2011年のドラマドラマ2010年代のドラマ

美しい隣人

4.0
仲間由紀恵(美しい隣人) 2011年のドラマ
仲間由紀恵(美しい隣人)

今回は高知東生を足蹴にするフラッシュバックが一瞬だけあったが、その後のグラスを握りつぶすシーンと合わせて効果は絶大、一時間分の余韻を残した。
手に巻いた包帯は「本当は怖い人」の記号として機能し、愚かな渡部篤郎がその包帯を巻き直してやるという皮肉までおまけについた。
渡部はバーで仲間の包帯を巻いた手を結構強く握っていたが、この場合、本当に怪我をしているので、あれは痛いはずである。
また、そのあとの情事描写は皆無であり、注意して見ていないとどうなったのかわからないくらいだった。
全体の構成や演出から考えると意図的としか思えないのだが、どうだろうか。

疚しさに駆られた渡部が檀れいからの電話に答え、週末に帰ると罪悪感いっぱいの空手形を出すと、檀れいは「美味しいもの作るから!」と金麦のCMみたいなことを言う。
このドラマでの檀のキャラクターは全体に「いい奥さん」なのだが、仲間はこれを「壁を作っている=他者を嫌っている」というパラドキシカルな言い方によって、檀の防御を突き崩していく。
防御的=保守そのものである檀が、仲間にどう対抗していくことになるか、というのもこの先のお楽しみである。

終盤、仲間は壇れいの息子駿君をいじめる比呂君を物置に引っ張り込み、「比呂君は溺れる。溺れて死んだ子と同じ顔をしている」と脅す。
実際にあれで子供が怯えるかどうかはわからないが、よく練られた、かなり怖いシーンである。

第5話|渡部篤郎は本当に浮気をしているのか

自分の夫の浮気について知っているそぶりなど見せたら、三浦理恵子は、おそらく離婚歴をふれまわられる以上に気を悪くするだろう。
檀れいはすでに怒る余裕がないほど追いつめられているのだが、表面的には、さして事件が起こっているわけではないので、放送期間が半ばを越え、これから始まるクライマックス展開の下地作りということなのだろう。
えっ、もうクライマックスなの?という感じで、やはり仲間由紀恵の作り笑いをじっくり見せすぎた配分だったように思う。
仲間でなければこの長い導入はなし得なかったかもしれないが…

大阪の渡部篤郎と仲間の逢瀬を目撃するのは、やはり鈴木砂羽とその夫だった。
二人はすぐに上京し、檀にご注進するのだが、思いがけず隣人(自分たちの店子)だっと仲間を前に、この女が渡部と浮気をしているとまでは言えなくなるという展開は、見ているうちはさほど不自然でもなかった。
しかし、鈴木の夫婦は管理会社を通じて、マイヤー沙希という人物が誰なのかを調べることができる。
仲間は、渡部とタクシーに乗り込む姿を見られたことも知らないので、これは、事態が沙希の制御できない部分でも動き始めたことを意味する。
三浦理恵子が渡部の浮気を知ったことも仲間の知りえない状況である。
仲間は檀と同じGERMERの香水(架空のブランドらしい)をつけ、檀れいにもらったワンピースを着て渡部と会い、肩に首をもたせかける。
仲間は、あなたの部屋が見たいと言って、渡部のマンションに押しかけるのだが、その後、息子の描いた絵に見下ろされながら、渡部の一人寝のベッドで抱かれたのだろうか、あるいはもう一度車に乗ってホテルに移動したのだろうか。
渡部が本当に浮気をしているのかという決定的な場面はまったくない。
ベッドシーンどころかキスシーンもないのだから、この浮気自体が大きなフェイクである可能性がある(例えば、渡部もまた、檀を精神的不安に陥れる仲間の仲間wであった、など)。
檀に「死ね」と電話をしたのは、文法的には、渡部の部下・藤井美菜だが、今回までで仲間との関係が示されなかったことからすると、ミスリードであるか、仲間の企みとは別の、単なる嫌がらせなのであろう。
しかし、だとすると、ますますもって、檀の周囲には大した事件が起こっていないことになる。
唯一具体的な事件は、渡部の浮気ということになるのだが…

南圭介は檀の救世主となるのだろう。

次週のサブタイトルは「地獄の快気祝い」というスサマジイものである。
かなり期待が高まる…

第6話|今季の最優秀演技は仲間由紀恵

またしても思いきった暴力シーンの回想から始まる。
「美しい隣人」は、“妻のDV”という珍しい主題を盛り込んだドラマで、夫婦らしい情感を微塵も感じさせない仲間由紀恵の嗜虐的な演技を見ていると、たしかにこの女優はレスボスの女であるのかもしれないなどと思わされる(仲間の殴る蹴るのアクションには、リーチの長さを活かした妙な粘着感がある)。
その暴力シーンを視聴者の目に焼き付けておき、先日もグラスを握りつぶしたホテルの喫茶室の同じ席で、恐怖の表情を隠せない高知東生に向かって、うっそりと微笑みかける仲間の演技は、かなり練りこんだものだ。
今季ドラマの女優の中で、最も優れた演技だと思う。

ところで土下座する高知を足蹴にし、壁に追いつめて殴ったり蹴りを入れたりしている部屋は、設定上は、鈴木砂羽が住んでいた檀れいの隣家ではなく、都内マンションの夫婦の寝室であるはずだが、檀の隣家で仲間がロッキングチェアに揺られているのと同じ部屋に見える。
策謀をめぐらしている“現在”の部屋とあえてダブらせているのだが、その後の回想シーンで描かれた都内の高級マンションに、同じような内装の部屋があったようには見えない。
これは何を意味するのだろうか。

さて、高知を棄て、亡子の服を紙袋にパンパンに詰めて街をさまよった仲間が、ネットカフェにたどり着き、ブログ「ERIKOのホタル日記」を見つけるシーンで、檀のプロフィール文に「神奈川在住」と書かれていた。
このドラマの舞台はこれまで「東京」とされていたが、それは渡部篤郎の勤め先をそう呼んでいるというだけで、実際は神奈川であった。
ロケ地は、地形からいって三浦半島ではないか(今回、最寄駅として登場した「美空野」駅は、京王相模原線の稲城駅である。)。

渡部が東京勤務に戻ることになり、仲間の仕事も大詰めを迎えているようだ。
大阪から帰った仲間は髪型を変えており、エプロンを着けたり、同じ香水(この語で検索する人が多いのだが、「GERMER」である)を着けていることをわざわざ檀に打ち明けたりしている。
仲間が南圭介に母親のことを聞くシーンがあった。
南は「俺を産んだ女のことか?」と聞き返し、にやりと笑った仲間は、「血がつながっているだけの母親なら、そんなものはいなくてもいいわよね」というようなことを言う。
これらのエピソードは、仲間が檀にとって代わろうとしていることを意味している。
駿君に注ぐ仲間の目はますます独占欲に光っているし、渡部に檀と同じ「エリコ」と名乗ったことも、そして檀に投げた言葉「もし自分が裏切ったら殺しちゃっていい」も、沙希という人格を消し去って絵理子になり代わるつもりを表しているように思える。

ところで南圭介の演じる自閉症的な青年のキャラ設定が興味深い。
前回も書いたように、宮部みゆき的な、もしくはスティーヴン・キング的なサスペンスの文脈において、この青年は、おそらく檀れいの救世主の役割を担うものと予想できる。
上のようなセリフを吐いた南は、駿君になつかれているのだが、おそらくクライマックスにおいて、母性を指弾することになるのではないか。

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