女の中の二つの顔

余貴美子(女の中の二つの顔)
余貴美子(女の中の二つの顔)

2004年8月25日の20:54 – 22:48に、テレビ東京系列の「女と愛とミステリー」枠で放送された作品。原作はレバノン系イギリス人作家エドワード・アタイヤのミステリ小説『細い線』(The Thin Line)。日本では1966年に『女の中にいる他人』として映画化されている。ドラマは、原作小説での「主人公の妻」に焦点を当てたオリジナルストーリーとなっている。

タイトルが似ていると思ったら、成瀬巳喜男の「女の中にいる他人」と同じ、乱歩が激賞したというアタイヤの「細い線」が原作だった。

江戸組み紐で女の首を絞める趣味がある本田博太郎は、加減を間違えて浮気相手の女資産家杉本彩を殺してしまう。凶器の組み紐は、倒れた母親(岸田今日子)に代わり、妻の余貴美子が営む江戸組み紐教室の教材である。
当日の杉本とのデートを目撃されたり(見たのは余だが)、罪の意識に苛まれて自殺を試み、妻に告白するも、日常の崩壊を恐れた妻が夫を毒殺して自殺を止めたりする流れは、原作通り。
違うのは、余の弟が6年前に車で崖から落ちて死亡しており、生き延びた同乗者が綾乃という役名の杉本彩で、その後、村上秀明を婿養子にしたという設定である。
弟は事故の直前に「綾乃が姉さんと話をしたがっている」と電話をしたのだが、実は綾乃ではなく早野(村上の旧姓)だったというトリックがあり、高校時代から姉弟を逆恨みしていた村上が弟の車のブレーキに細工し、本田が妻を殺すよう仕向け、さらに青酸カリをホンダに与えた黒幕だったことがだんだん判明する。

西岡琢也のプロットはずいぶん練られたものだったが、余貴美子を中心にするには感情の振り幅が大きすぎ、2時間ドラマにはオーバースペックだったと思う。
乱歩好みのプロバビリティの犯罪だが、尺からすると、原作通り小心者の夫の苦悩のくだりが足枷になってしまう。

鎌倉の豪邸に住み、ガウン姿で趣味のスポーツカー改造に励む村上弘明は、最初から胡散臭いのだが、それに惹かれたりもする当時47歳の余貴美子は、中盤あたりから驚くほどの魅力を発揮しており、最後まで惹き込まれる。
タイトル通り、みごとな「顔」であった。監督は最近その名を聞かない中原俊

キャスト

滝川絵美子 – 余貴美子
佐島雅夫(教師) – 村上弘明
杉本孝介(絵美子の弟)- 山中聡
滝川誠一郎(絵美子の夫) – 本田博太郎
滝川富美(誠一郎の母) – 岸田今日子
佐島彩乃(雅夫の妻・孝介の元婚約者) – 杉本彩
波多野守(刑事) – でんでん
柴田祐作(刑事) – 朝倉伸二
平沢東六(誠一郎の会社に出入りしている経理コンサルタント) – 甲本雅裕
平沢トミ子(平沢東六の妻) – 洞口依子
滝川由美(絵美子の子)- 中島玲奈
滝川慎吾(絵美子の子)- 小瀬理久真
小橋エリ(週刊誌記者)- 宮沢美保
ニュースのアナウンサー – 龍田梨恵
松本享子、正木佐和、柿丸美智恵、林京介、奥田由美、黒木朋子、当麻りん、高畑雄亮、大塚太心、広保大介、小谷まり

スタッフ

監督 – 中原俊
原作 – エドワード・アタイヤ『細い線』(The Thin Line)
脚本 – 西岡琢也
撮影 – 上野彰吾
美術 – 稲垣尚夫
演出応援 – 桑原昌英
カースタント – カースタントTAKA
ビジュアルエフェクト – 日本エフェクトセンター
技術協力 – 映広、日活
プロデューサー – 岡部紳二(TX)、田中浩三(松竹)、升本由喜子(梟雄舎)、田辺昌一(梟雄舎)
企画・制作協力 – 梟雄舎

タイトルとURLをコピーしました