高級家具を積み上げて天窓へのタワーを築く行為は、「Energy is the only life, and is from the body. Energy is Eternal Delight.」(エネルギー=命)、つまり生き延びるための行為がサバイバルを超えて「創造」へと転化することを意味する。デフォーの全身的エネルギーが“永遠の喜び”の瞬間に到達するのである。タワーは単なる脱出装置ではなく、宗教的な「祭壇」「天への梯子」のようでもある。「破壊と創造の統合」、「肉体的行為から精神的超越へ」が視覚的に実現する。
その過程で、デフォーは墜落して脚に怪我を負う。これは神の使いと格闘して脚を負傷する旧約聖書のヤコブを思わせ、上昇=超越を阻む制約(精神は天へ向かおうとするが、肉体は地に縛られている)の表現である(「対立なきところに進歩なし」に直結)。脚を引きずりながら絵を描き、タワーを築き続ける姿は、ブレイク自身を表す「殉教的な芸術家像」(エネルギーは永遠の喜び)そのもののように見える。脚の怪我は、肉体的限界が超越を阻むと同時に、創作を殉教的行為に変える装置なのだ。
掃除婦ジャスミンの意味
部屋には、このアパートの主要施設をモニターするTVが設置されており、デフォーはそこに映る女性清掃員(エリカ・シュタイクという聞いたこともない女優が演じる)をジャスミンと名付け、孤独を紛らわすよすがとする。
ジャスミンは外の世界から室内にアクセスできる数少ない存在だが、デフォーの声は扉の向こう側には決して届かない。救いがすぐそばにあるのに届かない、つまり「救済を約束しない救済者」なのだ。
「芸術家/創造者」として創造に傾倒せざるを得ないデフォーは、しかし豪奢な牢獄につながれた囚人だが、労働者階級のジャスミンもまた、ペントハウスの清掃という富の象徴に関わりながらも、その恩恵にはあずかれない存在である。ともに富の世界を支えるが、そこに救済はないという社会的メタファーでもあるだろう。
インサイドを観るには?
インサイド 作品情報
脚本 – ベン・ホプキンス
制作 – ギオルゴス・カルナヴァス、マルコス・カンティス、ドリス・フリポ
撮影 – スティーブ・アニス
編集 – ランビス・ハラランビディス
音楽 – フレデリック・ファン・デ・ムールテル
制作 – ヘルティック、シワゴ・フィルム、プライベートビュー
上映時間 – 105分




