアメタルを独占することにあるらしい。戸次は「このプロジェクトに一口乗りませんか、決して損はさせません」と呑気に中田喜子を誘っていたが、中田は全然興味がないようで、「ええ、そんなお金があればね」とかわしていた。
この女の目的はいずこにあるのかは、非常にわかりにくい。

今週明らかになったことには、中田は田島ゆみかを自分の秘書にしていた。戸次重幸は金をけちって田島を精神病院送りにしようとしたが、田島は何者かに電話で助けを求め、デヴァルト・メンタルクリニック院長の魔の手から逃れていた。電話先は中田喜子だったのである。 田島ゆみかはまだ戸次との養子縁組を保持したままなので、中田は龍村家の財産相続に対する切り札を持っていることになる。 中田はまた、大沢樹生に探らせて、姜暢雄たちのアパートの場所も正確に把握しており、岡まゆみをそこへ送り込んだ。アパートの場所を知りながら何もしていなかった中田は、自分からは動こうとしない悪女なのである。 戸次とつかず離れずの関係を保っているのは、戸次を陥れるためではなく、追いつめられ、味方を失った戸次に救いの手を差し伸べたいからだった。これはかなり歪んだ心性だと思うのだが、今週のクライマックスで、ついに御田園陽一ではないことを暴かれてしまった戸次は、中田の車で逃走することになり、中田喜子は夢を叶えることができた。 大沢樹生もまた、弁護士会を追い出されそうになったのを中田に助けられたのだという。そんな弁護士を雇っている戸次も相当鼻の効かない人間だろう。

大沢は、しかし、じつは影山という名が示す通り、本当の悪魔、ファウストを迷わせたメフィストフェレスなのではないかと思う。大沢樹生の最大の関心は京野ことみにあり、京野のうちに隠れている嫉妬心などを増幅させたいのである。黒い企みを腹に隠したまま笑顔を浮かべる人種は扱いやすい、と大沢は京野にうそぶき、怒りや不満を心の奥深くに溜め込む連中のほうが怖い、ある日突然マグマのように噴火して、周りの人間を焼き尽くすから、と話していたが、言うまでもなく、京野ことみがそうなることを期待しているのである。

姜暢雄は、このドラマが始まって以来、はじめて能動的に行動した。
まず、戸次重幸のマンションで入山法子のマントをかぶって現れた。マントはすぐに戸次がめくって、入山ではないことを看破してしまったので、なぜ姜がわざわざそんな真似をしたのかは不明である。
姜は膝をついて、他のことはすべてなかったことにするから、入山法子が龍村圭以であることを認めろと頼んだが、戸次は苦しそうに断っていた。
姜は、自分は「ゴシュは死んだ」の意味を知っているんだぞと脅したが、よろしい、裁判でも何でもしようじゃないかと言い返されてしまう。この「裁判」というのは、アパートにいる入山が圭以かどうかという裁判のことである。つまりこの時点では、戸次は「ゴシュは死んだ」という意味を知っているという姜の言葉を信じてはいなかったのだろう。
姜は、龍村礼二の三回忌を企画し、鶴田忍や矢島健一まで巻き込んで、戸次を追いつめるクライマックスの舞台を用意したのだが、これまでのボンクラぶりを考えると、誰かが知恵をつけたとしか思えない。

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