ベケット

アリシア・ヴィキャンベル(ベケット)
アリシア・ヴィキャンベル(ベケット)
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『ベケット』(原題: Beckett)は、フェルディナンド・シト・フィロマリノが監督したスリラー映画。

『ベケット』ってどんな映画?

ギリシャでの楽しいバカンスが一瞬にして血塗られた逃走劇へと変貌する、悪夢のようなノンストップ・ポリティカルスリラー。ある交通事故をきっかけに巨大な政治的陰謀の渦に巻き込まれたアメリカ人観光客の、終わりなき逃亡と焦燥を描き出す。製作のルカ・グァダニーノが認めた新鋭フェルディナンド・チト・フィロマリーノ監督がメガホンを取り、異国で孤立無援となった人間の恐怖を冷徹に映像化。誰が敵で誰が味方かも分からない嘘の連鎖と、じわじわと迫る国家権力の冷酷な真実が交錯するサスペンス映画。

見どころは、言葉も通じない異国の地で、現地警察や謎の暗殺者に追いつめられていく不気味さだ。米大使館のあるアテネを目指して決死の逃亡を続けるベケット(ジョン・デヴィッド・ワシントン)だったが、その背後に、左派政治家の誘拐事件とそれを隠蔽する巨大な陰謀の影が蠢いていることがわかってくる。どこまでも追ってくる追跡者の魔手が、孤立無援のベケットを精神的にも肉体的にも極限のパニックへと追いつめていく。
ジョン・デヴィッド・ワシントンの泥臭いアクション、ヨーロッパ映画ならではのじっとりとした緊張感が融合したクライム・サスペンスだ。

あらすじ

アメリカ人観光客のベケット(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、恋人のエイプリル(アリシア・ヴィキャンデル)とともにギリシャの辺境をドライブ中、居眠り運転による凄惨な大事故を起こしてしまう。車は大破し、朦朧とする意識のなかでベケットは、民家の奥へと連れ去られる謎の少年の姿を目撃する。最愛の恋人を亡くし、激しい絶望と焦燥に駆られるベケット。しかし、事故現場へ戻った彼を待っていたのは、地元警察による容赦のない銃撃だった。なぜ自分が命を狙われるのか分からないまま、ベケットは着の身着のまま広大なギリシャの山岳地帯へと逃げ延びる。

キャスト

ベケット(アメリカ人観光客) - ジョン・デヴィッド・ワシントン
スティーヴン・タイナン(米国大使館職員) - ボイド・ホルブルック
レナ(ドイツ人政治活動家) - ヴィッキー・クリープス
エイプリル・ハンソン(ベケットのガールフレンド) - アリシア・ヴィキャンデル

感想

不条理に追われるからベケットなのかと思ったが、どうもそうでもないらしい。迂闊な居眠り運転で突っ込んだ民家は誘拐犯のアジトで、主人公(ジョン・デヴィッド・ワシントン)はそこで誘拐された子供の姿を見てしまっていたのだ。

とはいえ、それ以上のことは、お花畑にいる日本人にはまるでピンとこないものがある。

まず、少年は地元政治家カラスの息子なのだが、EUによるギリシャの緊縮政策の阻止運動を展開するリベラル政治家と、少年を誘拐した極右団体サンライズは、そもそも政治的主張が対立しているというより、単に主導権争いをしているだけと思われる。

ところが、カラスが犯罪シンジケートからの借金を返せなくなったために、シンジケートがサンライズを使ってカラスの息子を誘拐したという真相(裏事情)が中盤にわかるのである。

ここで、闇借金はスキャンダルなのでカラスを失脚させる材料になるはずではないかという疑問が生まれる。つまり、サンライズがそれを暴露せずにあくまでも誘拐を隠蔽しようとするのはおかしいのだが、それはカラスをコントロールするための大人の事情が必要だったと解釈できる。

在アテネの米国大使館を目指す主人公は、道中、カラスを支援するドイツ人の活動家の助けを借りる。なぜ彼らはカラス支持なのか。

カラスが反対していたEUの緊縮政策はドイツが主導していたことであり、ドイツの左派運動派にとって、単なるギリシャの救済を越えてEU変革の連帯を実現するためには、非人道的経済政策に反対するポピュリストであるカラスは希望の星として映ったと考えられる。

アテネの集会でカラスはあっさり暗殺されてしまうのだが、ここにはEUと利益を一にするアメリカ政府の思惑が関係していたのだろう。
(ぼんやり観ていると、主人公がずっと電話で助けを求めていたマジェシィが実は悪者だったように見えるが、実はマジェシィはただのセキュリティオフィサーで、大使館にたどり着いた後に主人公を保護すると言って出てくる上役タイナンが悪者である。この入れ替わりに気づくのは難しい。)

以上のような背景が、映画を観ているだけだとはなはだピンとこないのは、それとは関係なく、映画の作りがガタガタだからということでもある。

まず、あっさり無駄死にするアリシア・ヴィキャンデルにせよ、ほとんどプロットに寄与しないドイツ人活動家のヴィッキー・クリープスにせよ、キャスティングが内容にミスマッチで、もったいなさすぎる。

主人公のジョン・デヴィッド・ワシントンはデンゼル・ワシントンの息子でNFLプレイヤーという経歴の人だが、「テネット」主演で認められているにも関わらず本作ではただのボンクラにしか見えない。クライマックスでは立体駐車場の階上から出てくる車に飛び落ちるというばかげたシーンがあるが、序盤にも崖から飛び降りる無意味なシーンがあり、二度も同じ愚を犯しているのは信じがたい。

主人公は向精神薬を常用していると思しいのだが、そもそも居眠り運転をしたのはそれが原因ではなかったのか。その説明もない。ラストカットは、俺は死んだボツが良かったんだと呆然としているジョンのアップなのだが、どうしてそういう終わり方になるのか。

『ベケット』を観るには?

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『ベケット』作品情報

監督 – フェルディナンド・シト・フィロマリノ
原案 – フェルディナンド・シト・フィロマリノ
製作 – ルカ・グァダニーノ、マルコ・モラビート、Francesco Melzi d’Eril、Gabriele Moratti
音楽 – 坂本龍一
撮影 – サヨムプー・ムックディプローム
編集 – ヴァルテル・ファサーノ
製作会社 – Rai Cinema、Frenesy Film、MeMo、RT Features、Endeavor
配給 – Netflix
公開 – 2021年8月4日 ロカルノ国際映画祭、世界:2021年8月13日
上映時間 – 108分

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