『グリーン・マザーズ・クラブ』ってどんなドラマ?
「ママ友」という仮面の下に隠された、秘密と嫉妬と欲望——
教育特区のママ友コミュニティを舞台に、5人の母親たちの複雑な人間関係と裏の顔を描いた話題のヒューマンサスペンス。
「子供の教育」という共通点を通じて集まった母親たちが、友情と嫉妬の狭間で揺れ動き、ある事件をきっかけに不可解な疑惑の渦へと巻き込まれていく。
「友達だと思っていた。あの事件が起きるまでは——。」
単なるお受験ドラマにとどまらず、サスペンスと人間ドラマが重厚に交錯する必見の一作。
あらすじ
美学の教授に挫折し、子どもの教育のために屈指の教育特区「チョンシン洞」に引っ越してきたイ・ウンピョ(イ・ヨウォン)。そこは、「グリーン・マザーズ・クラブ」と呼ばれる保護者会を仕切るボス・ピョン・チュニ(チュ・ジャヒョン)を中心に、教育バトルが繰り広げられる過酷な世界だった。
なじめなかったウンピョは、かつて親友だったソ・ジナ(キム・ギュリ)と再会。ジナは裕福な暮らしを送り、ウンピョの元彼・ルイ(チェ・グァンロク)と結婚していた。
そんな中、ある衝撃的な事件をきっかけに、完璧に見えた母親たちの隠された過去や秘められた欲望が暴かれていく——。
キャスト
イ・ウンピョ(教育特区に転居したママ) - イ・ヨウォン
ピョン・チュニ(リーダー格のママ) - チュ・ジャヒョン)
ソ・ジナ(アウトサイダーママ) - キム・ギュリ
キム・ヨンミ(スカンジママ) - チャン・ヘジン
パク・ユンジュ(ウンピョのはとこでアルファママ) - チュ・ミンギョン
◼︎主な夫たち
チョン・ジェウン(ウンピョの夫で刑事) - チェ・ジェリム
キム・ジュソク(チュニの夫で麻酔科医) - チェ・ドクムン)
ルイ・ブニュエル(ジナの夫で製薬会社GM) - チェ・グァンロク
オ・ゴヌ(ヨンミの夫で映画監督) - イム・スヒョン
イ・マンス(ユンジュの夫で製薬会社勤務) - ユン・ギョンホ
感想
ママ友地獄特集のために見始めたのだが、正直いって5話までは惰性だった。
あらためて凄かった「名前をなくした女神」
姑からタワマン(その名も「すばらしき景色」)の部屋を譲ってもらい、2人の息子を連れて聞きしに勝るソウルの教育特区上位洞(サンウィドン)に引っ越してきたウンピョ(イ・ヨウォン)は、キッチンの壁に「ユビンのママに気をつけろ」というメッセージを発見する。
「匿名者による不穏な警告」は、ママ友ドラマでよくあるツカミだ(「名前をなくした女神」では、玄関の外に「ひまわりの子幼稚園【くもぐみ】保護者と園児リスト」という文書の入った茶封筒が置かれていた)。
※本作は清々しいほとママ友ドラマのフォーマット通りに展開する。以下は「名前をなくした女神」のあらすじだが、ほとんど本作に置き換えることができ、杏のドラマがそうだったように、明らかにサスペンスの構造を持っている(本作より10年以上も前に、しかもほとんど初めてのママ友ドラマを書いた渡辺千穂[じつは羽鳥慎一夫人]は、あらためて凄いと思う)。
ハウスメーカーを退職し、専業主婦となった秋山侑子(杏)は、息子の健太を近所の「ひまわり幼稚園」に入園させる。そこで出会ったのは、それぞれに悩みを抱える4人のママ友たちだった。一見、協力し合っているように見えるママ友コミュニティだったが、その実態は「夫の職業・学歴」「家庭の裕福さ」、そして「名門小学校への受験」をめぐる苛烈なマウンティングと嫉妬の渦だった。良かれと思って取った行動が裏目に出たり、ちょっとした掛け違いから孤立させられたり、裏切りや嫌がらせ(SNSでの誹謗中傷やデマの流布など)がエスカレートしていく。「〇〇ちゃんのママ」と呼ばれることで自分の名前を奪われ、狂気に呑み込まれていく母親たち。侑子は子どもを守り、自分を見失わずに乗り越えることができるのか——。
ジナとウンピョにおけるサリエリ症候群
