『キャロル』ってどんな映画?
ひと目で、心を奪われた——。
1950年代ニューヨーク、禁断の時代の中で惹かれ合う二人の女性の美しく切ない愛の物語!
『太陽がいっぱい』『リプリー』で知られるミステリー女王パトリシア・ハイスミスが別名義で発表した小説『The Price of Salt』を、名匠トッド・ヘインズ監督が映画化したラブストーリーの金字塔。
カンヌ国際映画祭でルーニー・マーラが女優賞を受賞したほか、アカデミー賞でも主演女優賞(ケイト・ブランシェット)や助演女優賞(ルーニー・マーラ)を含む6部門にノミネート。スーパー16mmフィルムで撮影されたクラシカルでエレガントな映像美と、抑えつつも熱量があふれ出す演技が絶賛された不朽の名作。
ストーリー概要
キャスト
キャロル・エアード(人妻) - ケイト・ブランシェット
テレーズ・ベリベット(デパートの売り子) - ルーニー・マーラ
アビー・ゲルハルト(キャロルの親友) - サラ・ポールソン
ハージ・エアード(キャロルの夫) - カイル・チャンドラー
リチャード(テレーズのボーイフレンド) - ジェイク・レイシー
トミー(セールスマン) - コーリー・マイケル・スミス
ダニー(ニューヨーク・タイムズの記者) - ジョン・マガロ
ジュヌヴィエーヴ・キャントレル - キャリー・ブラウンスタイン
感想
本作はひとつのメロドラマと言えるが、そこにこめられた思いをめぐる「裏の物語」を紹介したい。
本作の原作者パトリシア・ハイスミスは1950年代に執筆活動を始めたが、自らがレズビアンであることを自覚していた(そして当時の社会ではそれを公表することは社会的破滅を意味した)。そんな27歳の彼女が、ニューヨークのブルーミングデールズでクリスマスシーズンの臨時の売り子をしていたある日、毛皮のコートをまとった、息をのむほど美しい金髪女性が娘のプレゼントを買いに現れたという。目眩を覚えるほど興奮したパトリシアは、その夜、取り憑かれたように物語の構想を書き始めた。そして小説を書き上げた後には、記憶していた伝票の住所を頼りに、わざわざニュージャージーの女性の家を見に行っている(のちのハイスミス作品を思わせる「見つめる/見つめられるサスペンス」が見てとれるエピソードである)。
この小説(『キャロル』)は1952年に『The Price of Salt』というタイトルで発表される。当時、同性愛の主人公は、死ぬか、狂うか、異性愛に戻るというバッドエンドによって「逸脱」の代償を払わされるのが常だったが(『噂の二人』が悲劇的な結末を迎えざるを得なかったことと似ている)、ハイスミスは、「自立した女性二人が愛を貫く」というハッピーエンドを選んだ。
処女作『見知らぬ乗客』を出版した出版社は本作を受け入れず、別の出版社から出すことになり、彼女は「レズビアン小説の作家」と規定されることを恐れて「クレア・モーガン」という別名で出版する。しかし本は100万部以上を売り上げ、同性愛を描いた小説としては異例の支持を集め、多くの隠れたクィア女性たちに希望の光を与えることになる。ハイスミスが自分の著作だと公に認め、『キャロル』として出版し直したのは、それから38年後の1990年のことだった。
今では、ブルーミングデールズを訪れた毛皮の女性はキャスリーン・ウィギンズ・ゼンという名で、ニュージャージー郊外に暮らす裕福な実業家の妻で2児の母親だったことが知られている。絵に描いたような幸せで美しい中流階級以上の母親・妻と言える女性だったが、じつは深刻なアルコール依存症と、激しい鬱病を患っており、1951年に自宅のガレージに停めた車の中で自ら命を絶った。ハイスミスはこの事実を知らず、「あの時の美しい人」の幻影を胸に抱いたまま小説を書き進めていたのである。
そして『キャロル』には、パトリシアと実際に恋愛関係にあったバージニア・ケント・キャサウッドというもう一人のモデルがいる。この女性は夫が雇った探偵に別の女性との関係を録音され、それを離婚裁判で使われて娘の親権を失っており、この挿話はそのまま『キャロル』に取り込まれている。
ハイスミスは、自作の中のキャロルを死なせず、「女が女を愛し、それでも生き続ける」という結末を選んだ。現実の「キャロル」は1951年に死んだが、それを知らなかったハイスミスが1952年に世に送り出した小説のキャロルは、生きることを選んだのである。
『キャロル』のハッピーエンドには、そんな歴史が隠されている。
ルーニー・マーラ(キャロル)
『キャロル』のさらなる考察はこちら
『キャロル』を観るには?
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『キャロル』作品情報
監督 – トッド・ヘインズ
脚本 – フィリス・ナジー
原作 – パトリシア・ハイスミス『The Price of Salt』
製作 – エリザベス・カールセン、スティーヴン・ウーリー、クリスティン・ヴェイコン
製作総指揮 – ハーヴェイ・ワインスタイン、ボブ・ワインスタイン、テッサ・ロス
音楽 – カーター・バーウェル
撮影 – エドワード・ラックマン
編集 – アフォンソ・ゴンサウヴェス
製作会社 – ワインスタイン・カンパニー、スタジオカナルUK、ハンウェイ・フィルムズ、ダーティー・フィルムズ
ナンバー9・フィルムズ、フィルム4・プロダクションズ、キラー・フィルムズ
配給 – アメリカ:ワインスタイン・カンパニー、イギリス:スタジオカナルUK、日本:ファントム・フィルム
公開 – フランス:2015年5月17日 (CIFF)、アメリカ:2015年11月20日、イギリス:2015年11月27日、日本:2016年2月11日
上映時間 – 118分
『キャロル』の原作
クリスマス、デパートのおもちゃ売り場の店員テレーズは、人妻キャロルと出会い、運命が変わる……サスペンスの女王ハイスミスがおくる、二人の女性の恋の物語。映画化原作ベストセラー。



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