黒い樹海

松本清張の長編推理小説(婦人倶楽部1958年10月号-1960年6月号連載、1960年6月講談社刊)を原作に、「松本清張スペシャル・黒い樹海」のタイトルで1997年11月29日、テレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」枠(21:00-22:51)にて放映。視聴率20.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。姉を喪った女性記者が、バス事故に端を発した連続殺人事件の謎を追跡するサスペンス・ミステリー。数ある松本清張の作品の中でも“旅情ミステリー”の傑作と評される。本作のバス事故の発生は石川県の設定。他に4回テレビドラマ化され、1960年には大映で映画化されている。

黒い樹海の原作

松本清張「黒い樹海」 (講談社文庫)

松本清張「黒い樹海」 (講談社文庫)

黒い樹海の原作のあらすじ

仙台へ旅に出たはずの笹原信子が、浜松市付近のバス事故で死亡した。姉は自分の知らない誰かとバスに乗っていて、その人は事故発生後に逃げたのではないか? 信子の妹・祥子は姉の会社に転職し、仕事上の交友関係からその人物を突き止めようとする。
当初独りだった祥子の調査にも協力者が現われ、頑なだった祥子の心の壁も徐々に開かれていくが、先回りする犯人によって、次々に周辺人物が殺されてしまう。

黒い樹海の感想

これまた何度も映像化されている清張原作(1960年に映画化、ドラマ化は62年、86年、97年、05年、16年)。本作はそのうちの97年版で、ヒロインは水野真紀、犯人は火野正平濱田岳にそっくり)と神田正輝の二人組である。
昨日投稿した「火と汐」も神田正輝が歪んだ夫を演じていたが、90年代にほとんどテレビを見なかった私としては、神田の活躍ぶりとはこういうものだったのかと思った(しかしこれでは神田が出てくるだけで犯人だとわかってしまうのではないか?)。それにしても、犯人が二人組というのは清張作品では異色な気がする(連続殺人事件というのも)。

妹に告げた行先とまるで異なる場所で事故死する余貴美子(女性誌の編集長)の秘密がモチーフになっており、それは「火と汐」も同じだった。市井でつつましく暮らす女性の秘密を三面記事的な事件として描く清張の作品群の後、テレビドラマは、69年に始まる「火曜日の女」シリーズ(後期は「土曜日の女」になり、74年まで5年間続いた)などにおいて、アイリッシュボワロー=ナルスジャックを下敷きに、ミステリアスなヒロインを描くジャンルを確立させる。しかし、時代に即して路線を変えていく大映ドラマなどを尻目に、女=秘密の系譜は火サスなど2時間ドラマに引き継がれたものの、今は絶滅状態と言える。女優の魅力もその分失われてしまった感がある。

黒い樹海のキャスト

笠原祥子(文啓出版の総務部に勤務) – 水野真紀
吉井栄二(「週刊文啓」編集部員) – 鶴見辰吾
笠原信子(祥子の姉で雑誌「ルミエール」編集長) – 余貴美子
町田知枝(「ルミエール」副編集長) – あめくみちこ
竹尾刑事 – 石丸謙二郎
斉藤常子(レストランの店員) – 春木みさよ
愛子(祥子の同僚) – 阿部朋子
遠山ミドリ(ピアニストで妹尾の婚約者) – 葉山レイコ
部下 – 渡辺成紀
理恵(常子の友人) – 西田もも子
浅井刑事(警視庁の刑事) – 井上博一
祥子の上司 – 水島涼太
医師 – 石橋雅史
同僚 – 塙恵介
鶴巻完造(画家) – 水橋和夫
佐敷泊雲(生け花の家元) – 横尾三郎
高木利彦(建築家) – 加島潤
妹尾郁夫(翻訳家) – 火野正平
西脇満太郎(大学教授で精神科医) – 神田正輝
小森英明松田朗川名莉子松富まみ村野友美

黒い樹海のスタッフ

脚本 – 小坂一雄(レオナ)、高橋浩太郎(テレビ朝日)、塙淳一(テレビ朝日)、林悦子(霧企画)
助監督 – 寺山彰男
選曲 – 山川繁
撮影協力 – 粟津温泉辻のや花乃庄、日本エアシステム、拓殖大学、宇部興産、三富村、京王帝都電鉄
技術協力 – 映広
音楽協力 – テレビ朝日ミュージック
制作 – テレビ朝日、レオナ、霧企画

タイトルとURLをコピーしました