1980年代の映画1980年の映画映画

ツィゴイネルワイゼン

4.5
大楠道代(ツィゴイネルワイゼン) 1980年代の映画
大楠道代(ツィゴイネルワイゼン)
『ツィゴイネルワイゼン』は、1980年(昭和55年)4月1日[1]公開の日本映画。製作はシネマ・プラセット。監督は鈴木清順。『陽炎座』(1981年)、『夢二』(1991年)と並んで「(大正)浪漫三部作」と呼ばれる。

『ツィゴイネルワイゼン』ってどんな映画?

清順美学」が極まった、日本映画史に残る幻想譚の傑作。内田百閒の『サラサーテの盤』を元に、生と死、現実と夢が渾然一体となった迷宮のような世界を、鮮烈な色彩と独特のカット割りで描いた。第31回ベルリン国際映画祭で審査員特別表彰など世界中を驚かせた一作。
原田芳雄の野性味溢れる色気、大谷直子の静謐ながら狂気を孕んだ二役の演じ分け、そして藤田敏八のインテリジェンスな存在感が、あの世とこの世の境界線を曖昧にする見事なアンサンブルを見せている。専用の移動映画館「シネマ・プラセット」で上映されたという興行形態も含め、伝説的な映画。
サラサーテ自作自演のレコードから漏れ聞こえる謎の声のように、一度観たら耳から、そして脳裏から離れない魔力を持った作品。

あらすじ

ジプシーの如く各地をさすらう中砂は、旅の途中で、親友であり士官学校独逸語教授の靑地と、弟を自殺で亡くしたばかりの芸者小稲と出会い、盲目の旅芸人3人の関係を噂する。その後、中砂は名家の娘である園と結婚するが、靑地は彼女が小稲と瓜二つであることに驚く。座敷で鍋を振る舞われる靑地は、園の自分が誰に似ているのかという問いに言葉を濁すが、中砂はあっさりと小稲という芸者だと答え、園は青ざめてひたすら手元の蒟蒻をちぎり続ける。食後に靑地は中砂の持つサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを聴かされ、その中のサラサーテ自身のものとされる声の聴き取りを頼まれるが、何を言っているのかは靑地にも聴き取れない。

キャスト

中砂糺 – 原田芳雄
中砂園 / 小稲 – 大谷直子(二役)
靑地周子 – 大楠道代
靑地豊二郎 – 藤田敏八
妙子 – 真喜志きさ子
先達 – 麿赤児
巡査 – 山谷初男
甘木医師 – 玉川伊佐男
キミ – 樹木希林
宿の女中 – 佐々木すみ江

清順はスーッと動くものが本当に好きだ。

東京タワーのシネマプラセットの椅子(遊園地などにありそうな、6人とかつながってるやつだ)は堅かったなー。そしてテントの中は真っ暗だった。

この映画に熱狂した友人(彼女は、蓄音機とツィゴイネルワイゼンのSP盤も御茶ノ水の古道具市で買ってしまった)がこの映画のサントラシングル盤というのを買って、カセットテープに録音してくれた。それを車で繰り返し聴いていたので、「骨が赤い……!」という原田芳雄の声に続く大谷直子の「旅館で、薬飲んだんです、弟……」という台詞に始まり、「おじさんのお骨を頂戴?」という少女の台詞とシャンという鈴の音で終わる一連の台詞をすっかりおぼえてしまったものである。ミルクホールや釈迦堂の切り通しにも行ったな。

その後数年にわたって原田芳雄は「中砂」でありつづけたし、大谷直子も大楠道代も「小稲あるいは薗」と「青地周子」のままだった。今でもタラコを見ると「あ、鱈の子…」と思うし(笑)、議論に言い負かされて逃げるときは「あたくし覚えがございません!」と(割れた声で)叫ぶのである。

26年(ああ!)を経て見直してみると(その間は、大晦日にテレビでやっていたのを一度見たのみ)、当時躍起になってその意味を知ろうとした数々のナマグサ食事のシーンはそれほど気にならず、大谷直子の背中に藤田敏八が手をかけると着物がスーッと滑り落ちるなどの諸々の動きのほうが気になった。清順はスーッと動くものが本当に好きだ。

サントラシングル盤を聴くまでもなく、音の処理が印象的な映画なのだが、音響としての仕事はあまりさせてもらえなかったと河内紀がどこかで話していたような気がする。

『ツィゴイネルワイゼン』を観るには?

『ツィゴイネルワイゼン』作品情報

監督 – 鈴木清順
脚本 – 田中陽造
原案 – 内田百閒『サラサーテの盤』
製作 – 荒戸源次郎
製作総指揮 – 伊東謙二
音楽 – 河内紀
撮影 – 永塚一栄
編集 – 神谷信武
製作会社 – シネマ・プラセット
配給 – リトル・モア
公開 – 1980年4月1日
上映時間 – 145分

『ツィゴイネルワイゼン』の原案(内田百閒)

1948年に発表された内田百閒の短編小説で、不気味な幻想怪談の傑作。亡き友人の妻がSP盤や本などの遺品を返却しに訪れる様子を描き、結末でレコードから聴こえる人の声に錯乱するシーンが印象的で、映画『ツィゴイネルワイゼン』の原案となった。
「私」の元へ、亡くなった友人・中砂の後妻であるおふさが、夫の遺品を返せと何度もやってくる。最後に、バイオリニストのサラサーテ自身が奏でる「ツィゴイネルワイゼン」のSP盤を返した際、そのレコードから不思議な声が聞こえ、おふさが錯乱する……。
物理的な恐怖ではなく、空気や音、人の心理にゾッとするような、独特の「不気味な怖さ」を描かれている。

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