『ブレインストーム』ってどんな映画?
『2001年宇宙の旅』や『ブレードランナー』の特撮を手がけた視覚効果の神様ダグラス・トランブルによるSFサスペンスの意欲作。他人の五感や記憶、さらには「死の体験」までも録音・再生できる装置を巡る、科学者の執念と陰謀を描いた映画。
名女優ナタリー・ウッドの遺作であり、通常シーンの35mm映像とバーチャル体験シーンの広角・高精細な映像を使い分けるという、トランブル監督らしい映像技術へのこだわりが見どころ。
若き日のクリストファー・ウォーケンの神経質なまでの熱演と、ルイーズ・フレッチャー演じる科学者が「自らの死」を記録する壮絶な展開。脳に直接情報を流し込むというテーマは、現在のVRやメタバースの先駆けとも言える予言的な内容と言える。
あらすじ
複合未来産業エヴァンス電子研究所の研究者マイケル・ブレイスは、リリアン・レイノルズ博士をチーフとする画期的な実験を行っていた。ヘルメット型のブレイン・マシン・インタフェースによって、体験した記憶や感覚を脳が発する信号としてテープに記録でき、再生すると五感はもちろん記録者の感情すらも感じられるリアルな体験として再現できるのである。会社のオーナー、アレックス・ターソンが重役会を招集してマシンを披露する。軍部が興味を示し介入して来るが、リリアンは研究の軍事転用に強く反対する。一方、研究員のハルがセックス・シーンをエンドレスにしたテープをかけて心臓麻痺をおこしかけ、テープの危険性が認知されるようになる。
研究と軍との折衝でストレスを受けたリリアンは研究中に心臓発作に襲われ、死を悟って懸命に記録装置を起動し、死の瞬間を記録にとどめつつ逝った。マイケルはテープに記録された「死」の体験に強い興味を抱き、周囲に反対される中、信号を被致死性のレベルまで調整して続きを見ることを切望するが……
キャスト
リリアン・レイノルズ – ルイーズ・フレッチャー
カレン・ブレイス – ナタリー・ウッド
アレックス・ターソン – クリフ・ロバートソン
ハル・アブラムソン – ジョー・ドーシー
ゴーディ・フォーブス – ジョーダン・クリストファー
ランドン・マークス – ドナルド・ホットン
ロバート・ジェンキンス – アラン・ファッジ
ナタリー・ウッドの遺作。ファンタスティックな曼荼羅世界。
「離愁」で映画デビューしたナタリー・ウッドは本名Natasha Nikolaevna Gurdinというロシア系3姉妹の次女であった(妹ラナ・ウッドも女優)。いわゆる恋多き女優であり、ロバート・ワグナー(2回)、リチャード・グレグソン(プロデューサー)と結婚したほか、エルヴィス・プレスリー、デニス・ホッパー、レイモンド・バー、クリストファー・ウォーケンなどと浮名を流した。
この映画の撮影時には共演相手のクリストファー・ウォーケンと恋愛中だったと伝えられ、ウォーケン、ロバート・ワグナー(また復縁した)と4人でクルージング中に酔って船から転落し、溺死した。ワグナーとウォーケンが船上で口論していたなどという話も報じられたものだから、ハリウッドは大騒ぎ。ナタリーの急死のため、映画は脚本の修正を余儀なくされて、そのせいか、最後のほうはなんだか尻切れふうになっている。
エンドロールには「TO NATALIE」と記されている。43歳とはいえ、その美しさは揺るぎのないものであるが、映画での役柄は年齢相応のものなのがちょっとくやしい。
映画は、昔なつかしい感じのスローモーなSF映画で、バーチャルリアリティの先駆となったが、60年代の「2001年宇宙の旅」の焼き直しのようにも見える。ブレインストームとは他人の知覚すべてを伝導できるシステムというか装置なのだが(メディアはなにやら金色に輝く磁気テープ。結構かっこいい)、このマシンによる究極体験は臨死体験である(死ぬのはルイーズ・フレッチャーで、すさまじいほどのヘヴィスモーカーぶりであり、死因は心筋梗塞)。
ファンタスティックな曼荼羅の世界が広がり、視点が身体から切り離されてふわりと天井にのぼったり、人生の記憶がとじこめられた無数の水晶が整列していたり、宇宙をバックに天使が飛んでいたりする。劇場では、ブレインストームで再生された映像のシーンが始まると、35mmから70mmのスーパー・パナビジョン画面に変わったらしい。これはDVDではわからない、当時どうして劇場に足を運ばなかったのかと非常に悔やまれるのである。
『ブレインストーム』を観るには?
『ブレインストーム』作品情報
脚本 – ロバート・スティッツェル、フィリップ・フランク・メッシーナ
原案 – ブルース・ジョエル・ルービン
製作 – ダグラス・トランブル
製作総指揮 – ジョエル・L・フリードマン
音楽 – ジェームズ・ホーナー
撮影 – リチャード・ユリシッチ
編集 – エドワード・ワーシルカ、フリーマン・A・デイヴィス
配給 – メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
公開 – アメリカ:1983年9月30日、日本:1984年4月14日
上映時間 – 106分




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