『穴』ってどんな映画?
夜の東京にうごめく、人間の果てしない物欲と嘘の迷宮。ある莫大な「遺産」を巡り、血の繋がらない赤の他人たちが偽りの身分を騙り合い、二転三転するだまし合いの渦へと身を投じていく。巨匠市川崑監督が、妻・和田夏十との共同ペンネーム久里子亭の脚本のもと、モノクロームの硬質な映像美で描き出した大映製ミステリー。誰が本物で誰が偽物か、張り詰めた焦燥感が支配する、日本映画の黄金期を飾るブラックコメディの傑作だ。
見どころは、市川崑監督ならではのモダンでカッティングの鋭いテンポ感で展開する、騙し騙されのサスペンス。猿丸警部(菅原謙二)や警部補たち、警官の捜査の手が伸びる中、長子(京マチ子)たちの欲望のゲームが加速し、嘘まみれの現代社会という名の「巨大な穴」の周りで蠢いていく。
モダンジャズのビートが五感を刺激する劇伴のなか、追いつめられた強欲な人間たちが最後に下す選択とは?
京マチ子の圧倒的なファム・ファタール的魅力と、船越英二らの軽妙かつ危うい演技が、市川崑監督のシャープなビジュアルセンスのなかで奇跡の融合を果たした、今なお斬新な本格シニカル・スリラーの最高峰だ。
あらすじ
ある日、自動車会社に勤めるモダンな都会の女性・北長子(京マチ子)は、偶然にも、死んだはずの大富豪が残した時価数億円とも言われる「莫大な隠し資産」の存在を知ってしまう。その資産を狙い、長子の周囲には一癖も二癖もある怪しげな人間たちがじわじわと集まり始める。うだつの上がらないサラリーマンの千木恋介(船越英二)、冷徹な眼差しで裏の顔を隠す白州桂吉(山村聡)ら男たちは、お互いに仕掛けた「嘘」に絡め取られながら、孤立無援のパニックへと追い詰められていく。
キャスト
北長子 - 京マチ子
千木恋介 - 船越英二
白州桂吉 - 山村聡
猿丸警部 - 菅原謙二
鳥飼秋太 - 石井竜一
赤羽スガ - 北林谷栄
六井ふき子 - 川上康子
甘粕左平 - 潮万太郎
大屋編集長 - 見明凡太朗
六井外次 - 春本富士夫
中村武子 - 日高澄子
青年作家 - 石原慎太郎
円タクの運転手 - 浜村純
極楽荘の肥った女 - 岡村文子
中年男 - 此木透
赤帽 - 佐々木正時
夜の女A - 目黒幸子
夜の女B - 新宮信子
警部補A - 伊東光一
警部補B - 杉森麟
警官 - 夏木章
返本を運ぶ少年 - 蔵方しげる
感想
市川崑の、というか京マチ子の「穴」を見た。昭和30年代前半の洒脱なアクション映画(?)である。<
石原慎太郎が新人類ふうの小説家として出演し、歌まで披露しているということで有名な映画らしいが、もちろんそれは脇道で、劇中で様々にコスチュームを替えるグラマラスな京マチ子と、スタイリッシュな演出が楽しい。
スピーディな展開を維持するために、俳優は全員とんでもない早口で科白をまくし立てている。まともに撮ったら 103分ではとてもおさまらりきらなかったのではないか。
甘いマスクの悪役として登場する船越英二はなんだかひどく虚無的に見えた。昔のハンサムって、どこかうつろだ。

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