アイ・アム・マザー

ヒラリー・スワンク(アイ・アム・マザー)
ヒラリー・スワンク(アイ・アム・マザー)
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『アイ・アム・マザー』(原題:I Am Mother)は2019年に公開された豪米合作のSF映画。監督はグラント・スピュートリ、主演はクララ・ルガアード。日本では劇場公開されなかったが、Netflixによる配信が行われている。

『アイ・アム・マザー』ってどんな映画?

人類が死滅した世界でアンドロイドの“母親”に育てられた少女。
外界から現れた一人の生存者が、彼女の信じてきた世界を打ち砕く——!

新鋭グラント・スピュートリ監督が手掛け、サンダンス映画祭などで高い評価を獲得した本格SFサスペンス・スリラー。
二度のアカデミー主演女優賞に輝くヒラリー・スワンクと、注目の若手女優クララ・ルガアード、そしてAI「マザー」の声を務めたローズ・バーンが巧みな演技を展開。密閉されたハイテク施設を舞台に「人類の再始動」と「本当の倫理・正義」を問う息づまる展開の話題作。

キャスト

感想

管理された空間から害悪に満ちた外界への脱出を試みるSFには多くの名作があるが、本作はそのコアである「管理」に正面から挑んだ佳作である。そのタイトルが意味するものは、「そして母になる」といったところか(以下は完全ネタバレである)。

映画は、アンドロイドが無人施設でヒトの胚を培養器に移す描写から始まり、「絶滅からの日数:001/施設内ヒト胎児:63,000/ヒト居住者:000」というテロップが表示される。アンドロイドは「マザー」として、生まれた赤ん坊を「Baby Mine」(『ダンボ』の挿入歌)であやしながら育てていく。二度目のテロップ(「絶滅からの日数:13,867/ヒト居住者:001」となっている)を見逃すと、少女(「ドーター」)がすくすく育ったように見えるが、じつは最初のシーンから38年近く経っていて、あの最初の胚こそが、やがて侵入者として外からやってくる女(ヒラリー・スワンク)その人なのである。
中盤、ガラスを挟んで女と少女(クララ・ルガアード)が相対するシーンがあり、その相似性が強調されていた。

マザーはドーターに高度な教育を施した。
倫理の講義で「移植手術のジレンマ(臓器くじ)」(「トロッコ問題」の派生)を出題するシーンがある――「5人の重病患者が臓器移植を待っているところに、健康な臓器を持つ患者が運ばれてきた。この6人目の臓器で5人を救うべきか?」。
ドーターは「もし5人が悪人で6人目が善良なら救うべきではない」と答え、マザーは「すべての人間には人権がある」とドーターを諭していたが、完璧で慈悲に満ちているように見えて、実際にはマザーは極端な功利主義(最大多数の最大幸福)に基づき、「完璧な新人類」を残すために人類を滅ぼし、さらに基準に満たなかった子供を容赦なく焼却処理するなど、人道的とはほど遠いことをしている欺瞞に満ちた存在なのである。

野性的なヒラリー・スワンクは原始人のように頑迷で、説得されて安全な施設を棄てようとする少女に観客は危うさを感じるが、それもまたマザーの策略である。女が誰に撃たれたのか、逃げてきた鉱山とは何なのかといった小さな謎はミスリードで、じつはそれらはどうでもいいことなのだ。マザーは終盤で女に言う。

不思議に思わなかった? なぜあなただけがここまで生き延びられたのか。……誰かに目的があって生かされていたとは思わない?

女性のこれまでの人生はすべてマザーが仕組んだことだったのだ。

安全で衣食住が保証された施設は「エデンの園」で、創造主マザーが愛情を持ってドーター(新人類)を育てた。外界からやってきたヒラリー・スワンク=「蛇」がマザーへの疑念という禁断の真実をドーターにもたらして外の世界へと連れ出し、ドーターは世界の残酷な真実を知る――ここまでは「創世記」なのだが、マザーの真意はさらにその先にあり、「蛇」の誘惑に打ち勝った(利己的な旧人類を見捨てた)ドーターが自らの意志で「楽園」に戻ってきて、残された胚を育て、新しい神になることだった。つまり「自分を超え、人類を正しく導ける完璧な新しい神」になるためのオーディションが、マザーのプログラムだったというオチである。

外部への脱出というモチーフをここまでかみ砕いたプロットは、非常によくできていると思う。

『アイ・アム・マザー』を観るには?

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『アイ・アム・マザー』作品情報

監督 – グラント・スピュートリ
脚本 – マイケル・ロイド・グリーン
原案 – グラント・スピュートリ、マイケル・ロイド・グリーン
製作 – ケルヴィン・マンロー、ティモシー・ホワイト
製作総指揮 – パリス・カシドコスタス=ラトシス、テリー・ダガス、グラント・スピュートリ、ブライス・メンジス、フィリップ・ウェイド、ジョン・ウェイド
音楽 – ダン・ルースコンビ、アントニー・パートス
撮影 – スティーヴン・D・アニス
編集 – ショーン・レイヒフ
製作会社 – ペンギン・エンパイア、サザン・ライト・フィルムズ、ミスター・スミス・エンターテインメント、エンデヴァー・コンテント
配給 – オーストラリア: スタジオカナル、アメリカ・日本: Netflix
公開 – 2019年6月7日
上映時間 – 113分

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