愛はステロイド

クリステン・スチュワート(愛はステロイド)
クリステン・スチュワート(愛はステロイド)
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『愛はステロイド』(原題: Love Lies Bleeding)は、2024年のアメリカ・イギリスのロマンティック・スリラー映画。監督はローズ・グラス、脚本はグラス監督とベロニカ・トフィウスカ。出演はクリステン・スチュワートケイティ・オブライアンなど。

『愛はステロイド』ってどんな映画?

歪んだ愛、狂気の筋肉、そして暴力の連鎖——。
新鋭ローズ・グラスA24が放つ、ネオ・ノワール・ロマンティック・サスペンス!

『セイント・モード/狂信』で絶賛を浴びた英才ローズ・グラス監督が、気鋭のスタジオA24とタッグを組んだ暴力と激情のアクション・ノワール。
主演のクリステン・スチュワートと実生活でも格闘技歴を持つケイティ・オブライアンの二人が見せる強烈な化学反応、そしてエド・ハリスデイヴ・フランコら豪華共演陣が醸し出す怪演が光る。1980年代末のニューメキシコを舞台に、愛する者を守るための暴力が暴走していくネオ・ノワールの最高峰。

キャスト

ルー(ジムの管理責任者) - クリステン・スチュワート
ジャッキー(オクラホマから来たボディビルダー) - ケイティ・オブライアン
ベス(ルーの姉) - ジェナ・マローン
デイジー(ルーに恋する女) - アンナ・バリシニコフ
JJ(ベスの夫) - デイヴ・フランコ
ルー・シニア(ルーとベスの父親) - エド・ハリス

感想

主役のクリステン・スチュワートは「パニック・ルーム」でジョディの娘を演じた子役(当時11歳)で、いまやクィア・アイコンとして独自の位置を占める俳優と言える。

始まってすぐ思い出したのは、「バウンド」(1996年、ウォシャウスキー兄弟[当時])のハンサムなレズビアン、配管工のコーキー(ジーナ・ガーション)だ。これはただ似ているというのではなく、クィアカルチャーの美学の系譜(ダイク/ブッチの系譜)が意識されているということだろう。すっぴんに近いミニマムなメイク、短く無造作な髪は、「男に消費される美しさ」ではなく、自身のセクシュアリティやリアルを投影した、女の視線のために構築されたクィア特有の美学と言える。

「バウンド』では、男勝りなコーキーは、超女性的なヴァイオレット(ジェニファー・ティリー)と対比されていたが、本作でダークで陰気なブッチ寄りのルー(クリステン)と対比をなすのは、筋肉質でありながらフェミニンなジャッキー(ケイティ・オブライアン)である。

ありきたりなブッチ×ファムの構図から始まった二人の関係は、ルーが差し出したステロイド注射によってねじれていく。ジャッキーはハイパーな強者へと爆発的に筋肉を拡張させ、その張ちきれんばかりの暴力性に戸惑うルーは、一方的に事態の収拾に追われる保護者となる。いわば受け身の愛である。

ルーの父親(エド・ハリス)は、陰で町を支配する有害な権力者であり、家父長的権威そのものだ。その縮小版ともいえるのが、姉ベスに暴力を振るう夫JJ(デイヴ・フランコ)である。ルーが町を離れられないのは、そんな姉を自己犠牲的に守るためだった。

JJに痛めつけられた姉を見て、ルーは「殺してやりたい」と怒りをたぎらせる。その怒りを受け取ったジャッキーは、ステロイドによって増幅された力に任せ、実際にJJを殴り殺してしまう。ルーの願望をジャッキーが肉体によって実行する――それは暴力による、歪んだ愛の証明だった。

その暴力が行き着く先に、ジャッキーの巨大化という信じがたいクライマックスが観客の度肝を抜く。このシーンは『妖怪巨大女』(原題 Attack of the 50 Foot Woman、1958年)を思わせる。同作では、夫に裏切られた女性の怒りが文字どおり巨大化し、家父長制への復讐として町を襲ったが、本作ではその巨大な女性が父親を倒し、傷ついた恋人を掌に載せて救い出すのである。『バウンド』から約30年を経て、クィアな欲望と女性の肉体が、男の支配する世界を物理的に踏み越えるファンタジーへ到達した瞬間と言える。

だが、この解放は手放しで祝えるものではない。ルーは姉に対して、なぜ暴力を振るう男と別れないのかと繰り返し責めていた。ところが、ステロイドによって怪物化し、人を殺したジャッキーとの関係もまた、愛と暴力を切り離せないものになっていく。しかもラストシーンでは、後始末に追われていたはずのルー自身がデイジーを絞殺し、その遺体を捨てて一服している。

二人は父親の支配から逃げ出したのではない。その暴力を自分たちの愛の内部へ持ち込みながら、町を去るのである。巨大化がクィアな解放の夢なら、その直後に置かれた小さく生々しい殺人は、夢から覚めた二人が抱えていく現実なのだ。

『愛はステロイド』を観るには?

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『愛はステロイド』作品情報

監督 – ローズ・グラス
脚本 – ローズ・グラス、ベロニカ・トフィウスカ
製作 – アンドレア・コーンウェル、オリバー・カスマン
音楽 – クリント・マンセル
撮影 – ベン・フォーデスマン
編集 – マーク・タウンズ
製作会社 – A24、Film4、Escape Plan、Lobo Films
配給 – アメリカ: A24、イギリス: ライオンズゲート、日本: ハピネットファントム・スタジオ(提供:ハピネットファントム・スタジオ/東映エージエンシー/ムービーウォーカー)
公開 – アメリカ: 2024年1月20日(サンダンス映画祭)・2024年3月8日、イギリス: 2024年5月3日、日本: 2025年8月29日
上映時間 – 104分

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