さてウンピョの長男ドンソクは、コミュニティのリーダーである隣家チュニ(チュ・ジャヒョン)の娘のバイオリンを壊すし、ADHDの気配もあり、早くも輪から落ちこぼれはじめる。さらにウンピョは「一番最悪なともだち」であるソ・ジナ(キム・ギュリ)と再会する。ペンントハウスに住む芸術家のジナは、ウンピョの元恋人を夫にしているだけでなく、さまざまなものを奪われたとウンピョは信じ込んでおり、しかもジナはウンピョが大好きなのだ(このへんの設定は「おちたらおわり」に引き継がれている)。二人の感情はこじれにこじれており、これは最終回近くまで解消されず、ジナの複雑な感情とウンピョの葛藤が本作の重要なモチーフになっている。
冒頭で提示されるのは、モーツァルトへの嫉妬に苦しんだサリエリの人生である。
ジナが画家の娘なのに対してウンピョの父親はペンキ屋。二人はパリで芸術を志すが、ウンピョは恋人ルイ(チェ・グァンロク)をジナに奪われ、失意のうちに博士号をあきらめて帰国し、以来、ジナへの劣等感を隠すことができなくなった。
一方のジナは、自らがウンピョを追いつめていることに無自覚な天才であり、テーマを真似したり、持っていないものをプレゼントしたりしてウンピョをいらだたせ続ける。ペントハウスの優雅な暮らしにも無頓着で、逆にウンピョの生活を羨む。
帰国してからのウンピョは美大講師を目指していたのだが、指導教授の悪口を意図せず(子供の操作ミスで)大学の掲示板に投稿したせいで挫折している。ママ友コミュニティでは高学歴に一目を置かれるが、大学を追い出された身であることは明かせない。
ジナへの劣等感もあいまって、ウンピョはコミュニティにおいてほぼ無言であり、このこじらせぶりは観ていてかなりストレスだった。
そうした前半のグチャグチャが、5話にジナが25階から落下するまで続き、そこから先は、コミュニティに隠されていた諸々がその死によって明かされていく展開になり、俄然面白くなる。
ジナもまた、ウンピョに劣等感をもつサリエリ症候群に囚われていたことがわかるのである。
夫婦関係の破綻
ジナの死には複数の要素が絡んでおり、何人かのママが「自分のせいで飛び降りたのでは」と思いつつ、そこは韓国人のメンタリティで、弱みがあるから逆に強気に出ることによって、さまざまな悶着が起こる。中でも熾烈なのは、冒頭で誰かが警告したユビンのママ、チュニ(チュ・ジャヒョン)との確執である。途中、ウンピョの長男ドンソクが天才児であることが判明したり、それを妬む子供が現れたりして、チュニとの関係はジェットコースターのようにめまぐるしく変わる。
次第に明らかになるのは、主要なママたちの夫婦生活もまたこじれていることである。ジナは夫がなぜウンピョを捨てて自分を選んだのかを勘ぐっているし、チュニの夫はギャンブル狂で実は家計は火の車であったり、ウンピョのはとこで仲の良いヨンミ(チャン・ヘジン)の夫はチュニの昔の恋人で、怪しい薬物の横流しに絡んでいる。さらにコミュニティにおいて道徳派と知られるママは夫の映画監督の名前に隠れたストーカー行為をなんとか覆い隠そうとする。
映画監督は逮捕されるし、チュニは積年の恨みをぶつけて夫と離婚を決意するし、ヨンミも夫とチュニの関係に激怒して夫を追い出すし、どの夫婦も壊滅的なダメージを受けるが、なんとか子供だけは守ろうとする。
中でもヒドイのは、ジナの夫ルイがウンピョを棄てた理由が、生き別れた義妹とジナが同じ顔だったからということだろう(義妹といっても養子同士なので血がつながっていない)。ジナがペントハウスから飛び降りたのは、それを知って絶望したからだった。
……とまあ、敵・味方認定や裏切り、過剰な防衛行動などでコミュニティの人間関係はグチャグチャになり、終盤になると噂好きのママ友たちもなりをひそめ、子供たちの姿すらあまり出てこなくなるのだが、伏線は一応全部回収されて、最終的には、切ないシスターフッドを描いてドラマは終わる。ウンピョを「ドンソクのママ」と呼ばないのはジナとチュニだけだったのである(あと、正直キャラが好感を持てるヨンミもいた)。
観て後悔のないドラマである。
『グリーン・マザーズ・クラブ』を観るには?
※配信サービスは記事投稿時点のもので、配信が終了している場合があります


ご感想、ご意見をお待ちしています