石田ひかりさん(1972年5月25日生)はテンカラット所属の女優。夫はNHK職員(プロデューサー、演出家)の訓覇圭。姉は女優の石田ゆり子。
石田さんの演技は、1990年代前半の「まっすぐで透明感のあるヒロイン」から、40代以降に生活者としての厚みを帯びた「腹の据わった女性」へ、さらに50代では表と裏を併せ持つ複雑さへと段階的に変化してきた。ここでは、2015年の2時間ドラマ『邪魔〜主婦が堕ちた破滅の道』(43歳)を、その転換点として位置づけたい。
10代後半から20代前半の代表作は大林宣彦監督『ふたり』(1991年)や朝ドラ『ひらり』(1992年)、『あすなろ白書』(1993年)で、彼女は「ドジで純粋」「ひたむきな」少女や若い女性を演じて国民的人気を得た。この時期の魅力は清純さと素直さにあり、日本アカデミー賞新人賞などを独占した新人期の評価もそこに集中している。2001年の結婚・出産後は活動を抑え、家庭を優先した時期が長く、「生活者」としての経験が後の演技の土台になったとおぼしい。
上記の『邪魔』では、平凡な主婦が家族を守るために労働争議に巻き込まれ、孤立し、最終的に大胆で倫理的に危うい決断を下す役を演じ、従来の真っ直ぐさに「覚悟」や「覚悟を決めた後の静かな強さ」が加わった。2017年には14年ぶりの連続ドラマ『屋根裏の恋人』の主演を務め、妖艶さと狂気を滲ませる役に挑戦した。以降は母親役だけでなく、不機嫌で怒りを抑えきれない女性(映画『ルノワール』)や、表では普通の主婦、裏では暴走する「鬼女」といった二面性のある役(「鬼女の棲む家」)などを演じている。
こうした変化の要因は、年齢とともに得た「人間への洞察」と、家庭生活で培ったリアリティだと指摘されている。一方で、イメージとかけ離れた荒っぽい口調の役では「違和感がある」との声も出ることがあり、技術の深化と観る側の期待値にギャップがあるところが興味深い。
全体として、清純派ヒロインから「普通の女性が持つ危うさや決意」を自然に体現できる女優へと移行した軌跡が、2015年頃を境に明確になったと言える。同世代(1972年生まれ)の女優は、1990年代前半に「清純派・美少女ヒロイン」として世に出た世代が多く、石田ひかりさんはその中で朝ドラとトレンディドラマでいち早く国民的人気を獲得した一方、結婚・出産後の活動ペースの落差が他の同年代より大きかったと言える。
同年生まれの常盤貴子、寺島しのぶ、松雪泰子、稲森いずみあたりと比較してみると、その独自性を感じやすくなる。

