ドラマ2025年のドラマ2020年代のドラマ

しあわせな結婚

4.0
ドラマ
[スポンサーリンク]
『しあわせな結婚』は、2025年7月17日~9月11日にテレビ朝日系「木曜ドラマ」枠で放送。主演は阿部サダヲ。
[スポンサーリンク]

『しあわせな結婚』ってどんなドラマ?

誰もが羨むロマンチックな愛の誓い、その裏に隠された剥き出しの嘘と人間のドス黒いエゴ。『セカンドバージン』『光る君へ』を手がけた大石静が、結婚という人生最大の「契約」に潜む欺瞞とサスペンスを極上のユーモアを交えて描き出した人間ドラマ。ゼネラルプロデューサー中川慎子、プロデューサー田中真由子ら鉄壁の布陣により、お茶の間を釘付けにするスリリングな会話劇だ。

物語の軸となるのは、法律事務所の敏腕代表でありながら私生活ではどこか計算高い男・原田幸太郎(阿部サダヲ)と、高校の非常勤美術教師として地味に暮らす鈴木ネルラ(松たか子)の結婚生活だ。ふたりが繰り広げる、笑顔の裏で火花を散らすような極限の心理戦。一見、凸凹ながらも穏やかな愛を育むかのように見えた2人だったが、ネルラの実家である鈴木家が抱える闇が不穏なミステリーへと転がり落ちていく。

チーフ監督の黒崎博をはじめ、星野和成楢木野礼ら演出陣のシャープなカメラワークが、2人の一瞬の目の泳ぎや表情の変化を活写。ネルラの家族であるデザイナーの弟・レオ(板垣李光人)の繊細な秘密、ゴルフのレッスンプロの風来坊な父・考(岡部たかし)、そして缶詰メーカーの創業社長である祖父・寛(段田安則)が、不穏な愛憎劇を加速させていく。

ネルラの過去にかかわる妖しげな画家・布勢夕人(玉置玲央)の謎の死の理由は? 仮面を被り合った男女が掴み取るのは、本当の愛か、それとも破滅か? 最後まで予測を許さない大人のための極上ミステリーサスペンスである。

[スポンサーリンク]

あらすじ

元検事の弁護士でテレビコメンテーターとしても活躍する原田幸太郎は番組収録中に突然倒れて何とか一命をとりとめ、病院のエレベーターで美術教師の鈴木ネルラと出会って一目惚れ。退院日を知らせるメールを送り迎えに現れたネルラは、大胆にも幸太郎を自宅へと誘い、50年間独身主義を貫いてきた幸太郎はそのままネルラと電撃結婚。ネルラの父である寛、叔父の考、弟のレオら鈴木家との慣れない親族付き合いや、一風変わったネルラの言動に戸惑いつつも、新婚生活を満喫していた。
ある日、食事の約束にネルラが現れず、心配して探しに出た幸太郎が目にしたのは、見知らぬ若い男と車に乗る妻の姿だった。「何か困っていることがあれば言ってほしい」と言う幸太郎に「今は何も言えない」とネルラは口を閉ざす。ネルラと共にいた若い男は警視庁捜査一課の刑事・黒川で、15年前に発生した若手画家不審死事件を追っており、事件の再捜査が開始され、ネルラはその被疑者であることがわかる。

キャスト

原田幸太郎(法律事務所代表)- 阿部サダヲ
鈴木ネルラ(高校の非常勤美術教師) – 松たか子
■鈴木家
鈴木レオ(デザイナー兼スタイリスト) – 板垣李光人(幼少期:岩川晴)
鈴木考(ゴルフのレッスンプロ) – 岡部たかし
鈴木寛(缶詰メーカー創業社長) – 段田安則
■原田こうたろう法律事務所
今泉憲資(弁護士) – 金田哲
臼井義男(弁護士) – 小松和重
■ニュースホープ(JPNテレビのワイドショー番組)
梶原拓(MC) – 馬場徹
アナウンサー – 弘中綾香(テレビ朝日アナウンサー)
曽我(ヘアメイク) – 辻凪子
倉澤ちか(総合プロデューサー) – 堀内敬子
■周辺人物
黒川竜司(警視庁捜査一課) – 杉野遥亮
布勢夕人(画家) – 玉置玲央
■白鳳女子大学附属高校の生徒たち
山下朱音 – 泉有乃
中野美海 – 竹下優名
与田星羅 – 原田花埜
門真カレン – 松崎未夢

