ナ・ホンジン監督の長編デビュー作品。2004年に韓国で起こったユ・ヨンチョルによる連続殺人事件をベースとしている。また、同年イラクで起こった人質事件の影響も受けているとのこと。韓国では観客動員数が500万人を超えるヒット作となり、2008年大鐘賞(韓国のアカデミー賞)主要6部門の他、大韓民国映画大賞を受賞した。第61回カンヌ国際映画祭の特別招待作品である。ワーナー・ブラザース映画とレオナルド・ディカプリオがリメイク権を獲得している。
チェイサーのあらすじ
元刑事のオム・ジュンホ( キム・ユンソク)が経営するデリバリーヘルスで、ヘルス嬢が次々と失踪するという事件が起きる。ジュンホは彼女たちに渡した高額な手付金を取り戻すため捜索を開始する。 やがて、出勤したキム・ミジン( ソ・ヨンヒ)の客の電話番号が、それまでに失踪した嬢たちが最後に仕事をした相手と一致していることが発覚。ジュンホは単身、男の自宅へ向かっているというミジンのもとへ急ぐ。
チェイサーの感想
2000年代韓国の3大クライムスリラーは「 殺人の追憶」(03)、「 オールドボーイ」(03)、そして08年の本作だそうで、韓国に疎い自分は今頃になって3本を見終えたことになる(「オールドボーイ」は公開時に見たが、「殺人の追憶」さえ見たのは昨年)。おかげで ナ・ホンジン 作品もこれから追いかけることになるだろう。
それにしても件の3本に通底している根強い怒りは、この時代特有の韓国の気分から来ているのだろうか。本作は実際の連続殺人事件を題材にしているのだが、ソウル警察の想像を絶する無能さは映画通りだったという。
本作はこの監督の長編映画デビュー作とのことだが、序盤のテンポの良さがすばらしく、思わず引き込まれて最後まで目が離せなくなる。そして ハ・ジョンウの何気ないサイコキラーぶりは長く記憶に残りそうだ。
さらに韓国では国民的妹と言われる キム・ユジュン(今はすでに24歳)の愛らしさは特筆に値する。俗欲にまみれ、ハ・ジョンウに「クズ」と携帯に登録されるデリヘル経営者の キム・ユンソクが追跡者として奮起することになるのもむべなるかな、である(ハードボイルドの常道だが)。
ディカプリオがリメイク権を買っているがいまだにハリウッド版は実現していない。インタビューでナ・ホンジンは「(ストーリーを生かすのは)たぶん無理だろう」と答えているが、アメリカではやはりあのバッドエンドは難しいのではと思う。
チェイサーのキャスト
オム・ジュンホ: キム・ユンソク
チ・ヨンミン:ハ・ジョンウ
キム・ミジン:ソ・ヨンヒ
ユ・ウンジ:キム・ユジョン
オジョ:ク・ボヌン
イ・ギル刑事:チョン・インギ
オ・ウンシル刑事:パク・ヒョジュ
機動捜査隊長:チェ・ジョンウ
機捜隊班長:ミン・ギョンジン
カン刑事:ソン・ヨセフ
パク刑事:ハ・ソングァン
チェ刑事:チョ・ドクチェ
キム刑事:ホン・ジェソン
ジマン刑事:パク・チマン
キョンソク刑事:ク・テジン
担当検事:チョン・ギソプ
精神分析官:イ・ジョング
ソンヒ:オ・ウジョン
ヒジョン:ユ・ジヨン
ジヨン:キム・ソニョン
クォン・ヘガプ:キム・ドッキ
クォン・ヘガプの妻:ソン・ヒスン
借金男:チョ・ソギョン
ヨンミンの姉:キム・ヨンソン
ヨンミンの義兄:パク・チンソン
ピョンス: キム・ビョンス
ソウル市長:チョン・ドンギュ
チェイサーのスタッフ
監督: ナ・ホンジン
プロデューサー:キム・スジン、ユン・インボム
エグゼクティブ・プロデューサー:チョン・ウィソク、キム・ソニョン、チョン・スング
脚本:ナ・ホンジン
撮影:イ・ソンジェ
音楽:キム・ジュンソク、チェ・ヨンナク
美術:イ・ミンボク
衣装:チェ・ギョンファ
編集:キム・ソンミン
録音:キム・シニョン
照明:イ・チョロ
ライン・プロデューサー:チェ・ムンス