『007 スペクター』ってどんな映画?
ダニエル・クレイグ版ジェームズ・ボンドの第4作目。冒頭のメキシコシティ「死者の日」での驚異的なワンカット撮影から、かつての宿敵組織「スペクター」の再登場、そしてボンドの過去に深く関わる宿敵ブロフェルドとの対決まで、シリーズの集大成ともいえる一作である。クリストフ・ヴァルツの狂気を感じさせる悪役ぶり、ボンドガール、レア・セドゥの美しさ、モニカ・ベルッチの気品など、サム・メンデス監督による美学の詰まったスタイリッシュな映像を楽しめる。Q(ベン・ウィショー)やマネーペニー(ナオミ・ハリス)とのチーム感も見どころ。
ネタバレあらすじと感想
例によって午後ローの鬼編集によって4割がたカットされたバージョンを観たので、ストーリーを確認しながら感想を書こうと思う。長文注意(午後ローでこうした映画を放映するのはやはり無謀である)。
例によって派手なオープニングシーン。メキシコシティでテロリストのスキアラを殺害して建物を崩壊させるダニエル・クレイグ。爆風を受けながらいちいちカフスを直す気障な仕草がたまらない。逃げたスキアラを追ってヘリにぶら下がり、「死者の日」のお祭りに集まった大群衆の上でアクロバット飛行をさせながら次々と空中に放り出していく(本作はヘリコプターで始まり、ヘリコプターで終わる映画である)。このシークエンスは、この後のアクションの中でも出来が良かったと思う。
メキシコシティに行った目的をなぜか説明しないため、ボンドはMから停職を命じられる。じつはボンドは前任Mのジュディ・デンチが残したビデオでの指令に従っていたのだ。
遺言の続きでローマでスキアラの葬儀に出席したボンドは、即座に未亡人ルチアといい仲になり(ボンドガール最高齢と言われるモニカ・ベルッチ)、カルデンツァ宮殿での秘密組織の会議の情報を得て潜入。組織のボスは、幼少期を共に過ごしたフランツ・オーベルハウザーだった。ボンドの潜入はバレており、アストンマーチンDB10で逃げたボンドを追う巨漢ヒンクスとのカーチェイスになる(Qの仕込みでDB10は宙を舞い、テヴェレ川にあっさり水没)。
次に向かったのは、ペールキングことミスターホワイトの隠れ家があるオーストリアのアルタウスゼー(ナチスが美術品を隠した鉱山として有名)。ホワイトは秘密組織の幹部なのだが路線対立でオーベルハウザーと決別して死にかけており、ボンドに娘を救ってくれと頼んで自決する。しかし一連の会話は録画されており、ボンドの動きはヒンクスに筒抜けとなった。ボンドがホワイトの娘マドレーヌ(レア・セドゥ)が働く医療施設を訪ねると(おなじみの雪山にある)、ヒンクスはマドレーヌを誘拐。ここでセスナを使ったアクションシーンが展開する。
マドレーヌ(古川琴音に似ていると思ったのは私だけ?)によれば、秘密組織の名は「スペクター」。彼女に導かれて泊まったモロッコのホテルには隠し部屋があり、残された座標によってボンドとQはスペクターのアジトが北アフリカにあることを突き止める。アジトに向かう特急列車内では、ヒンクスとの最後の死闘が繰り広げられ、辛くも危地を乗り越え、興奮冷めやらぬボンドとマドレーヌはとうとういい仲に。
翌朝、砂漠の駅で列車を降りた二人はオーベルハウザーのロールスロイスでアジトに到着。そこは世界各国の諜報情報を監視する情報センターだった。ボンドは部下に殴られて昏倒、目を覚ますと脳に針を刺す拷問を受ける(ボンドは何をどうしようと思ってのこのこアジトにやってきたのか?)
