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御法度の感想
これも坂本龍一供養ということで、未見の録画を消化。相変わらず内面的としか言いようのないミステリアスな旋律が映画をよく表象している。
観客は、田口トモロヲを殺し浅野忠信に罪を着せようとしたのは誰なのか等々のミステリーとして本作を受け取る。それはもちろん15歳の松田龍平でしかないのだが、考えようによっては武田真治やビートたけし(この物語の語り手である)であってもいいと映画は仄めかす。そこで終幕でビートたけしが切る桜は崔洋一への想いに重なる。
なお、このシーンで桜の枝が落ちるのではなく、木が倒れることに誰もが驚くと思うが、武田真治が「雨月物語」を語るあたりから背景はまるでミゾグチ映画のようなセット撮影であった。
当時高校受験を控えていた松田龍平は、おそらくほとんど意味がわからず演技をしているように見え、それが大島渚の撮り方といえばそれまでだが、ビートたけしと崔洋一の演技を見れば、この映画を「それでもいい」と肯定してはいけないのではないか。
神田うのはさすがのモデルぶりだが、台詞を与えられなかったのは何よりであった。衣装はワダエミ。お馴染みの新撰組のハッピはもちろん採用されなかった。
御法度 見どころ
- 松田龍平の衝撃的なデビューと妖艶な美しさ
本作が映画デビュー作となる松田龍平が加納惣三郎を演じ、その圧倒的な美貌と存在感で観客を魅了した。言葉数は少ないながらも、その眼差しや仕草一つ一つが、隊士たちを惑わし、観る者をも引き込む魔性の魅力を放っている。彼の登場が新選組という男の集団に波紋を広げていく。 - 「戦場のメリークリスマス」トリオの再集結
監督・大島渚、主演・ビートたけし、音楽・坂本龍一という、「戦場のメリークリスマス」で世界的評価を得たトリオが再び集結。坂本龍一の音楽は映画の退廃的で美しくも悲しい世界観を一層深めた。 - 「衆道(男色)」をテーマにした新選組描写
新選組内の男色というテーマに深く切り込んだ点が、本作を異色かつ挑戦的な時代劇たらしめている。男たちの嫉妬や欲望、狂気が渦巻く心理描写が生々しく描かれている。 - 豪華キャスト陣の競演
ビートたけし(土方歳三)、浅野忠信(田代彪蔵)、武田真治(沖田総司)といった実力派俳優たちが、それぞれの役柄に深みを与えている。特に、ビートたけし演じる土方歳三が、隊内の乱れに苦悩し、冷徹に事態を収拾しようとする姿が印象的。 - 映像美と演出
大島渚監督ならではの繊細かつ大胆な映像表現も魅力。夜の闇や雪景色の中での殺陣のシーンなどは美しくも妖しい雰囲気を醸し出した。
御法度 あらすじ
幕末の京都、池田屋事件などで名を馳せた新選組に、新たに二人の隊士が入隊した。一人は剣の腕が立つ下級武士・田代彪蔵(浅野忠信)。そしてもう一人は、息を飲むような妖艶な美貌を持つ少年・加納惣三郎(松田龍平)。新選組は「局中法度」という厳しい規律によって鉄の結束を誇っていましたが、惣三郎の類稀なる美しさは、隊士たちの心を惑わせ、隊内に嫉妬や羨望、そして男色(衆道)を巡る不穏な空気を生み出していく。土方歳三(ビートたけし)や沖田総司(武田真治)らは、隊の規律が乱れることに危機感を覚え、この騒動を鎮めようとするが、惣三郎の魔性の魅力は、隊士たちを狂気に陥れていく。
御法度を観るには?
御法度のキャスト
加納惣三郎 – 松田龍平
沖田総司 – 武田真治
田代彪蔵 – 浅野忠信
近藤勇 – 崔洋一
井上源三郎 – 坂上二郎
山崎烝 – トミーズ雅
菅野平兵衛 – 的場浩司
伊東甲子太郎 – 伊武雅刀
湯沢藤次郎 – 田口トモロヲ
錦木太夫 – 神田うの
輪違屋 – 桂ざこば
おまつ – 吉行和子
谷三十郎 – 飯島大介
吉村貫一郎 – 伊藤洋三郎
武田観柳斎 – 藤原喜明
篠原泰之進 – 菅田俊
密偵の小者 – 寺島進
不逞浪人 – 梅垣義明
武藤誠十郎 – 田中要次
「楓亭」の女 – 青山知可子
ほか – 浦田賢一、倉崎青児、大森嘉之、大島宇三郎、中村麻美、冨樫真
ナレーター – 佐藤慶
御法度のスタッフ
製作:大谷信義
プロデューサー:大島瑛子、中川滋弘、清水一夫
ラインプロデューサー:元持昌之
原作:司馬遼太郎
音楽:坂本龍一
衣装:ワダエミ
撮影監督:栗田豊通
キャメラオペレーター:柳田裕男
ステディカム:佐光朗
美術監督:西岡善信
監督補:成田裕介
助監督:中嶋竹彦、原田眞治、伊藤聡、山下智彦、林川一宏
殺陣:中瀬博文、橋本和博
武術指導:東郷秀信
特殊造型:原口智生、伊藤成昭
現像:IMAGICA
MA:アオイスタジオ
製作協力:映像京都、松竹京都映画
企画・製作:大島渚プロダクション
「御法度」は、単なる時代劇や歴史物としてだけでなく、人間の欲望、性、そして集団心理の脆さを深く追求した、芸術性の高い作品です。この記事で少しでも興味を持たれた方は、ぜひ本編をチェックしてみてください。
御法度の原作(司馬遼太郎)
司馬文学の傑作にして、新選組小説の代表作が、読みやすい新装版で登場!
勤王佐幕の血なまぐさい抗争に明け暮れる維新前夜の京洛に、その治安維持を任務として組織された新選組。騒乱の世を、それぞれの夢と野心を抱いて白刃とともに生きた男たちを鮮烈に描く。司馬文学の代表作。