『ファイブ・イージー・ピーセス』ってどんな映画?
アメリカン・ニューシネマの時代を象徴する、瑞々しくも虚無感漂うロードムービーの傑作。裕福な音楽一家に生まれながら、その生活を捨てて油田労働者として荒んだ日々を送る男の孤独な魂の彷徨を描く。
『イージー・ライダー』で注目を集めた直後のジャック・ニコルソンは、本作で不動のスター地位を確立した。レストランでの「チキンサラダ・サンドイッチ」の注文シーンに代表される、社会や自分自身に対する制御不能な苛立ちと、ふとした瞬間に見せる繊細な表情の対比が圧巻。
幼い頃に練習したはずのピアノの簡単な練習曲「五つの易しい小品」。しかし、人生という舞台において、主人公ボビーにとっては「普通に生きること」こそが最も困難で複雑だという皮肉。音楽一家というルーツと、泥にまみれた現在地のギャップが物語に陰影を与える。
ボビーの恋人レイを演じたカレン・ブラックの、愚かで献身的ながらも、どこか哀愁漂う演技が胸を打つ。ボビーの「どこにも居場所がない」という絶望的な孤独を際立たせる。
すべてを投げ出して、またどこかへと向かってしまうボビー。何も解決せず、救いもないかもしれないけれど、その「移動」こそが彼の生であるというラストがニューシネマ的な幕引きとなっている。何かに抗いながらも自分の輪郭を掴めずにいる現代人の心に突き刺さる映画。
あらすじ
音楽一家の出身でありながら上流階級の生活を捨てて肉体労働者として無気力に生きるボビーは、妊娠した恋人レイからも、面倒なしがらみからも逃げるように病に倒れた父の待つ実家へと帰郷した。再会した家族や兄の恋人との交流を通じて、彼は自らの空虚さと向き合うが、結局どこにも居場所を見出せない。父への独白で「自分は疫病神だ」と涙を流した彼は、再びすべてを放棄することを決意する……。
キャスト
レイエット(レイ)・ディペスト – カレン・ブラック
エルトン – ビリー・グリーン・ブッシュ
キャサリン・ヴァン・オスト – スーザン・アンスパッチ
パルティータ(ティタ)・デュピー – ロイス・スミス
カール・フィデリオ・デュピー – ラルフ・ウェイト
スパイサー – ジョン・P・ライアン
パーム – ヘレナ・カリアニオテス
テリー – トニー・バジル
トゥインキ― – マリーナ・マクガイア
ベティ – サリー・ストラザース
新鮮。輝きは失われていない。
なつかしい映画、でも内容はおぼえていなかった。たぶん(小学生には)意味がわからなかったのだ。今見てもちがう意味でわからないと思う。ジャック・ニコルソン演じるボビーの苦悩は深甚であるが、現代の同世代にどれだけ共感できるだろうか。
キャメラが新鮮。見るつもりはなかったのに、つい最後まで見てしまった(CSで放映していたのである)。
以下は有名なシークエンス。
ボビー オムレツをポテト抜きで。代わりにトマトをくれ。それからロールパンの代わりにトーストを。
ウエイトレス 「代わり」はできません。
ボビー なんだって? トマトがないのか?
ウエイトレス メニューにあるだけです。2番のチーズ、フライドポテト、ロールパンつきのプレーントマト。
ボビー わかってるよ、でもそれは要らないんだ。
ウエイトレス お決まりになったら呼んでくれますか?
ボビー 待ってくれ、決めたよ。プレーンオムレツ、ポテトぬきだ。あとコーヒーとサイドオーダーでトーストだ。
ウエイトレス 申し訳ありません、トーストのサイドオーダーはありません。イングリッシュマフィンかコーヒーロールならございます。
ボビー トーストのサイドオーダーがないってどういう意味だ? サンドイッチならあるのか?
ウエイトレス 店長を呼びましょうか?
ボビー パンがあるんだろう、それにトースターさえあれば…
ウエイトレス 決まりですから。
ボビー わかったよ。じゃあ簡単な注文にしてやろう。俺はプレーンオムレツとチキンサラダサンドイッチをトーストにはさんでくれ。マヨネーズぬき、バターぬき、レタスぬき。それとコーヒーだ。
ウエイトレス 2番のチキンサラダサンドですね。
ボビー そうだ、お前さんにしてほしいのはニワトリをとっつかまえて、俺にトーストを運んで、チキンサラダサンンドイッチの伝票を持ってくればいいんだ。そうすりゃ決まりを破らなくてもすむ。
ウエイトレス ニワトリをつかまえてこいですって?
ボビー ああ、股にはさんでもってこいよ。(結局、ボビーはテーブルをひっくり返してしまう)
カレン・ブラックが典型的な脳たりん女を演じている。熱演である。
『ファイブ・イージー・ピーセス』を観るには?
『ファイブ・イージー・ピーセス』作品情報
脚本 – エイドリアン・ジョイス
原案 – ボブ・ラフェルソン、エイドリアン・ジョイス
製作 – ボブ・ラフェルソン、リチャード・ウェクスラー
製作総指揮 – バート・シュナイダー
音楽 – タミー・ウィネット
撮影 – ラズロ・コヴァックス
編集 – クリストファー・ホームズ、ジェラルド・シェパード
製作会社 – BBSプロダクションズ、コロムビア映画、レイバート・プロダクションズ
配給 – コロムビア映画
公開 – アメリカ:1970年9月12日、日本:1971年5月1日
上映時間 – 98分




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