オーベルハウザーによれば、両親を亡くしたボンドを育てたのはオーベルハウザーの父親であり、弟として育てたられだボンドを妬んで、彼は父親を殺した。それ以来、エルンスト・S・プロフェルドと名乗っているという(このシーンではプロフェルドがいつも抱っこしている白いペルシャ猫も出てくる)。プロフェルドの説明はこれだけなのだが、どうも書き割り的で、ジュディ・デンチといつ母性からの独立を描いた「スカイフォール」の重厚さには届かない。
針を刺される間一髪のところで、ボンドはQから受け取った腕時計爆弾でアジトを爆破、混乱に乗じて脱出する。
ロンドンに戻ったボンドはMやQ、マネーペニーと合流、「ナインアイズ」の稼働を阻止することになるが、マドレーヌがさらわれ、MI6の旧本部がある廃屋で顔の右半分を負傷したプロフェルドと対峙。時限爆弾が爆発して廃墟が崩れ落ちる中、マドレーヌを連れて高速ボートで脱出し、プロフェルドが乗るヘリコプターを追う。驚くべき射撃能力でヘリを撃ち落としたボンドはプロフェルドを追いつめるが、とどめは刺さずに、マドレーヌと夜のロンドンに消えた(その後引退したということになっている)。プロフェルドはMに逮捕された(2001年特別措置条約に基づき、とMは言っている)。
省略したが、MI5の新局長Cという人物が登場し、「諜報世界の暗黒時代を終わらせる」として時代はずれの00部署解体を策謀するプロットが並行する。cは各国の諜報組織が一堂に会す東京国際会議で世界9か国の情報網を統合するという「ナイン・アイズ」を提案、可決させて、「新国家保安センター(CNS)」が世界9か国の情報と00部署の情報を収集・管理することを決めてしまう。要はCもまたスペクターの工作員で(マッチポンプ式に各地でテロを起こしている)、終盤ではボンドをMI6旧本部に拉致したりして、Mに突き落とされて転落死する。
スペクターは膨大な情報を手中に収めて世界征服を企む組織ということなのだろう。正直、え、今からなの?という気がする。ローマ・カルデンツァ宮殿での秘密会議の仰々しさなは思わず笑った。
ということもあり、全体には「スカイフォール」には及びもつかぬとっ散らかった映画だった。スペクターとプロフェルドの権利をMGMが買い戻したものの、うまく復活させられず、まるでマーベルユニバースみたいになってしまった。
『007 スペクター』を観るには?
『007 スペクター』作品情報
キャスト
フランツ・オーベルハウザー / エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド(「スペクター」首領) – クリストフ・ヴァルツ
マドレーヌ・スワン(ミスター・ホワイトの娘) – レア・セドゥ
M(MI6局長でボンドの上司) – レイフ・ファインズ
ルチア・スキアラ(マルコの妻) – モニカ・ベルッチ
Q(特務装備開発課) – ベン・ウィショー
ミス・マネーペニー – ナオミ・ハリス
ミスター・ヒンクス(マルコ・スキアラの後任) – デビッド・バウティスタ
C(マックス・デンビー)(MI5の責任者) – アンドリュー・スコット
ビル・タナー(Mの幕僚) – ロリー・キニア
ミスター・ホワイト(「スペクター」幹部) – イェスパー・クリステンセン
マルコ・スキアラ(Mが遺言で殺害を命じたテロリスト) – アレサンドロ・クレモナ
エストレーリャ() – ステファニー・シグマン
前任のM – ジュディ・デンチ
スタッフその他
脚本 – ジョン・ローガン、ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ジェズ・バターワース
原作 – イアン・フレミング
製作 – バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン
音楽 – トーマス・ニューマン
主題歌 – 「ライティングズ・オン・ザ・ウォール」サム・スミス
撮影 – ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集 – リー・スミス
製作会社 – イーオン・プロダクションズ、ダンジャック、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー、コロンビア ピクチャーズ、B24
配給 – イギリス・アメリカ: ソニー・ピクチャーズ リリーシング、日本: ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公開 – イギリス: 2015年10月26日(プレミア上映)、アメリカ: 2015年11月6日、日本: 2015年12月4日
上映時間 – 148分



コメント