映画1967年の映画1960年代の映画

ある殺し屋

4.0
野川由美子(ある殺し屋) 映画
野川由美子(ある殺し屋)
『ある殺し屋』は、1967年に日本で製作された市川雷蔵主演のハードボイルド映画。

ある殺し屋の感想

陸軍中野学校」(1966)が良かったので、あえて続編ではなく、同じニヒルな主人公の本作を借りて見てみた。
それにしても「陸軍中野学校」の3ヶ月後には続編「雲一号指令」(監督は本作と同じ森一生)、さらに3ヶ月後に続続編「竜三号指令」、さらに3ヶ月後には本作と、60年代の製作スピードはすさまじい。その間に「眠狂四郎」や「若親分」シリーズも6本封切られているのである。何しろ37歳で夭折し、15年で160本あまりの映画に出た人だから…

殺し屋稼業の市川雷蔵は「陸軍中野学校」の椎名次郎の戦後の姿のように見えるが、そんなことはなくて、がらんとした8畳の居室には、戦闘機の前で仲間と撮った記念写真が飾られていて、どうやら特攻隊の生き残りらしい(そのわりには若いが)。命を散らした戦友たちに代わって、60年代後半の腐りきった世間に復讐していることが暗示され、「俺は自分しか信用しない。死刑台にのぼるのも俺ひとりでたくさんだ」とうそぶくニヒルなキャラクターは、思えば眠狂四郎と通じるものがある。

肝心の殺しについては畳針を使っているのだが、「必殺仕掛人」が72年なのでこの発想は斬新と言える。ついでに、クライマックスの乱闘シーンでは敵のベルトを抜き取り、それを鞭のように使う。「インディージョーンズ」に先立つこと14年である。

映画は晴海(撮影したのは神戸らしいが)の埋立地にタクシーで乗りつける雷蔵の姿で始まる。撮影は宮川一夫。麻薬横取り作戦のためにボロアパートの一室を借りる、クライマックスに通じるいたるシークエンスだが、映画は現実と回想を交錯させてシーンを入れ子状に操作している。増村保造は「男と女」式手法と称しているそうだ。監督はその脚本をうまく構成している。

殺しを依頼する組長に小池朝雄、幹部に成田三樹夫という顔ぶれで、成田三樹夫は一度は裏切りながら雷蔵に惚れ込んでおり、雷蔵の「色と仕事のけじめがつかねえ男はごめんだな」という決め台詞をそっくり真似して(男を女に代えただけ)野川由美子を棄てるところに、ホモセクシャルな空気が感じられる。

最近はあまり見なくなった野川由美子は13歳で家出し、無銭飲食をしては体で払う生活をしているフーテンを演じている。本作で一番よく喋る役で、動きも多い。邪魔なようで、なくてはならないキャラクターである。

驚いたのは、中学生だった小林幸子が出ていることだ。オーラらしきものがまったくないので、クレジットを見直すまでわからなかった。

ある殺し屋のあらすじ

塩沢(市川雷蔵)は小料理屋での無口な板前だが、それは仮の姿で、じつはプロの殺し屋だった。塩沢は暴力団木村組組長(小池朝雄)から敵対する大和田(松下達夫)の殺人を2000万円で請け負い、難なく大和田を始末。木村組幹部の前田(成田三樹夫)は彼の腕に惚れて弟分にしてくれと頼むが断られる。そこに風来坊の圭子(野川由美子)が加わり、三人は2億円の大仕事を計画。前田と圭子は塩沢を裏切るが、塩沢はそんなことは織り込み済みで…。

ある殺し屋を観るには?

ある殺し屋 キャスト

塩沢(小料理屋の主人) – 市川雷蔵
圭子 – 野川由美子
前田(木村組幹部) – 成田三樹夫
木村組組長 – 小池朝雄
茂子(大和田の愛人) – 渚まゆみ
みどり(小料理屋の女中) – 小林幸子
健次(圭子のヒモ) – 千波丈太郎
錠 – 伊達三郎
大和田(木村組と敵対する大物組長) – 松下達夫
巡査 – 浜田雄史
護衛 – 橋本力、堀北幸夫
駅の刑事 – 寺島雄作
小料理屋の客 – 越川一
飲食店の主人 – 芝田総二
老婆 – 岡嶋艶子
松 – 黒木現
サブ – 伴勇太郎
沢井 – 上原寛二
小料理屋の客 – 岩田正
東都建設社員 – 加賀美健一
護衛 – 志賀明
東都建設社員 – 大林一夫
護衛 – 森内一夫、松田剛武
ウエイトレス – 久本延子

ある殺し屋 作品情報

監督 – 森一生
脚本 – 増村保造石松愛弘
原作 – 藤原審爾『前夜』
製作総指揮 – 村井昭彦
音楽 – 鏑木創
撮影 – 宮川一夫
編集 – 谷口登司夫
製作会社 – 大映京都
配給 – 大映
公開 – 1967年4月29日

ある殺し屋の原作(藤原審爾)

昭和の短篇一人一冊集成「藤原審爾」(2008年、未知谷)
『オール読物』1965年11月号掲載の「前夜」のほか、「罪な女」「赤毛」「殿様と口紅」「泥だらけの純情」「さかまき万子」などを所収。

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