『回路』ってどんな映画?
黒沢清監督による、インターネットという未知の領域を通じて「死者の世界」が現実を侵食していく様を描いた、Jホラーの金字塔的傑作。カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞するなど、その不穏なビジュアルと哲学的テーマが評価された。
特別な場所ではなく、洗濯物が干されたベランダや、何の変哲もない事務所のドアの隙間から、取り返しのつかない終末がじわじわと広がっていく演出が圧巻。「幽霊が怖い」以上に、「世界から人が消えていく空虚さ」に背筋が凍る。
一条かおり演じる「赤い服の女」の、重力を無視したような不自然な動きは、ホラー映画史に残る恐怖演出として語り継がれている。CGに頼りすぎない、人間の身体性を活かした「異界の表現」。
ネットに詳しくない大学生の亮介(加藤晴彦)と、同僚の失踪に直面するミチ(麻生久美子)。他者と繋がりたいはずの回路(インターネット)が、逆に死の孤独を招き入れるという皮肉な設定の中で、二人が絶望に抗おうとする姿が印象的。
工事現場の作業員役の哀川翔、大学院生役の武田真治、そして物語の終盤に圧倒的な存在感を示す船長役の役所広司など、黒沢組ならではの豪華キャストが、この崩壊していく世界にリアリティと厚みを与えている。
あらすじ
観葉植物販売会社「サニープラント販売」で同僚の田口が自殺してからというもの、工藤ミチの周辺では身近な人たちが次々と黒い影を残し姿を消していってしまった。同じ頃、大学生の川島亮介は、ウラヌスというプロバイダでパソコンで噂で聞いていた「幽霊に会いたいですか」と問う奇妙なサイトにアクセスしてしまう。次々と黒い影を残し消える人たち。不気味に変容しはじめる世界。亮介が思いを寄せていた唐沢春江も不可解な行動をとり始める。赤いテープに囲われたアパートのドアを見つめて佇む作業員が何かをしてしまったことが始りのようだった。
親しいものたちが消えてゆき日常が崩壊していく中、ミチと亮介は出会い、共に逃避しようとするが寸前、亮介にも危険が及んでしまう。ミチはそれでも亮介を連れ、幽かな希望を目指して船出するのだった。
キャスト
工藤ミチ – 麻生久美子
唐沢春江 – 小雪
佐々木順子 – 有坂来瞳
矢部俊夫 – 松尾政寿
社長 – 菅田俊
田口 – 水橋研二
幽霊 – 塩野谷正幸
髪の長い女 – 一条かおり
学生 – 高野八誠
学生 – 高島郷
学生 – 結城淳
森下能幸
袋の男 – 丹治匠
工事現場の作業員 – 哀川翔
TVアナウンサー – 長谷川憲司
幽霊 – 北村明子
泥人間 – 小野輝男
幽霊 – 基常結子
幽霊 – 狸穴善五郎
幽霊 – 安田理央
ミチの母親 – 風吹ジュン
吉崎 – 武田真治
船長 – 役所広司
ありえないシーンに免じて、★は4つ。
ありえないシーンがある。手前にいる麻生久美子の背後で(その瞬間は振り向いているが)、廃工場の塔から女が飛び降りるのをワンカットで撮っているのだ。全体に特撮や合成がちゃちい映画なのだが、これにはおそれいった。このシーンだけでホラー一本分の怖さはじゅうぶんに味わえる。
ホラーとしてのサービス精神は、音響の凝り方にもじゅうぶん発揮されている。「た・す・け・て」という声の使い方など、見ていて思わず眠気がとんでしまった。
加藤晴彦の演技は見ていてすこしいらいらする。小雪はなかなか良いのだが、このふたりの身長差が気になるのかもしれない。どちらかが座って、どちらかが立っている(たいてい小雪が座っているのだが)というのに徹していればよかったのに。
満足度はおまけで星4つ。ほんとは3.5くらい。
『回路』を観るには?
『回路』作品情報
脚本 – 黒沢清
製作 – 小野清司、山本洋、高野力、萩原敏雄
製作総指揮 – 徳間康快
音楽 – 羽毛田丈史、和田亨
主題歌 – Cocco「羽根〜lay down my arms〜」
撮影 – 林淳一郎
編集 – 菊池純一
製作会社 – 大映、日本テレビ放送網、博報堂、IMAGICA
配給 – 日本:東宝、アメリカ:マグノリア・ピクチャーズ
公開 – 日本:2001年2月10日、フランス:2001年5月(CIFF)、アメリカ:2005年11月9日
上映時間 – 118分




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