感想

ドラマ開始にあたって、大石静が、阿部サダヲ演じるヤメ検のキャラが坂元裕二の「スイッチ」(2020)を元にしていると暴露したため、先にそちらを見直し、やはり傑作であることを確認した(「スイッチ」の阿部はまだ検事を辞めていないので、その後弁護士に転身したキャラということなのだろう)。

その阿部サダヲが、コメンテーターで出演中のニュースショー収録中に肺血栓塞栓症で倒れて入院し、病院のエレベーターに乗り合わせた松たか子と電撃的に結婚。そのまま松の一家が暮らすエレベーター付き4階建住宅で暮らすことになる。1階に弟の板垣李光人、2階に夫婦、3階に叔父の岡部たかし、4階に父(段田安則)が住む邸宅である。家族の食事会が毎週催され、それぞれが頻繁に夫婦の部屋に出入りするという、それまでの独身主義とは真逆の生活が始まる。

異常な状況に巻き込まれ、幸福と不安が交錯する阿部サダヲの演技が、サスペンスとしてのドラマのベースとなる。美術修復の専門技術を有し、今は私立高校の美術教師である松は、「18世紀の画家ベルリオーネの『股関節の女』」といったフェイクの美術史情報をぬけぬけと口にするので、明らかに信頼できない存在であることが示される(ただしJPNテレビの堀内敬子Pもその絵の存在を知ることから、ドラマの世界ではフェイクというわけではないらしい)。

判断が保留されたまま、杉野遥亮の刑事が15年前の殺人事件の再捜査を始めるという「本題」に入るが、ドラマはその途端になぜか急につまらなくなる。

事件というのは、松と婚約していた画家(玉置玲央)がアトリエの階段から転落死したというものだが、警察が階上で気絶していた松の「何も覚えていない」という供述を警察が鵜呑みにして事故死として処理したとされており、いかにも雑である(杉野が15年間、松の犯行を疑い続けたのもむべなるかな)。そもそも15年という期間の意味も曖昧だ(一応、警視総監レース絡みで再捜査が始まったという説明はあったが)。

その他、ドラマの中盤は、板垣の下にもう一人死んだ弟がいたとか、板垣が誘拐されて身代金を要求された事件があったとか、豊富すぎる伏線に費やされる。いずれも形式的には説明はされるものの、なんでそんな設定を盛り込んだかは、ちょっとわからない(たとえば何度も描写される松の寝相が、玉置の死体を思わせる姿勢であることも、思わせぶりな「伏線」のひとつ)。

股関節の女と死んだ玉置の姿勢との類似

阿部サダヲが番組で求められるこのポーズも無関係とは思えない

記憶をフラッシュバックさせつつ、杉野が言う通りに自分が犯人なのではないかと松が悩むヒチコック風のサスペンスを経て終盤にいたり、犯人とそれを隠匿した者がようやく明らかになるのだが、あまりに予想の範囲内であることに驚かぬ人はいないだろう。犯人当てのサスペンスが異常なほど軽視されているのである。

松が大きな裁断鋏を手にしたまま阿部と抱き合う最終回のハッピーエンドもまた形式的であり、思わせぶりである。

断裁鋏をもつ松との抱擁


さらに幕切れでは松が意味ありげなイタリア語の寝言を言う(これは「Quando moriremo saremo insieme(死ぬとき、私たちは一緒)」だったそうで、深い意味はないように見える)。

タイトルとURLをコピーしました