『羊たちの沈黙』ってどんな映画?
美しき若き魂が直面する底知れぬ狂気、そしてガラス越しに交わされる魅惑的で危険な心理戦――。女性を誘拐しその皮を剥ぐ連続猟奇殺人犯を追うため、若きFBI訓練生が、監禁されている天才精神科医・猟奇殺人犯の知恵を借りるべく、底なしの暗闇へと足を踏み入れていく。トマス・ハリスの同名ベストセラー小説を原作に、テッド・タリーによる一言の無駄もない緊迫した脚本と、名匠ジョナサン・デミ監督による圧倒的な演出で映画化。アカデミー賞主要5部門を独占し、サイコ・スリラーの概念を変えた傑作。
議員の娘がバッファロー・ビルに誘拐されたことで、捜査は一刻を争う事態へ。クラリス(ジョディ・フォスター)は親友のアーディリア(ケイシー・レモンズ)と必死にデータを解析する。さらに昆虫学者などから得た手がかりをもとに、ビルの歪んだ心理へと肉薄していく。傲慢なチルトン医師(アンソニー・ヒールド)が見守る中、クラリスとレクターの間で交錯する言葉の刃。司法省の政治的思惑や警察の動きが複雑に絡み合うなか、レクターは自身の壮絶な知略を静かに巡らせていく。
撮影のタク・フジモトが捉える人物たちの強烈なクローズアップと冷徹な光影が、クラリスが幼少期に抱える父にまつわるトラウマと、現代の猟奇事件を美しくシンクロさせていく。
ジョディ・フォスターが魅せる弱さを気高さへと昇華させる眼差し、アンソニー・ホプキンスがわずか十数分の出演で映画史に恐怖を刻みつけた怪演、そしてサスペンスとしての完璧な美しさが融合した、映画史に君臨する不朽のサイコ・ミステリー。
あらすじ
FBI行動科学課の主任捜査官ジャック・クロフォード(スコット・グレン)から、ある任務を命じられたアカデミーの訓練生クラリス・スターリング(ジョディ・フォスター)。それは、世間を震撼させている連続殺人鬼、通称“バッファロー・ビル”(テッド・レヴィン)の心理分析を行うため、精神病院の地下深く監禁されている元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)に協力を仰ぐことだった。冷酷非道でありながら、並外れた知性と極上の紳士的気品を持つレクターは、クラリスの脆く繊細な内面に強い興味を示し、彼女の隠された過去を暴くことと引き換えに、事件のヒントを与え始める。
キャスト
クラリス・スターリング - ジョディ・フォスター
ハンニバル・レクター - アンソニー・ホプキンス
ジャック・クロフォード主任捜査官 - スコット・グレン
バッファロー・ビル - テッド・レヴィン
フレデリック・チルトン医師 - アンソニー・ヒールド
アーディリア・マップ - ケイシー・レモンズ
キャサリン・マーティン - ブルック・スミス
ルース・マーティン議員 - ダイアン・ベイカー
バーニー・マシューズ - フランキー・R・フェイソン
ラマー - トレイシー・ウォルター
ボイル警部補 - チャールズ・ネイピア
テイト巡査部長 - ダニー・ダースト
ジム・ペンブリー巡査部長 - アレックス・コールマン
ロデン - ダン・バトラー
ピルチャー - ポール・ラザール
ポール・クレンドラー - ロン・ヴォーター
ビンメル氏 - ハリー・ノーサップ
SWAT司令官 - クリス・アイザック
マレー捜査官 - ブレント・ヒンクリー
ジェイコブス捜査官 - シンシア・エッティンガー
ステイシー・ハブカ - ローレン・ロゼリ
エーキン - ケネス・ウット
テリー特別捜査官 - チャック・アバー
ラング氏 - レイブ・レンスキー
ミグス - スチュアート・ルーディン
若きクラリス - マーシャ・スコロボガトフ
クラリスの父 - ジェフリー・レーン
メンフィスのFBI捜査官 - ジョージ・A・ロメロ(ノンクレジット)
感想
CBSのドラマシリーズ「クラリス」を観ようと思い、ウン十年ぶりに本作を再見した。
28歳だか29歳のジョディ・フォスターは若いというか、ほとんど少女のように幼く、細っこい。今見ると安達祐実に似ていて、安達がこんな役を貰えたらと空想してしまう。
よく知られているように、本作の撮影監督のタク・フジモトは、クラリスとレクター博士の顔を正面からの極端なクローズアップで撮っている。今回気がついたのは、その瞳の色がほとんど同じに見えることだった(実際は、ジョディ・フォスターはブルーグレー系、アンソニー・ホプキンスはヘーゼルがかった淡い青灰色のはずである)。蛍光灯的な照明で、青みの強い色調補正がかかっているためそのように見えるのかもしれないが、本作が視線の映画であり、この二人の関係が鏡像的であることを考えると、故意にそのような色彩設計がなされた可能性はあるのではないかと思った。
訓練生に過ぎないのにホットな連続猟奇殺人の捜査に投入されたクラリスは、FBIをはじめとする男ばかりの環境で浮き上がっており、常に見られていることを意識している(彼女は訓練で死角からの襲撃を見抜けなかった)。一方、鉄格子の中のレクターはまさに「見る人」ということで、これが本作が視線の映画である所以。二人に限らず、本作では誰が誰を見ているのかということが重要である。
だからクライマックスのバッファロービルとの対決は、ビルだけが暗視ゴーグルを装着することで、見る/見られるという関係が極大化されたシーンだった。
そしてそのクライマックスは、同じ猟奇犯罪者であっても、ビルとレクターが決定的に異なることを示すものでもある。レクター博士は圧倒的に見る存在でありながら、その力でクラリスを支配しようとはしなかった。「羊は沈黙したか?」とあくまでクラリスが自らの内面を見るように促したのである。
『羊たちの沈黙』を観るには?
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『羊たちの沈黙』作品情報
監督 – ジョナサン・デミ
脚本 – テッド・タリー
原作 – トマス・ハリス『羊たちの沈黙』
製作 – エドワード・サクソン、ケネス・ウット、ロン・ボズマン
製作総指揮 – ゲイリー・ゴーツマン
音楽 – ハワード・ショア
撮影 – タク・フジモト
編集 – クレイグ・マッケイ
製作会社 – Strong Heart Productions
配給 – アメリカ: オライオン・ピクチャーズ、日本: ワーナー・ブラザース
公開 – アメリカ: 1991年2月14日、日本: 1991年6月14日
上映時間 – 118分
『羊たちの沈黙』の原作
獲物の皮を剥ぐことから“バッファロウ・ビル“と呼ばれる連続女性誘拐殺人犯が跳梁する。要員不足に悩まされるFBIが白羽の矢を立てたのは訓練生クラリス・スターリング。彼女は捜査に助言を得るべく、患者を次々に殺害して精神異常犯罪者用病院に拘禁されている医学博士ハンニバル・レクターと対面するが――。1980年代末からサスペンス/スリラーの潮流を支配する“悪の金字塔”!


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