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アメリカン・サイコ

3.5
クロエ・セヴィニー(アメリカン・サイコ) 2000年の映画
クロエ・セヴィニー(アメリカン・サイコ)
『アメリカン・サイコ』は、2000年に映画化され、2000年1月に行われたサンダンス映画祭で初公開された。本作の続編として『アメリカン・サイコ2』が製作されているが、原作とは全く無関係で、本作との関連性もほとんどない。

『アメリカン・サイコ』ってどんな映画?

ブレット・イーストン・エリスの衝撃的な小説を実写化したブラック・ユーモア溢れるサイコ・ホラー。80年代ニューヨークのウォール街を舞台に、高級ブランドと虚飾にまみれたエリート投資銀行家パトリック・ベイトマンが、夜な夜な繰り返す惨劇と、その裏にある圧倒的な虚無を描く。
本作でブレイクしたクリスチャン・ベールの完璧に作り込まれた肉体とスキンケア・ルーティンの描写は圧巻。名刺のデザインひとつでパニックに陥り、心の中で殺意を膨らませる滑稽なまでのエリート像をおそろしい説得力で演じている。
登場人物たちが互いに誰が誰だか認識できず、持ち物やステータスだけで相手を判断する描写は、その後のSNS社会の鋭い風刺でもある。ジャレッド・レトリース・ウィザースプーンウィレム・デフォーといった超豪華キャストが、その「記号的な人々」を見事に体現している。
凄惨な殺人を扱いながらも、どこか冷ややかでコミカルなトーンが漂うのは、女性監督メアリー・ハロン監督ならではの「女性の視点」と言えよう。男性優位社会(トキシック・マスカリニティ)の滑稽さを、ポップな80年代ナンバー(ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースなど)に乗せて描き出す演出は秀逸。
ベイトマンがどれほど罪を告白しようとしても、周囲の無関心がそれを許さない。ラストシーンに漂う恐怖を通り越した虚無感は、映画史に残る「最も救いのない、しかし最も皮肉なハッピーエンド(?)」のひとつだろう。

あらすじ

ウォール街の投資会社に勤めるエリート、パトリック・ベイトマンは、富と名声に満ちたヤッピー生活を送りながら、夜な夜な残虐な殺人を繰り返している。自分より優れた名刺を持ち、予約困難なレストランの席を確保する同僚ポール・アレンへの嫉妬から彼を斧で殺害したことを皮切りに、ベイトマンの狂気は暴走し、犠牲者を増やしていく。
精神が限界に達し、弁護士の留守電にすべての罪を告白したベイトマンだったが、後日、犯行現場であるはずの部屋は綺麗に改装され、弁護士は「アレンとは数日前にロンドンで会った」と一蹴する……。

キャスト

パトリック・ベイトマン – クリスチャン・ベール
ドナルド・キンボール(探偵) – ウィレム・デフォー
ジーン(秘書) – クロエ・セヴィニー
イヴリン・ウィリアムズ(婚約者) – リース・ウィザースプーン
コートニー・ローリンソン(パトリックの愛人) – サマンサ・マシス
エリザベス(愛人) – グィネヴィア・ターナー
ポール・アレン(ライバル) – ジャレッド・レト
クレイグ・マクダーモット(同僚) – ジョシュ・ルーカス
ルイス・カルザース(同) – マット・ロス
デイヴィッド・ヴァン・パッテン(同) – ビル・セイジ
ティモシー・ブライス(同) – ジャスティン・セロー
ハロルド・カーンズ(弁護士) – スティーブン・ボガート
クリスティ(娼婦) – カーラ・シーモア
サブリナ(娼婦) – クリスタ・サットン
デイジー(同僚の恋人) – モニカ・マイヤー
ヴァンデン – キャサリン・ブラック
ヴィクトリア(クリーニング店の女) – マリエ・ダム
ミセス・ウルフ(不動産業者) – パトリシア・ゲイジ
アル(ホームレスの男) – レグ・E・キャシー

名前と実体の一致に興味がない幽霊たち。

ああ思い出してしまった、ヤンエグという言葉を。あのヒトたちはどうなったのだろう。
こないだモーニングを読んでみたら、島耕作はいつのまにか常務になり、コイズミ首相(マンガの中の名前は忘れた)から電話がかかってきたりするポジションにのぼりつめたようだが。

音楽をジョン・ケールが担当した本作は、80年代のアメリカンロックの映画でもある。
ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース、ホイットニー・ヒューストン、フィル・コリンズ。
なつかしいとしか言いようがないが、当時MTVを見ていた筆者は、アメリカ人はどうしてこゆのが好きなのかねえ?と首をひねっていた。
これらのアルバムが通俗のきわみとして引用され、クリスチャン・ベールによって詳細に批評される。
言葉をつらねるほど通俗性が浮き彫りになるという仕掛けはみごと。
こういう手法はスティーヴン・キングが得意とするもので、思えばキングこそ80年代的なものにほかならないのだった。

名刺であれだけ張り合うのに(あのシーンには笑える、本当にそういう世界があったのかなー。印刷屋の営業がはりあっているみたいだ…)、人物名はみんなが間違える。登場人物たちは名前と実体の一致になど興味のない幽霊たちなのだ。

『アメリカン・サイコ』を観るには?

『アメリカン・サイコ』作品情報

監督 – メアリー・ハロン
脚本 – メアリー・ハロン、グィネヴィア・ターナー
製作 – エドワード・R・プレスマン、クリス・ハンリー、クリスチャン・ハルシー・ソロモン
製作総指揮 – マイケル・パサーネク、ジェフ・サックマン、ジョセフ・ドレイク
音楽 – ジョン・ケイル
撮影 – アンジェイ・セクラ
編集 – アンドリュー・マーカス
配給 – アメリカ: ライオンズゲート、日本: アミューズピクチャーズ
公開 – アメリカ: 2000年4月14日、日本: 2001年5月3日
上映時間 – 102分

『アメリカン・サイコ』の原作

昼はヤッピー、夜は殺人鬼。ウォール街で働く若きエリート・ビジネスマン、パトリックの狂気の遊戯。これがアメリカン・ドリームの結末なのか。全米を騒然とさせた、問題のベストセラー小説。

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