『鉢植を買う女』ってどんなドラマ?
『地方紙を買う女』と同じく孤独な女性の犯罪を描いた名作だが、より生活感と執着が強調されたドロリとした味わいのドラマ。貯金だけが生きがいの地味な女性が、実は冷酷な高利貸しであり、殺人にまで手を染める女の二面性を余貴美子がリアルに表現。特に「鉢植」を偏愛し秘密を塗り込める執着心が生理的な恐怖を誘う。
世間話の端々に潜む違和感を見逃さない、同じ職場の食堂で働く泉ピン子茂子の「おばちゃん特有の勘」が楢江を追いつめていく。
楢江の運命を狂わせるダメ男を演じた田中哲司、事件を追う刑事役の渡辺いっけい、佐藤二朗など、盤石の布陣も見どころ。
なお、原作は本作を含めて4回テレビドラマ化されている。
1962年版 4月12・13日(NHK) 出演:中北千枝子
1966年版 2月1日(カンテレ製作・フジ) 出演:根岸明美
1993年版 12月11日(テレビ旭) 出演:池上季実子
2011年版 本作
あらすじ
精密機械会社に勤める上浜楢江は最年長の女性社員。不器量のため美しい同僚がもてるのをよそに、恋愛の対象外で、男たちの言葉に耳をふさぎ仕事に精を出している。結婚を諦めている彼女は金さえあればいかなる不幸も防げると考え、貯めた金を社員に利子をとって貸し始める。会計課の杉浦淳一も楢江から金を借りる常連。しかし返済が滞り、利子も払えなくなった杉浦は借金を棒引きさせるため、楢江を陥れることを思い立つ。
キャスト
岸田茂子(社食のおばちゃん) – 泉ピン子
杉浦淳一(会計課出納係) – 田中哲司
野川亜砂美(元同僚) – 筒井真理子
飯沼(刑事) – 佐藤二朗
上浜清子(母) – 佐々木すみ江
古河辰男 – マギー
山口卓巳 – 山口翔悟
下岡有作(捜査一課の刑事) – 渡辺いっけい
老夫婦・夫 – 津村鷹志
老夫婦・妻 – 池田道枝
木島(花屋) – 松村邦洋
権藤(刑事) – 加藤虎ノ介
林エリ(同僚) – 鈴木ちなみ
小室尚子(同) – 小林きな子
上司 – 土田アシモ
上浜克也(兄) – 浅見小四郎
上浜利子(嫂) – 横尾香代子
管理人 – 中平良夫
不動産屋「利根山不動産」 – 水沢駿
不動産屋「丸谷土地建物」 – 中田春介
感想
ホラーというか怪談じみた内容で、花壇の世話をしている余貴美子が通りがかりの老夫婦に花を育てるコツを聞かれ、「肥料が大事なんです。一番いいのは、動物性の脂の染みた肥料です」と答えるところから始まる。もちろん花壇には死体が埋まっているのだ。
勤続30年のお局で口うるさい余(撮影当時の年齢は55歳)は嫌われ者で、同僚OLの寿退社を尻目に、頼れるのはお金だけと割り切っている。昼食は倹約して自家製焼きそば弁当、社内の人間に高利で金を貸付けてタワーマンションに住み、輸入家具を揃えている。楽しみは寝る前の金勘定で、夢はアパート経営。

田中哲司

泉ピン子
するとそこに刑事が訪ねてきて、会社から3千万を横領した田中の行方を追っているという。不安になる余だったが、その夜田中が逃げ込んできて、一緒に逃げようと言われる。しかし余が断るといきなり罵詈雑言を浴びせるのだ。いわく、お前はヤキソバくさい、お前のヤキソバは世界一まずい、お前はブタの貯金箱だ。怒った余は田中を撲殺。ここが展開上のクライマックスになる。
死体は自慢のヒノキ風呂に隠し、園芸土を買ってきてかぶせ、このへんからホラー的な味わいが始まる。再び刑事が現れ、ヒノキ風呂を見せなければならなくなったりして、ピンチかと思いきや、すでにそこには死体はなくなっている。
じつはすでに郊外に土地を買ってそこに死体を埋め、花を植えて花壇を作ったのである。で、冒頭のシーンになるわけだが、その後、結局刑事にバレて、花壇を掘り返されるシーンでドラマは終わる。
後味が悪い終わり方だが、振り返れば余が演じる女の悲哀が迫るドラマである。
『鉢植を買う女』を観るには?
『鉢植を買う女』作品情報
監督 – 大岡進
選曲 – 御園雅也
撮影協力 – リーガロイヤルホテル東京、スポーツスパ アスリエ相模原、リビオ橋本タワーブロードビーンズ管理組合、町田市役所、町田いずみ浄苑、城山解体、戸田競艇場、江戸川競艇場、Francfrancfranc、報知新聞社 ほか
技術協力 – フォーチュン、ブル、東通
美術協力 – 山崎美術
照明協力 – ラ・ルーチェ
音楽協力 – テレビ東京ミュージック
プロデューサー – 橋本かおり(テレビ東京)、小畑良治、椿宜和(角川映画)
チーフプロデューサー – 小川治(テレビ東京)
製作 – テレビ東京、BSジャパン、角川映画
『鉢植を買う女』の原作(松本清張)
「鉢植を買う女」のほか、「潜在光景」「典雅な姉弟」「万葉翡翠」「女」「薄化粧の男」「確証」「田舎医師」の7編を収録。
帰宅途中のバスの中で、浜島は二十年ぶりに小磯泰子と再会した。妻との仲は冷えており、四年前に夫を亡くしたという彼女の家に足繁く通うようになったが、そこには六歳の息子、健一がいた。浜島は彼の眼が気になり、次第に気味の悪さを覚えるようになってきて……。(「第一話 潜在光景」)
人間心理の影の部分を浮かび上がらせた切れ味鋭い傑作短編集。




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